散歩

少し強い風が気持ちいい。今日はシュラと二人でお散歩をしている。右手にバスケット、左手にシュラの手を握り森の中を歩いて進む。今日は二人でピクニックだ。シュラと一緒ならお母さんが居なくても森を歩いていいことになった。それでも遠くに行くことはできないので、近場にあるところで休めそうな場所を見つけたらそこでお昼を食べようと決めているだけだった。一応グレースに行く方向だけは指定されている。簡単な地図を渡されて迷ってもどうにかなるようになっている。地図を見てみると私達が行く方向に小さな花の群生地があるらしい。

 今日はシュラも猫の姿じゃなくて人の姿になっている。里から帰って来てからはずっと猫の姿で気ままに生活していたのでこの姿を見るのも久しぶりだ。今日は人気のない場所に行くから猫耳を見られる心配が無いのだろう。まあ普段でもアレクシアの村の人に豹がいると思われて注目を浴びているのだけれど。


「この道歩きづらいね、何でこんな道選んだんだろう」

「おんぶ、する?」


 シュラが私を見て訪ねてくる。シュラはお母さんよりも背が高いから私をおぶって歩くのは簡単だと思う。今私達が歩いている道は本来人が歩けそうな道が誰も通らなくなって整備されなくなったよう道だ、が生い茂っている。私の身長だと膝が隠れるくらいまで伸びている。

 歩きづらいし足元が見えなくて不安だったから私はシュラにおんぶしてもらうことにした。視界が高くなり道の奥まで見渡せるようになった。でも奥を見ても同じ道が続いていて不気味だ。


「怖いね」

「そう?」


 私は今思っていることをシュラと共有しようとしたけどシュラは何も感じていなかった。シュラはこういう道は慣れているようだった。精霊の里も森の奥にあったからこういう道もたまに歩いていたらしい。

 シュラは私が不安がっているのを伝えたらおんぶから抱っこに変わった。私の背中をさすって落ち着かせようとしてくれる。私としては嬉しいけどこの年になって甘やかされるのは恥ずかしかった。


「ついたよ」

「ここが?」


 シュラが着いたと言ったので周りを見渡したら。そこは小さな花畑の跡のような場所だった。柵はほとんど倒れて花も枯れ切っている。ここがグレースの見せようと思った場所なのだろうか。信じられなくて地図と見合わせるがやはりここであっている。

もう昼だったのでここで朝作ったサンドイッチを食べながらグレースがここを紹介した理由をシュラと考えることにした。でも、私はシュラの膝の上に座って考えるが、一つしか答えが浮かばない。それはグレースの元々の性格が私達を不気味なところに行かせようとしたというものだ。これは単なる憶測で封印が解けたという話も聞いていないのでこの話をシュラにするのも良くないと思い、考えるのは止めて帰ってグレースに聞こうということになった。サンドイッチを食べ終え、来た道を帰ろうとする。


「コウモリ……」

「ん?」

「あそこ」


 シュラが指をさした方にコウモリかいた。木にとまってこちらを見ている。そしてコウモリを指すシュラの指は震えていた。


「怖い」

「大丈夫だよ」


 シュラが猫の姿になって私にしがみついてきたのでシュラを落ち着かせるように背中をなでる。そのままコウモリの下を通り過ぎるがコウモリは動かなかった。


「ほら、通りすぎたよ」

「もう大丈夫?」

「うん」


 シュラはそれでも私の傍を離れない。さっきとは逆の立場になった。そんなシュラを撫でながら家に帰る。シュラは家に着くまでずっと怯えていた。理由は話してくれなかったけれどコウモリだけはどうしてもだめなようだった。


 家に帰って今日の話をグレースにしたら。あそこは昔グレースたちが花を育てていた場所で、今はどうなっているか分からなかったからまだ花が咲いていたら私達に見て欲しかったと言った。花が枯れていると聞いたグレースの表情は少し寂しそうだった。

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