第2章4話 雨が大好きジメジメ虫

 外を見たら、雨です。ついにこの時期がやってきた。雨が降りやすいこの時期の事を『多降雨月』とティスサ国では呼んでいた。この時期は、この時期が嫌いな人とこの時期が好きな人が、綺麗に別れる月でもあります。ちなみに私は、好きです。

「ガロウさん、雨降ってきましたね」

「何か、嬉しそうだな。何か、あんのか?」

「そりゃあもう。一大イベントですからね」

「ルノって多降雨月が、好きなタイプの人間か?」

「はい。正確に言うと、多降雨月の時期しか作れない物があるんですよ」

「そんなんあったか?」

「シェザガーです。砂糖と、牛乳と、卵と、多降雨月に取れる『ミルクの実』を使って作る食事です」

「菓子か?ってか、ミルクの実なんていつでも取れるじゃねぇか?何で今の時期?」

「お菓子ですよ。後、ミルクの実は、今の時期がシェザガーに向いているからですね」

「どんな感じの菓子なんだ?」

「温度が違うと味と食感が違うんですよ。冷蔵庫で冷やすと、ケーキみたいな食感で、ふわふわしているんですよ。あとは、味が生クリームが入っているみたいに濃厚なんです。常温だと、クッキーのようなサクサクとした食感のお菓子で、味は小麦とバターの味がします。最後に、火を通すと、カスタードプディングのように口当たりが滑らかになり、味は、優しい卵の味がします」

「確かにすげえが、何でそうなんだ?」

「この時期のミルクの実が、一緒に混ぜた材料の料理の系統で、味が変化するからです。さっき言った材料を変えれば、私達が普段食べている西風の料理になりますし、逆に東風の食べ物を入れても、同じように東風になりますよ」

「なるほど。これは確かに、大発見だな。どういう経路で、発見したんだ?」

「私が地下牢にいた時に、ミルクの実と砂糖を入れて、調理して食べたんですよ。そしたら、さっき言った発見をして」

「なるほどな。……ん?地下牢にいた時って、自由が聞かなかったよな?どうして貰えてたんだ?」

「その頃は、リナがまだ地下牢に入れられていなかったんですよ。だから、ある程度の食べ物は食べられていました」

「なるほどな。話を戻すが、シェザガーを食べたいのか?」

「そりゃあもちろん!というわけで、材料は用意します。楽しみに待っていてください」

「期待していいんだな?」

「ええ、もちろん」

「じゃあ、今日のおやつ楽しみにしてるぞ」

「はい。分かりました」

 それから、私は、シェザガーに必要な物を買いに行った。1番のかなめの、ミルクの実も無事に売ってあった。そして、おやつの時間になり、怪盗団のみんなにシェザガーを振舞った。反応は、びっくりしたり、感動したり、冷静に分析していたり、様々だった。でも、みんな喜んでいたから、嬉しかった。今度は、どんな食べ物を作ろうかなぁ。そう思いながら、幸せな一時を過ごしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る