第2章30話 リナの風邪(後編)
「リナー、入るよー」
「どうぞ」
ガチャッ
「ルノ様、すみません」
「いいのよ、気にしなくて。それより、具合はどう?」
「先程寝たら少し良くなりました。ポーションを少しづつ飲めば回復するのではないでしょうか」
「わかったわ。じゃあ、ポーション置いておくわね」
「ありがとうございます」
「でも、リナが風邪ひくの久しぶりね。ここは安心できるようになったのね」
「そうですね……。言われてみれば、私は安心できる場所で風邪を引いてますね」
「じゃあ、ゆっくり寝てね」
「わかりました……」
リナは寝たので、私はそっと扉を閉じた。リナがいい夢を見れますように。
〜〜〜
「お前、何でこんな事もできないんだ!もう少しで5歳だろ!」
「ご、ごめんなさい……」
この光景は昔の
「はっ。俺の娘だと思いたくないくらい何も出来ないな、お前は!」
「ごめんなさい、お父さん……」
「もういい!お前は孤児院送りだ!俺はお前の面倒をみたくないし、顔もみたくない!」
「待って、お父さん……」
「もう、俺の事を父と呼ぶな!帰ってくる事も許さない!」
こうして、私は父親に家を追い出された。夢だとはわかっていても、あの時の事を思い出すと、胸が苦しい。まるで泣き出しそうになる。
〜〜〜
コンコン
「リナー、入りますよー」
ガチャッ
「リナー、お見舞いに来まし……。ああ、寝てるんですね」
(もう少し後で再来訪しますか……。ん?泣いてる?)
「リナ、大丈夫ですか?」
ユサユサ
「ん、んん……。あれ、月影様?なぜ起こしたんですか?」
「リナが泣いていたからですね。怖い夢でも見ましたか?」
「あ……。父親の夢を少し……」
「……そうですか」
「昔は本当に辛くてなんで私が捨てられたんだと毎日泣いていましたよ。でも、あの家に私が居続けると、私が今この場にいられなかったと考えると良かったと思いました」
「……」
「私は、今とても幸せです。そこまで心配した顔をしないでください」
「……わかりました」
「でも、家に帰れなくなって、母親の寝る前の頭を撫でる事が無くなったのは、悲しかったですね」
「リナの母親が頭を撫でていたんですか?」
「ええ。そうすると、不思議な事に楽しい夢を見る事が多かったので、それが楽しみでした」
「そうですか……。リナ、私が頭を撫でる事は平気ですか?」
「え?急にどうしたのですか?」
「悪い夢を見た後はいい夢を見て欲しいと思ったからです。ダメでしょうか?」
「そういう事ならわかりました。大丈夫です」
「では……」
ポンッナデナデ
(変な感覚ではありますが、これでリナが楽になるなら……)
「ありがとうございます。眠くなってきたので、もう1回寝ます」
「ゆっくり休んでくださいね。では」
〜〜〜
「月影さん、おかえりなさい。リナの様子どうでした?」
「悪夢を見ていたようで、うなされていました。ただ、私がおまじないをかけたので、いい夢を見られますよ」
「まじないってどんなやつだよ?」
「それは、……内緒ということで」
「そんな水くせえこと言ってないで教えろ」
「気になりますよー!」
「ダメです!教えません!」
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