第4話「イケメン騎士なのでしょうか?」

「わ、私はシルヴァ・ブラウスと申します……」


 声は掠れどこか影のあるような表情だった。


「この方はそんなに強いのか?」

「もしかして新しい仲間?」

 

 空気中に舞うように憶測が飛び交う。


「しかし……お前さん、綺麗な髪してるね〜」シュワンはシルヴァに興味深々の様子だ。シュワンは随分昔は髪がモッサモッサにあったのだが、ここ最近異変が起こり、卵のような頭になってしまった。

「ソルドもそう思うだろう?」

「……」


 俺にとってそんなことはどうでもいい。

すらっと長い手足、綺麗な鼻筋、そして容姿は恐ろしいほど整っている。

その上背が高く高貴な衣服まで身につけている……

いいな……


 ソルドは陰険な笑みを浮かべた。


「あ!! シルヴァさんこの場所にいたんですね……。気づきませんでした。ごめんなさい……」 


 シルヴァは頭頂から電撃を喰らった。

もちろん物理的でなく精神的に。


 微笑ましいことに仲間も一緒に喰らった。

がこんなことを言うのか?


 ふっふっふ……しめた、しめた。やはり俺の目に狂いはない。こいつはだ。

俺は他者の機微に敏感だな……




 こいつ、優越感に浸ってるな……

誰もがそう思った時


「お前ら、これから俺の参謀となるシルヴァに何を言ってる? こいつがいなければ皆、助かっていなかったんだぞ? 何をすべきで、何をすべきでないかもう少し考えてみろよ……」と黒崎が言った。



「確かにそうだ……。シルヴァさんがいなければ俺らは助かっていなかったな……」

「ありがとシルヴァさん」

「ありがとう!!」

「感謝します」

「この借りはいつか必ず返すでござる」

「うぃ〜」


ソルドはなぜか顎を高く上げていた 

「すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく、すぺっく」


 ソルドは何度も何度もそう呟いていた。


「おいおい、大丈夫かい!? だいたい君はスペックと何度言っても……」


「やめておいた方がいいのでは? 」


 黒崎は胸を撫で下ろした。

シルヴァがシュワンの口を塞いでくれたからだ。


 これ以上言ったらまたのようにソルドが打ちひしがれるだろう。

アレで中級兵士に殺されそうになったもんだ……


感慨深い追憶をしていたところ、シルヴァは「ところでこの先どうします?王……」と言い、泥沼に嵌まり込んだ黒崎を助けた。


「!?」


 そんなに驚かないでくださいよと苦笑された。

そんなに驚いたつもりはないのだが……


「俺たち戦闘型人造人間はエネルギーによって動かされてる。だからエネルギーの補充が必要だな……。何か策でもあるのか? 」


 こんなことを言ったのは初めてだ。今まで俺は、無慈悲な策を言われたことはあったが言ったことはない。


「城の略奪が手っ取り早いと思います」


ソルドは深呼吸をして呼吸を整えた。


 そしてふと思った。

最下級兵士でなかったなら、俺はそんなこともせずに感情を断ち切られただろうか……?


※それはおそらく無理である。最下級兵士以外の戦闘力は常軌を逸してる。が、その他の能力は人間と何ら遜色ない


 俺は必ず後ろに待機する!! 後ろにいたら死なない……。そうだな……周囲が仲間によって囲まれていたらなおいいな……



 黒崎とシルヴァの作戦会議が始まった。


「そもそも城を奪うとは、どう言うことだ?」

「無血開城をさせるか、殺して奪う……と言うことです」

「それはどのようにしてする?」

「まず二手に分かれます。一つ目のグループは、囮で二つ目のグループは、少数の方がいいでしょう」

「と言うことは囮グループはもしかして大数になるのか?」

「そうです。なるべくそうした方が囮だと気づくまでの時間が長くなるのではないでしょうか?」


「そして城の、瓦を一斉攻撃して、侵入します」




「……」


 まるで、内ソルドは水面に水を打ったように静まり返った。


 ヤバい……ついていけない。俺は〇〇なのだろうか?そうなんだ、絶対そうなんだ……


「!!」


シルヴァが鼻先と鼻先がぶつりかりそうなくらい詰め寄ってきた。


 近い、近い……


「自分のことを責めてはなりません。今、考えても処理能力が低下するだけ……後で考えませんか? 」


(チッ!! ……お前に言われなくても分かとるわ)


「わ……わかりました。これからもご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします」


「……」

シルヴァは黒崎の方に顔を向けた。

「ところで、その策はどうでしょう?」


「その前に一ついいか? そもそも、囮とはなんだ……?」


「どう言う意味で使ってるかということですよね? 私は囮を使い捨てるのではなく再利用する、という意味で使っております」

 

「そうか……。策についての再評価をする。囮は誘導のためにあると仮定する。囮が先にやられるまでに上から侵入できるとは限らないのではないか? ならば一斉に弱点をついた方がいい。そうすればどこかに別の兵が潜んでるかもしれないと思わせられる。それを逆手に取れる。例えば俺たちの軍がシオンベルク城に攻めたとする。相手の兵はどう出ると思う? おそらく1000の兵がいれば10隊ほどに分けて守らせるだろう。一箇所、防衛するだけだったら残りの箇所を攻撃されたら城が危惧されるからな」


 最下級兵士らの目に光が見えた。


「俺たちの死ぬ確率は下がった!!」

「うおぉぉ!!」


 全くお気楽なものだ。


「なるほど……。そこまで深く自問自答して思考していなかった……」


「しかし、城外監視センサーでもあればまた話は変わる……」


「ありませんよ。事前に調査しましたから」


 本当だろうか……?

仮に調査していなかったとしたら一大事になるな……

まぁベストなんてないからベターを選択するか……


「シオンベルク城のエネルギープラズマを奪いますか?」 


「……そもそも、エネルギープラズマは城にしかないのか? そしてなぜお前はシオンベルク城を標的にした?」


 また始まった……


 仲間たちは手のひらで視界を覆った。


 しかし、シルヴァの目の奥は輝いていた。




 この

怖い……










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Apexブラックキング〜最下級兵士から最強の王へ〜 @taravs

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