防衛本能
障らぬ神に祟り無し
『防衛本能』
「おい、あそこの……あれ、りんご泥棒じゃないか?」
「この街のトップの事か? 確か、銀鼠の髪に紫の目……」
近付き髪の色は確認したが、顔を伏せた状態で目は見えない。
「動かないな……寝てるのか?」
どんな人物か一度拝んでおこうと思ったが、わざわざ起こす事はなかろうと踵を返した。
「見つけたぞ! りんご泥棒!」
さっきまでいた二人とは別の声が、狭い路地に高らかに響いた。
眠りを邪魔したのか、りんご泥棒が身じろぐ。
眠りを邪魔した張本人は、りんご泥棒が覚醒する前に勝負をつけるつもりか、一気に間合いを詰めて剣を振るった。
倒れるりんご泥棒、宙を斬る切っ先。伸びる足、体勢を崩す挑戦者。すぐに立て直して挑もうとして、その目が捕らえたのは起き上がったりんご泥棒。目はまだぼんやりとしているが、そんなのは関係ない。
「そこの二人! 逃げろ!」
「「へ?」」
* * *
蹴った感触も、何かを殴った感触も、何となく覚えてる。が、しかし。
「……誰だっけ」
眠りから覚めたりんご泥棒は、自分の物ではない剣を手にしたまま、目の前に倒れている三人を見て首を傾げた。
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