第2話「謎の黒マント騎士」

「ぐあぁぁぁ....げふっ....げふっ..お..願いだ..やめてくれ....」


 中級兵士は滝のような涙を額や頬を掻きながら流し、自分の首を自らの手で粉砕した。













「ここにいるが?」


 心臓の鼓動の音で何も聞こえない。

気付けば凹凸が激しい山道を無我夢中で走っていた。

仲間の存在は頭の片隅にすらなかった。

ただ、走ることに夢中でそれだけしか頭になかった。









 走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走った。


 つまづきそうになるときもあった。

吐血しそうになるときもあった。

うっかりから汚物製造機に変貌してしまいそうなときもあった。



 それでも走った。

足が動かなくなるまで―――――





「ぐはっ....!!」


とうとう足が動かなくなり、瀑布のような勢いで地面に倒れ込んだ。



 足を止めた瞬間、胸のうちから何か温かいものが込み上げてきた。


 ソルド、シュワン、他の仲間たち....


 ごめん


どれだけ謝っても許してもらえないだろう。

瞳には溢れんばかりの涙で潤っていた。


 泣いて許してもらえると思っているのかおれは....



 いっそのことここで死「遅いね、落ちこぼれ君....」



「....ッッ!!」


 黒崎は哀しそうに地面をただ眺めていた。


 わかっていた。俺は逃げられないことを....

自分でも....



 ならいっそのことここで殺し「てしまおうかな?」





 黒崎には、二度目の思考停止期が訪れた。


 黒崎は、中級兵士の顔面に向かって、怒りに燃えた究極のパンチを放った。



 しかしやはり中級兵士だ。

中級兵士にとって黒崎のパンチは、子供の戯れと変わりなかった。


 そのパンチは、銀色に輝く靴によって跳ね返された。


 黒崎は48メートルほど吹き飛ばされ、黒と赤が交互に入り組んでいる模様が入った樹木に衝突し、意識を失った。


「弱いねぇ〜、しかしまだ殺しはしないよ? 次の戦場で死んでもらうんだからねぇ〜」と細めた横目でぼんやりと黒崎を見て言った。






 すると突然、中級兵士の目の前に、黒マントに身を包んだミステリアスな騎士が立っていた。




 中級兵士は激しく瞬きをした。

「だ、誰だ..ゲルヴォン軍兵士の者か....?」



 黒マントの騎士は、汚物でも見るかのような凍りついた瞳で、中級兵士の目をじっと見た。


 その瞬間

中級兵士は滝のような涙を額や頬をかきながら流し、自分の首を自らの手で粉砕した。


 黒マントの騎士は、そんな事見向きもせずに先程吹き飛ばされた黒崎の方へ、ゆっくりと歩きながら向かった。




















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