第3話 宵闇怪盗団にようこそ

 怪盗とは、世間一般的に貴族の物を盗みに来る人達だ。犯罪者なら別だけど、庶民の物を盗みには来ない。なぜ、貴族の物だけ盗むかと言うと、怪盗にも色々な人がいるから、理由が違う。例えば、誰にも姿を見せる事がない隠密怪盗団なら、貴族の重税を無くすためだ。だから、良政を敷いている貴族には、絶対に盗みに入らない。反対に、貴族が嫌いな麗月怪盗団は、どんな貴族であっても、等しく盗みに入る。その事を調べていた、私も怪盗に憧れがあった。そして、いつか、怪盗と一緒に家を出ると思っていた。

 イノシシに地下牢を破壊された日に、上の階が騒がしかったのは、宵闇怪盗団が盗みに来ていたからだ。そして、あの人は宵闇怪盗団の団長さんで、脱出ルートを確保していた。しかし、私達がいるとは、思っていなかったようだ。ついでに、私が怪盗団の事を知っていたせいで、私達は団長さんによって、連れ出されてしまった。

「こんなところだ」

「ほえぇー。そんな偶然あったんですね」

「ルノ様、はしたないですよ」

「大体、俺の方が聞きたいが、お前達は何であんなところにいたんだ?別に罪人ってわけには見えないしなぁ」

「私は、メイドのリナです。こちらのお方は、主であるルノ様です」

「ルノ・エカバリーです。よろしくお願いします」

「自己紹介してなかったな。俺は、ガロウだ。よろしくな」

「さっきの話に戻りますと、エカバリー公爵様が、ルノ様を虐げているのです。私もルノ様のお付きのメイドと言うだけで、あの地下牢に投獄されました」

「やっぱ、貴族ってろくなのいねぇ。何で、自分の家族大切にしねぇかな?」

「エカバリー公爵家では、代々異能力に目覚めるのです。私の場合は、その異能力が1つもないと分かったので、あそこで暮らしていました」

「ふぅん、やっぱ、下らないプライドのせいか。お前は、家出たかったのか?」

「はい。いつか盗賊に連れられて、盗賊団に入ってみたいと、思っていました」

「そうか。じゃあ、入ってみるか?」

「えっ、いいのですか?」

「まぁ、多分仲間もいいって言うだろ。ただし、貴族の性は捨ててもらうからな」

「分かりました」

「お前は、どうする?」

「私は、この命尽きようとも、ルノ様について行く所存でございます」

「分かった」

 そう言って、ガロウさんは、ふと思いついたように言った。

「宵闇怪盗団にようこそ。これからは、期待の新人として、働いてもらうからな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る