過去の話※

※本編とはそんなに関係ないかも。

※エログロ系かは分からないけど苦手な人はいるかも。




 ラジストに出会った後かもしれない。でもまだまだ信頼関係とかない、時期的にはそれくらいの頃の話。



  『過去の話』※



 育ての親が行方をくらませて半野良状態だったアル。背にはガージが置いていった剣。自分で戦うための力をつけている途中でもあった。

 屋根を貸してくれる知り合いの一人に男女問わず手を出す男が居て、ガージから「近付くなよ」と忠告されていたにも関わらず、諸事情で扉を叩かなければならなくなった。その時はまだガージの忠告の意味がよく分かっていなくて、他の奴と同じだと思っていた。

 深夜、人の動く気配に目を覚ますと、自身の上に覆い被さり服に手をかける人影が。とっさに護身用のナイフに手を伸ばすが押さえられてしまう。

「……っ」

 振り払える程の力はなく、ごわついた手が服の中をまさぐる気色悪さにさらされた。

「やめ…っ」

 力によって屈伏させようとする暴力なら何度かあった。だが、これは違う。今までに知らない恐怖が重くのしかかり、全身に絡み付く。

「――っ!」

 身体の動きを封じていた腕に力一杯噛みついた。相手が怯んだ隙に、体をねじり抜け出すと、乱れた服はそのままに剣をつかんで逃げ出そうとドアに手を伸ばした。

 開かない。

 振り返ると痛みを抑えた男がゆっくりと立ち上がるところだ。

「逃げなくても、朝には外に、帰してやるさ」

 泊めてくれと扉を叩いた時にはなかった感情が溢れる。

 来るな! 近付いてくるな!! 気持ち悪い…!

 声も出ない。足から震える。しかし両手はしっかりと剣を握っていた。

「ほう、斬れるのか? その真っ白な剣で。悪いことは言わん。こっちへおいで、子猫ちゃん?」

「だ、誰が行くか! 今すぐここから出せ!」

 アルの叫びも精一杯の威嚇も虚しく、しっかりと握っていたはずの剣はナイフ一本であっさり払われた。アルが持ち忘れた護身用のナイフによって――。


『誕生日祝いだ』

『なんで祝いで刃物なんだよ』

『俺の故郷では魔除けの意味があるんだよ。ありがたく受け取っとけ』

『ふーん……しょうがないなー』

『お前、最近生意気だぞ?』

『そうか?』


 遠い日の会話が聞こえる。白い光の中の大切な人の笑顔が。

 現実に目を向ける。暗い部屋の中、卑下た笑いが聞こえる。


 魔除け――俺を護ってくれるんじゃなかったのかよ。

 自分に向けられた切っ先を赤紫の目が睨む。下手に動かない方が良い。直感が警告する。だけど大人しく言うことを聞くつもりはない。

「ガージも消える前に上玉残していってくれたぜぇ。しかもサプライズつきたぁな。これは是非とも街の――ぐふっ」

 体重をのせて腹に肘鉄を喰らわせた。不意をつかれよろめいた相手が次の行動に移る前に床に転がっている剣を拾い上げ、片足を掬い転がして、男の股間に突き立てた。

「黙れ玉無し」




>>>>>>

:会社帰りに思い付いたから書いてみた。

 バレそうになって剣突き立てて「玉無し」←が書きたかった。

 命は奪わない。

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