第2章13話 リナと月影のデート(side月影)

 明日がものすごく楽しみです。なぜなら、リナと一緒にフルーツ狩りに行けます。しかも、お昼はリナの手作りのサンドウィッチ。楽しみすぎて、寝られません。

「月影、お前楽しみなのはわかるけれど、そのニヤニヤしすぎてる顔だけしまえ。多分、リナに見られたら、1発で振られるぞ。嫌われたくないなら、制御しろよ」

「月影、怖い」

「2人して、失礼ですね?まぁ、確かにいつもより頬が緩すぎていて、落ちないか心配ですが」

「多分、鏡見たらどんな状態かわかるぞ。ほれ、鏡だ」

「どれどれ、どんな顔が写っているか。……当日は、しまいます。あと、ダラグ表情を固定するマッサージを教えて下さい」

「そんな、もの、ない」

「気をつけろよ?リナに振られたら、お前しばらく立ち直れなさそうだから」

「正論をサラッと言わないでください」

 そんな他愛ない会話をガロウとダラグとして、眠りについた。あと、顔については、言及しません。でも、普段の私は、街中歩いているだけで、女性が近づいて来ます。まぁ、チャラ男を装って帰ってもらいますけどね。

 チャラ男は、フォルケル国では人気はないです。現実的な人型亜種族が多いです。まぁ、それ抜きに考えても経験とかで、わかると思います。

 人型亜種族は、人間のような姿をした別の種族という意味合いで使われます。簡単に言うと、人間か人間じゃないものか。後者の総称が人型亜種族。まぁ、人によっては、魔族という差別的な言葉で種族を区切っています。

 魔族は、一般的には、力が強いけれど、理性がない人型の何かを指します。人型亜種族は、理性はあります。呼ぶ人自体が少なくなったとは言え、まだ残っています。

 一般的に、獣人系統を除く人型亜種族は、寿命が長い事が多いです。しかし、獣人系統の人型亜種族は、人間と同じくらいの寿命です。だから、私達3人の中では、ガロウがルノと同じくらいの時に亡くなります。リナが私を選んでくれたら、吸血鬼になり、私と寿命は同じくらいになりますが、そうでなかったらリナも大体同じくらいでしょう。

 逆に、1番長く残るのは、ダラグです。ゾンビだから、再生能力が使えます。ゾンビは、少々特殊で、寿命が来たら、大体の種族は死にいたりますが、ゾンビは寿命に足して、心が生きると、ゾンビとして死んでしまいます。そこから、別の種族になります。だから、長生きができます。

 今はこのように、他愛ない話が続きますが、いつまでも続くわけではありません。私は、この幸せを噛み締めたいと思いながら、夢から覚めました。

「リナ、お待たせしました。少し準備に手間取ってしまってすみません」

「いえいえ。大丈夫ですよ。月影様、行きましょうか」

「リナ、頑張ってね」

「ルノ様、行って参ります。ガロウ様とダラグ様もしっかりと」

「ああ、わかってる」

「行って、らっしゃい」

 しばらくフルーツ狩りをしていたら、持って来ていたカゴがパンパンになってしまった。そろそろ帰ろうと言う事で帰り道にそって帰りました。その途中では、ハプニングが起きました。

 ガサガサピョンッ

「チュチュ、チュー」

「ネズ、ね、ネズミィィィ!」

「おっと、大丈夫ですか?リナ」

「なっ、なん、何でネズミが……(クンクン)いやぁ、足元やってきたぁー!」

「コウモリよ、ネズミを払え」

「チュッ?!チュチュッ、チュー」

 ガサガサ

「大丈夫ですか?……何か、リナ腰抜けてません?」

「も、もう立てないです。すみません、月影様」

 ネズミが出てきたので、逃げ惑うリナが可愛かったのですが、さすがに追い払いましたが、リナが腰が抜けて動けないようです。

 だから、私は、ある事を実行しました。

 ヒョイッポスッ

「へ?」

「さぁ、帰りましょうか」

「ちょっ、ちょっと待って下さい。下ろして欲しいです。私最近太って来てしまっているので、腕が痛くなりますよ。月影様、腕を大事にして下さい」

「リナを置いて帰る訳には行かないですよ。私の居ないところで山賊に襲われるかもしれないですし、さっきみたいにネズミが来るかもしれません。こうした方が、良いでしょう?」

「お、お姫様抱っこじゃなくても……(ゴニョゴニョ)」

「こうした方が、可愛い姫君の顔がよく見られるので」

 そう。お姫様抱っこした。反応が可愛い。普段敬語で、少しだけ口角をあげて笑っているつもりの彼女は、顔を真っ赤にさせて、目があっちこっちに行っているのに、手は、ギュッと私の服を掴んでいた。

 可愛い。もう一度言う、可愛い。それ以降は、異論は言って来なかったので、なるべく長く腕の中の重さを実感する事にした。満更でもなさそうにしている彼女の反応を見ると、私の事が好きなのかと錯覚した気分になる。多分、彼女も私の事は異性として意識しているはずだ。しかし、頃合を見てから、告白したいと思っている。

 理由は、リナはこれまで、男性に関わった事で散々な目にあってきたとルノから聞いた。まず、リナの父親が孤児院にリナを捨ててから、事故にあって亡くなった。次に、孤児院に時々リナに会いに来ていた男性がいたけれど、その視線が怖くて、ルノが引き取らなかったら、あと少しでその男性が引き取る所だったらしい。だから、助けてくれたルノを裏切る行為はしないって誓われたって、ルノが言っていた。最後に、ルノの父親だったから、まだ完全に信用されていない。

 早く信頼されたいな。そう思いながら、基地に帰った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る