第18話 エカバリー公爵家の衰え
私達は、エカバリー公爵家に潜入する事に成功したので、お父様の部屋に向かっていた。お父様の異能力は、リリシャと違って、開花している。まぁ、そこまでお父様の異能力は注意しなくてもいいと思っている。なぜなら、水を操る事ができる異能力と、煙を出す事ができる異能力だったから、そこまで脅威ではない。水は、凍らせてしまえば何も出来ない。煙を出して逃げようとしても、蜘蛛の巣を撒き散らすから、逃げられない。だから、私とは異能力同士の相性が悪い。
異能力にも相性がある。私の場合は、両方とも炎が苦手。エカバリー公爵家は、幸いな事に炎を使える異能力者がいない。だから、私は、異能力の相性の面で安心して戦える。ただし、エカバリー公爵家には、特殊な道具がある。それを使われると、不便だ。それを出される前に、蹴りをつける。
そして、ついにお父様の部屋までたどり着いた。意を決して、扉を開ける。
「お父様!」
「?っ……ルノ?!」
「……」
「お前の帰りを待っていたよ。いつの間にか、地下牢からいなくなっていたから父様探そうと色々やっていた。さあ、これからは、ずっと一緒に暮ら……」
「言いたいことはそれだけ?」
私は、父だった人を睨んだ。そしたら、その人はビクッとなり、肩を一瞬震わせた。でも、追撃の手は緩めない。反撃する時だったから、思う存分言いたいことを言わせてもらう。
「それって、あなたが私に異能力が無いと思っていたから、地下牢で暮らすはめになったんでしょ?でも、私が地下牢を出ていったら、手のひら返しのように、私を追ってくる。それは、私の異能力が目当てなんでしょう?」
「それは、」
「言い訳なんて聞きたくない。あなたは、異能力が開花している私を次期当主にして、使いようのいい駒にしたかったんでしょ?リリシャは、宵闇怪盗団に入団させるかなにかして、私の変わりにいいとでも思った……という所かしら?」
「なぜ、それを?!」
「あら。はったりだったのに、焦るって事はビンゴなの?」
「し……しまった」
「エカバリー公爵家も落ちたものね。こんな見え見えのはったりに気づかないなんて」
「頼む。エカバリー公爵家に戻ってきてくれないか?そこまで、事情を知っているなら、話が早い」
「は?」
「帰ってきてくれないか?」
「お断りします」
「そこをなんとか」
「い・や・だ」
「なら……力ずくで奪うまで!」
そう言いながら、その人は、水を弾丸状にして打ってきた。こちらも負けずと凍らせる。この人の主な攻撃技は、水しかない。だから、凍らせていけば、攻撃手段がない。その人は驚いたけれど、続けて攻撃してくる。大体、攻撃が私に届く前に、凍ってしまう。私に届きそうな攻撃も、避けてから凍らせている。そんな事が続いて、私は、違和感に気がついた。この人がやけに粘るのだ。普通、攻撃手段が不利なら奇襲を仕掛けるなり、撤退するなりするこの人の事なのになのに、何故か粘る。
私の考えが2つ頭をよぎった。1つは、私の異能力が開花しているので、他の異能力の確認。そして、もうひとつは……、エカバリー公爵家が持っている、特殊な道具。すると、もうひとつ、おかしな点に気がつく。明らかに、バトルが始まっているのに、誰も使用人が来ない。
そして、しばらくたち、何かが窓から入ってきた。この人が、攻撃の手を緩めなかったので、結局、怪我1つも追うことはなかったが、相手も怪我を追うことはなかった。その窓から入ってきたものとは、エカバリー公爵家が持っている不思議な魔道具……『異能力封じの腕輪』。この腕輪は、その名の通り、装着した人の異能力を使えなくする。装着している間はずっと異能力が使えない。外されれば使える。
私は、この人に誘導されていたのかもしれない。腕輪から逃げるには、少し難しい位置にいた。そして、戦っている中に腕輪が割り込んできた。そして、私に腕輪がはめ込まれた。
「……っ」
「ルノ。私から逃げようとするからだよ。これから、婚約相手が来るんだ。一緒に行こう」
「えっ……」
そして、私は望んでもいない婚約者の元に行くことになってしまった。
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