第2章15話 本の市場に来た


 私は、今本の市場に来ています。理由は、月影さんがちょっと難しい物を使っていて、取り扱い説明書を買いに行ってほしいと言っていました。

 本屋なら、普通説明書は買えません。しかし、本の市場という名の珍しい市場があります。

 何でも、この世界の名前にもなっている神、シャルロッテ様は読書が好きらしいので、本の市場があるとか。

 メモを片手にガロウさんと買い物に行きます。ガロウさんは、本が苦手らしく、本の市場もはじめて行く事になったそうです。


「ついてねー。いつもふれられて無かったから今年も付けられなかったかと思ったんだが」

「大丈夫ですよ。ちゃんと買い物に行きましょう」

「じゃあ、行くか」


 本の市場が開催されている場所に来ました。すごい人だかりです。


「こんなに並ぶのか……。並んでいるだけで疲れるな」

「そうですね。あっ、『うさたの旅』!ずっと読みたかったんですよ」

「へぇ。それってどんな本なんだ?」

「知らないんですか?今、大人が読む絵本で話題をかっさらっていますよ。何でも、感動のラストっていう事で、読めば大号泣不可避と言われる、名作ですよ。読みたいなぁ」

「そうか。俺も興味わいてきたし1冊買うか。絵本なら読めそうだしな」


 そして、私達は、説明書と『うさたの旅』をそれぞれ1冊、計3冊買うことにした。そこで、問題がひとつ発生する。


「お金って、どうしましょう?」

「……確かに」

「私が払うにしても、ガロウさんは、1冊本を買っていますからね。ここは、割り勘が無難ですかね?」

「いや、それだと、俺の払う分少ないじゃねぇか。俺が払う」

「それなら、私が払いますよ」

「じゃあルノ、本を戻してくれ。そしたら、払う金額は同じくらいだ。読みたい時に貸すから」

「えぇー……」


 なんということでしょう。ガロウさんが割り勘を嫌がっています。そして、本を戻してくるように言います。私も読みたい本なのに。

 ガロウさんの気持ちは分からなくないです。私だって立場が同じだったら多分言います。

 しかし、私はここで引きたくありません。引いたら本が手に入らないからです。

 この戦いがいい加減に子供じみた言い合いになってきた頃、救世主が現れました。


「それは、『うさたの旅』かな?」

「「はい」」

「あんたら、ワシが1冊プレゼントをするから、収まったらどうじゃ。ワシが作者だから気にするでない」

「「えっ?」」

「ほれ、受け取ってくれ」

「本当ですね」

「すげぇな……」


 おじいさんが本をくれました。という訳で、会計問題は解決しました。

 そして、月影さんは、『ヒーター』と言う魔道具をようやくつけられたので、アジトの中でも、『ヒーター』は人気になりました。

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