第17話 リリシャとの決戦

 ガロウとリナとルノが話し合って決めた日の夜。孤児院に音もなく、近ずいてくる影があった。その影達は、迷う事なくルノが泊まっている部屋に近付いてくる。しかし、蜘蛛の糸には、警戒しながら。そのまま、ルノの部屋にたどり着いた。そのまま、部屋の主にはバレないように、潜入する。

 部屋の主は、寝ていた。このまま連れ帰る事は出来そうだった。影は、急ぎつつも、蜘蛛の糸に引っかからないように、気をつけながら、元来た道を帰っていく。そして、影は無事に目的地へたどり着いた。そして、依頼主の元に、ルノを送り届けた。

「ありがとう。……さあ、ルノ。どうせ、起きているんでしょう?早く目を開けなさい」

「……」

 パチンっ。その時、ルノの頬に乾いた音が鳴り響いた。その反動で、ルノは反射的に目を開いた。

「ふんっ。やっぱり起きているんじゃない」

「リリシャ、何でこんな事やっているの?」

「決まっているでしょ。あんたなんか、どこぞで野垂れ死んでいるかと思ったのに、異能力を開花させていて、宵闇怪盗団に入団していて……。今頃だったら、全部私が手に入れているはずだったのよ?それを、あなたが奪っていったから、仕返しをするためにこうしたのよ?あんたが全て持っていた物、私が有効活用してあげるから、安心して?」

「よく分からない。私は私で自由を満喫していたのに、それを奪うって、どうしてそんな発想になるの?それに、あなた達が地下牢で暮らしてって言ったから、地下牢で暮らしただけなのに。その結果で今ができたのに。それを嘆くのは、なんかおかしくない?」

「うるさいわね」

「あと、ガロウさん達は物じゃない!物扱いをしないで!」

「あら。フォルケル国なんて野蛮な人が多いと聞くわ。ただでさえ、イケメンじゃなかったら、価値なんてないのに。イケメンだから彼らは、助かったのよ。まぁ、それでも、人扱いなどするものじゃない」

「ダメだ。話が通じてない。リリシャと話すのは、もう無理かもしれない」

「いいから、とっとと異能力をよこしなさい。あと、宵闇怪盗団のメンバーも」

「嫌だ。絶対渡さないわ」

 そう言い、私は地面を凍らせた。リリシャは、判断が遅れたようで、少し、氷の餌食になっていた。

「いいわ。そっちがその気なら、こっちだって」

 リリシャはそう言い、気絶しそうな匂いを出した。リリシャの異能力は、匂いを操る事ができる。しかし、まだ開花していないので、リリシャの方も少なからず、ダメージを負っている。意味がない。一方私は、対策をしたので、そこまで被害が無かった。多分、リリシャも主犯格の1人と聞かなければ、何も対策しなかっただろう。しかし、沙羅さんと真奈さんに事前に聞いて置いて良かった。そして、今度は、蜘蛛の巣を張る。その所から、冷気を出す。

「凍らせる事しか芸がないのね。可哀想に」

 その余裕はどこで出てくるのか知りたい。もう、リリシャの部屋の床は半分凍っている。しかし、リリシャは全く気づいてないから、驚きだ。そして、床が5分の4凍った。その事に気づいた時だった。リリシャが、私の攻撃を避け、着地し損ねた。その下は、氷の床だったので、ツルっといい音がしてから、後頭部から倒れて、ゴンッという鈍い音がした。リリシャは起き上がって来ない。どうやら、気絶しているようだ。

「あとは、お父様か……」

 私は、お父様の部屋に向かう事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る