エマはロリコンなのか

アレクシアの部屋の模様替えをしてから約一年半。もう少ししたら私達は学園に通うことになる。


「これはアレクシアと花畑で遊んだ時のやつ」


 私は現在家で作業をしている。


「これは猫の姿の時のシュラの鼻に蝶の時のメアリーが乗った時のやつ」


 一枚一枚写真をファイルに収めていく。その中で気に入ったものは写真立てにいれて飾っていた。あれから私は試行錯誤を重ね、カメラを作り出していた。元々写真館で働くことになった時にカメラの構造をなんとなく勉強していたのであまり苦労することなく作ることが出来た。


「エマの知識は本当に驚かされるねえ。思い出を形にして残しておけるのは良いもんだ」


 お母さんも私がカメラを作ってから沢山の写真を撮っている。私の隣でお母さんも写真の整理をしていて、写真の枚数は私より圧倒的に多い。ファイルの冊数も私と比べ物にならないくらい多い。でもその写真は私のようにいろんなものや人を撮ったわけでは無く、すべての写真に同じ人が写っていた。


「何で私を撮るだけでそんなに枚数があるの?」

「エマの写真は何枚あっても足りないからねえ」


 にやにやと私の写真を見ながら整理を続ける。お母さんは私の写真しか撮らない。お母さんが撮る写真は私の料理中や食事風景、家の横の湖に船を浮かべて寝転がっているものだけでなく。私が寝ているところやお風呂に突撃してきて撮ったものなど恥ずかしいものもある。私の日常のほとんどがお母さんのカメラの中に収まっていた。


「そう言うエマもアレクシアの写真が多くないか?」

「まあ、確かに」

「エマもロリコンなんじゃないのか?」

「は?」


 いきなり変なことを言われて私は固まった。私がロリコン? いやいや、そんなわけがない。そもそも私はアレクシアと同年代だ。別にアレクシアの事が好きでもロリコンとはならないだろう。


「中身はもう20歳なんだろ?」

「あっ」


 そうだ、忘れていたけど私はもう成人しているではないか。もう大人じゃん私、もうこの年齢だとロリコンになるのか?

 でも、肉体は同年齢だし。この場合はどうなるのだろう。私はロリコンなのか、ロリコンでは無いのか。そもそもロリコンの定義ってなんだ?


「何を話しているのですか?」


 後ろから急に声がした。私とお母さんは驚いて振り向くとそこにいたのはグレースだった。グレースは選択が終わって今丁度来たところだったみたいで私達の話が気になって声をかけてきたそうだ。私達は今話していたことをグレースに説明した。


「なるほど分かりました。ヴァレリー様、エマ様がロリコンだとヴァレリー様はエマ様の好みとは逆ということになりますがよろしいでしょうか」


 お母さんの顔がはっとした。グレースの言葉に完全に論破されている。別に私がロリコンでもお母さんのことが好きではないということにはならないがとりあえず今は黙っておこう。


「そ、それはまずいな。よし、エマはロリコンじゃないことを認めよう」

「はい、私の勝ちね」


 何に勝ったか分からないがなんとなく言ってみた。お母さんは悔しがっているがそれ以上に私に好かれたいみたいだった。そこで私はさっき考えていたことを話す。


「まあどっちにしろお母さんのことは好きだけどね」

「はうっ」


 お母さんは顔を赤くして下を向いてしまった。もしかしたらさっき認めたことを無しにしようとするかもと思ったが、それ以上に恥ずかしかったようだ。


「グレースの事も好きだからね」

「ありがとうございます」


 グレースはお母さんとは逆で眉一つ動かさない。本当に感情が表に出ない人だ。いつかはこの人がうろたえる姿とか見てみたいな。

 グレースはそのまま家事の続きがあるようでどこかに行ってしまった。そういえば私が人形を作って家事をやらせるようになってからほとんど家事もやらなくていいはずなんだけどまだやることあったっけ。料理だけは自分がやりたいからやらせていないけどそれ以外は全部やらなくていいはずだ。

 それはそうとしてグレースのことはお母さんも知っているのかな。グレースには何かある気がする。


「お母さんはグレースが感情を表に出せない理由知ってるの?」

「ああ、その話か。グレースはな、もともと凶暴な性格だから封印されてるんだよ」


 何かあるとは思ったがそう来たか。凶暴なグレースとか想像ができない。凶暴とはどのくらいなんだろう、私達にも襲い掛かってくるくらいなのかな。


「この話はあまりここでする話ではない。あまり気にするな」


 万一グレースに聞かれたらまずいので話をやめる。まあ簡単に解ける封印でもないだろうい大丈夫だろう。

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