【KAC20228】君だけのヒーロー

リュウ

第1話 君だけのヒーロー

 僕は、ずーっと前から彼女が好きなんだ。

 ずーっと前っていうのは、そう、幼稚園の頃から。

 一番最初に手をつなぎたかった娘。

 幼稚園で、おもちゃを渡したら、「ありがとう」って笑顔で受けっとってくれた。

 それから、今まで嫌いになることが無かったので、

 僕は、彼女が大好きなんだと思う。

 だから、ずーっと彼女を守っているんだ。

 でも、恥ずかしいから、彼女に分からないように助けようと思ったんだ。

 影で助けるって、カッコイイじゃん。

 僕が、居なくなった時に分かるんだ。

 誰かに守られていたんだって。

 それが、僕って分かったら、うれしい。

 正体を隠した方がやっぱりカッコイイ。

 そうだよ。

 ヒーローは、正体を隠してないとね。

 スーパーマンだって、

 スパイダーマンだって、

 バットマンだって、

 ハルクだって、

 タイガーマスクだって、

 ウルトラマンシリーズだって、

 仮面ライダーシリーズだって、

 戦隊シリーズだって、

 みんなみんな、正体を隠している。

 僕もバレない様にしないと。


 幼稚園の年長クラスの時は、  

 彼女が、近所の犬に嚙まれないように、

 僕がその犬と対決して、彼女を嚙まないように、僕を嚙ませたんだ。

 痛かったけど、大丈夫。

 彼女のためだから。

 

 小学校の時は、

 彼女が牛乳が嫌いっていったから、代わりに牛乳を飲んであげた。


 中学校の時は、

 彼女に近づこうとする奴らを片っ端からやっつけてやった。


 高校の時は、

 塾の帰り道のボディガードだ。

 彼女が、変な奴らに絡まれそうだと感じた時は、僕がそいつらと先に喧嘩してやった。

 少しケガして痛かったけど、彼女のためだから。

 僕は大丈夫。


 大学の時は、

 講義の代返をしてあげたり、レポートを手伝ってあげたりしてた。


 同じ会社に就職して、仕事の手伝いや通勤時のまたまたボディガード。

 今日も、彼女を安全に帰宅させる任務に就いていた。

 彼女の後姿に惚れ惚れと見とれながら、文字通り、鼻の下を伸ばしながらの尾行。

 いつか、いつかだけど、彼女に言って欲しいんだ。

「あなたは、私だけのヒーローだ」ってさ。

 僕の心の声が聞こえたのだろうか、彼女は立ち止った。

 そして、急に僕の方を振り向いた。

「ずーっと前から、気付いているんだからね」

 不意を突かれた僕は、逃げ場がなくて、縮こまるしかなかった。

 これは、ヒーローらしからぬ行動。

 彼女は、僕に急接近して、

「無理しないで、私のダーリン」

 と、僕の額にキスしてくれた。


 そうだ、僕は彼女の結婚していた。

 どんな時も君のそばにいるよ。

 僕は、君だけのヒーローさ。

 それだけで、いいんだ。


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