番外編 みんなでお花見!

「そろそろ、花見の季節だな」

「そう言われて見れば、そうですね」

「桜、見に、行く」

「「お花見(って何ですか)?」」

 孤児院に泊まった4日目の昼。月影さんとダラグさん、ガロウさんが、こんな話をしていた。

「ああ。何でも、"桜"という花をフォルケル国では、一定の期間誰でも、見ることが出来る。その花を見ながら、楽しく過ごすんだ」

「そうなんですね。楽しそうですね」

「そうだ。ルノ達もお花見来るか?」

「「えっ」」

「別にフォルケル国民じゃなきゃ見ちゃいけない理由はないからなー、こう言う事には積極的に参加しようぜ」

「そうですね。ルノ様、ぜひ参加しましょう」

「まあ、そういう事ならお願いします」

「決まりだな」

「楽しい事になりそうですね?特にガロウの反応(ドカッ)……すみませんでした」

「月影ぇ、お前いい加減にしろよ?」

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 その日の夜。何故か、夜に出かける事になった。お花見は、昼でも良かったようなという文句をガロウさんに行ったら、こう返された。

「俺らは、毎年飲み比べやっているんだ。昼間っから飲めないっつーの」

「まぁ、飲み比べといいますか、ただ単に程々のお酒の席を楽しむ会ですけれどね」

「それに、夜桜、綺麗」

「はぁ。そういう事情なら分かりました」

「大丈夫ですよ、ルノ様。夜桜が綺麗だというのです。さっさと行きましょう」

「リナ、あなたそれっぽい事言っているけれど、お酒飲みたいだけでしょ?あなた、成人したらお酒飲みたいって散々言っていたじゃない」

「はて、なんのことやら」

「そうだったのですか?」

「はい。そうです」

「変わり身早っ!」

「そろそろ着くぞー」

「はーい」

 到着したら、最初にダラグさんが場所取りに言った。彼は、酔いにくい体質だから、帰りには、月影さんとガロウさんがいつもおぶって貰っているらしい。だからって、あんな走る必要あるのかな?と思っていたら、ガロウさんが説明してくれた。

「場所取りは、争奪戦だ。いい場所が取れれば、夜桜が綺麗だが桜が見えにくい場所に取ってしまったら、ほとんど桜は見れないと思っていいだろう」

「それなら、昼の時点で場所取りすれば良かったじゃないですか?」

「いいえ。それはできません。フォルケル国では、お花見の季節には、桜の場所取りは事前にしてはいけません。なぜなら、桜を見に来た人からすると、迷惑以外の何ものでもなくなるからです」

「ほぇぇ。ちゃんと決まっているんですね」

「場所、取れた」

「ナイス」

 私達は、その場所に行った。すると、先に誰かいた。

「いますよ?」

「場所違いじゃね?」

「違う、ちゃんと、取った」

「あのーすみません、そこあなた達が取った所ですか?」

「何か、場所取りめんどかったから、場所取りした後の所奪った」

「「えぇ?!」」

「つか、あんたら可愛いなぁ。あんたらだったら、別にこの場所使っていいよ」

「まぁ、そこの奴ら置いていってもらうけどな」

「えー。嫌です」

「同じくです」

「いいじゃんいいじゃん。硬いこと言わずにさぁ」

「そうだよ。こっちの方が楽しいじゃん」

「おい」

 そう言われて、振り返るとガロウさんと月影さんがすごく怒っている。

「地獄でも見るか?」

「地獄でも見ますか?」

「あ、いいえ。遠慮しておきます」

「すいません、俺らが調子乗りました」

 そして、男性二人は去っていった。最初からあんな事しなきゃいいのに。私はちょっと怖かったけれど、リナは嬉しそうだ。何でだろう。

「お花見するぞ」

「はい」

「やっと、か」

「やっとですね」

「酒酒」

「リナは落ち着きなさい」

 そして、徐々に酒飲みが始まった。1番早く酔いつぶれたのは、リナだ。酔いが回っている間に、すごく褒められたので、心臓が持たなかった。そして、次に月影さんが酔いつぶれた。程々とは。そして、ガロウさんと、ダラグさんの一騎打ちになったが、ガロウさんが酔いつぶれる頃には、ダラグさんがようやく顔の1部が赤くなった程度だった。ダラグさんお酒強すぎ。

「結局、みんな潰れましたね」

「仕方、ない」

「怪盗団に入れてもらえてありがとうございます」

「急に、どうした?」

「そう言えばお礼言っていなかったなって」

「別に、問題、ない」

「本当ですか?」

「こちらも、ありがとう」

「なぜ、お礼を言われるのでしょうか?」

「ガロウ、ルノ、来てから、楽しそう。ダラグ、月影、共に、嬉しい」

「……」

「ガロウ、それまで、こん詰めすぎてた。ルノ、来て、変わった」

「……そうだったんですね」

「ガロウ、幸せに、してあげて、欲しい」

「えっ」

「ガロウ、ルノ、いると、嬉しい。ダラグ、月影、ガロウが、嬉しいと、嬉しい」

「いやー、でも、それは本人が言わないとダメじゃないですか?」

 ゾンビは基本的には、恋愛感情を持つことがほぼないと言われている。だから、恋愛において、空気が読めない。

「そうか」

「本人が望んでいたら、本人の口から言ってもらいたいですね」

 私は、酔いつぶれたガロウさんの頭を撫でてみた。すると、ガロウさんが、へにゃっとした顔で笑い、心地良い寝息を立てる。その光景を見て、幸せだと感じた。

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