第3話
見慣れない真っ白な天井に真っ白な壁。
もしかしてこれがあの世ってやつなのか?
と、思わないではないが、それが違うということは隣を見てすぐに気付いた。
「起きたのね」
そこには、一人の少女が佇んでいた。
どこにいても絵になりそうな端正な顔立ちに透き通るような声。
「ここは……? 俺はどうしてここに?」
聞きたいことは山ほどあって整理がつかないが自分の現状を知るのが最優先だ。
少女は微笑んだ。
「質問には答えるけどまずは自己紹介と行きましょう」
そう言うと眼前の少女は微笑んだ。
「私は、フィリア・ゴールドベルグ。特務心装部隊、略称は特装隊。第三小隊の小隊長をしているの。君は?」
「えっと、俺はシン・シクザールって言います。年齢は、十六歳になります」
「そう、私より二つ下ね。教えてくれてありがとう」
彼女は、手元の端末に何かを入力し始めた。
「君の戸籍を、アークに移しておいたわ。それじゃさっきの君の質問に答えようか」
フィリアは、手元の端末からこちらに目線を移す。
「ここは第二戦区CS-01アークっていうの。君は、私たちが第二戦区CS-03ケルン防衛のために出動し私たちによって保護された。そしてここはアークの都市防衛軍士官学校内の病棟の一室」
第二戦区CS-01アークは第二戦区CS-03ケルンの西方に位置し東部管区の中枢都市であり人口は二十五万人に及ぶ。
「第二戦区CS-01や第二戦区CS-03というのは何なんですか?」
フィリアはしばらく考えるそぶりをとった。
「君はこの世界が虚無の侵攻を受けているのは知っているわよね?」
「はい」
ニュースなんかで襲われた防衛都市の映像なんかを見たことがある。
「私たち都市防衛隊は、各防衛都市に駐屯しその防衛にあたっているのも知っているわね?」
「えぇ」
俺のいたケルンの防衛隊は、おそらく生き残ってはいないだろう。
「都市防衛隊は、世界をいくつかの戦闘区域に分けたの。CSというのは防衛都市にはそれぞれ自治組織があるから都市国家に近いものととらえていてcity-stateと言いその略称なの。あとの数字は策定された戦闘区域内のCSの数になるわ」
そういうことだったのか。
「あの……ケルンの生き残りはいるのですか?」
「誰か会いたい人でもいるの?」
妹は生き残れたのだろうか……。
「俺の妹、ティリスに会いたいんです」
そう言うとフィリアは通信用の端末で何かを調べ始めた。
しばらくするとスクロールしていた指が止まり今度は反対にスクロールし始めた。
「……生き残った五百余名のデータを見てみたけどその名前の人はいないわ……」
何となく覚悟していたことだけど……涙が止まらない。
「ごめんなさい……でも、もしかしたら…この世のものでなくなっててもいいと言うのなら会える可能性があるかもしれない」
この世のものでなくたって俺は、ちゃんとお別れを告げたいから会えるのなら会いたい。
「どうやって……?」
「君は、心装武具を使えるわ。それもかなりの強さのものを」
あのライフルのことなのか?
「はい、使い方はわかりませんが……」
「使い方は単純よ。その力が欲しいと念じて、誓詞を唱えれば顕現させることができるわ」
あの言葉は誓詞というのか……。
誓詞は、初めて聞く言葉だったが不思議と覚えていた。
「軍属になれば、調査なんかで虚無の支配域となった場所に行くこともあるの。私の部隊は、そういう任務を頻繁に行う部隊だから」
「俺があなたの部隊に入れば、ケルンに行けて妹に会える可能性があるってことですか!?」
彼女の言葉をさえぎってそう言うと彼女は頷いた。
「身の安全は保障できないけれどそれでもいいのなら」
俺には、家族と呼べるものもないし、今後の生活も定まってはいない。
ならばその問いに迷うことはない。
「ぜひ、お願いします!!」
彼女はなぜか一瞬、寂しげな顔をすると
「わかったわ、入営の手続きは行っておくし私の隊に配属されるよう口添えもしておく」
その後、士官学校での生活なんかについていろいろ少女と話し合った。
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