迷子
仕事先でシュクが出会った迷子は、なぜか頭に猫の耳。お尻には尻尾。どちらもぱたぱたと動くから、これは本物なのだろう。
くるくるとよく動く赤い目が、シュクを見る。放っておけなくて連れて来たらしいシュクに、保護者が迎えに来るまでの少しの間、傍にいるよう言った。
「連れて来たからには面倒見てあげなよ」
シュクは頷いて、ロントの部屋から出て行った。
この集落は、家屋ごとに特技のある者を集めている。シュクが寝泊まりしているのは特殊班。しかし預かっている子どもを危険にさらす訳にはいかない。特殊班の全員が危険人物という訳ではないが、中にはいるのだ近付くのも遠慮したい者が。
例えば今角を曲がって来た彼、ダークン・オスクーロ。穏やかな笑みを絶やさない殺人鬼。
あの方向は確かシュク達が歩いていった方向だ。ということは、すれ違ったのだろうか。
ダークンがこちらに気付き、微笑みかける。一緒に飛んでくるナイフは挨拶だ。
なんとか避けると、次を用意しようとするので慌てて止める。
「あの子、新入り?」
ナイフを投げた時と同じ表情で問い掛けられた。
「いや。迎えが来るまでシュクが面倒見ることになった。
何か気になる事でも?」
「会った途端に怯えられたんだよ」
挨拶の仕方が悪いんだろうと言ったら、挨拶をする前からだと言う。
「それは……危ない奴だって、見抜かれたんじゃないのか?」
「あはは。気に入らないね」
笑って、気にしていない風に歩いていくダークンを見送って、特殊班の家屋へ向かう。
二人はリビングのソファーに座っていた。いつもソファーの上で昼寝をしている人物は外出中らしい。
少女は話す。家族のこと、仲間のこと。シュクは黙って聞いていた。
やがて話し疲れたのか、少女はうとうとし始めた。瞼を閉じ、もたれ掛かる少女と、そっぽを向いているシュク。しかし悪い雰囲気ではない。
それにしても、ぬいぐるみを抱いて眠る少女のなんとかわいらしい。
「思わずシャッター切ってしまいますよね!」
と言いながら隠し撮りする不審者一名。一体いつの間に入り込んだのだろう。撮りながら呟く言葉から察するに少女の保護者のようだが――壁に三本の投げナイフが突き立てられた。さっきまでカメラを構えていた標的はあっさり避けて余裕の笑顔だ。
「不審者」
「いやいや失礼。
うちのメアリがお世話になったようで」
赤毛の不審者はアダムと名乗った。
***
続かないよ!
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