幼女とロリコン

 ヴァレリーさんに抱っこされたまま家を出て森の中を進む。さっきまでいた家は森の中にぽつんと建てられていた。


「あの、わたし、こんなみためですが、じゅうきゅうさいなんです」

「え? 外見としては10歳にも満たないが……、異世界に来た時に何かしら影響を受けたのかね」


 ぱっと思いつく原因はそれだろう、合っているかは分からないけど。


「そうかもしれません。とりあえず、そういうことなので、あまりこうふんしないでください。こわいです」

「き、気付いていたのかい? 恥ずかしいな」


 一言目からあれだけ叫んでおいて今更何を言っているのだろう。


「だが、気付かれていてその反応なら問題ないだろう、開き直るとしよう。 そうだ! アタシはエマのような小さい女の子が大好きだ! 実年齢など関係ない! 小さいということに意味があるのだ! というか肉体年齢はどう見ても8歳くらいだろう」

「ちょっと!? なに開きなおってるんですか! ほっぺさわらないで! おろして!」


 開き直った途端にぐいぐい来るヴァレリーさん。私を抱っこしているのをいいことにもみくちゃにしてくる。結局実年齢は関係なかった。全力で抱きしめて頬ずりされたので流石に苦しくなって暴れる。


「分かった、下ろしてやろう。 ほれ、ここがアタシの家だ」


 そうこうしているうちにヴァレリーさんの家に着いたらしい。疲れたが暴れたり叫んだりしたおかげでこの体にも慣れてきた。この家はさっきまでいた家よりは少し綺麗そうだ。

 未だに森の中だが、家の近くには底が見える程に透き通った池があり、木もいくつか切り倒されていて多少は開けている。


「きれい」

「そうだな、アタシも気に入っている場所だ」

「ずっとここに一人でいるんですか? 他の人とか家は?」

「そうだね、今は一人で住んでるよ。たまに食材を買いに近くの村にいくことはあるけどね。そこらのアタシの事情も一緒に住んでいる以上話しておいた方がいいだろうね」


 どうやらヴァレリーさんは何かしら抱えているものがあるらしい。でなければこんなところで一人で暮らすことは無いだろう。

 ヴァレリーさんに連れられて、家の中に入る。外見と言い、コテージみたいな家だ。


「エマがいた世界やそこでエマが何をしていたかも知りたいしね。よし! アタシと一緒に風呂に入ろう。ゆっくり語り合おうじゃないか。エマの裸も拝みたいしな!」


 さらっと自分の欲望を混ぜてくる。この人と一緒にお風呂に入って大丈夫だろうか。

 でも、私もいろいろあって疲れたしお風呂に入りたい。それに、一緒に住む以上お互いの事を知っておくべきだろう。

 私はヴァレリーさんに連れられてお風呂場に向かった。


 お風呂場はあまり広くないが、今の私とヴァレリーさんが十分ゆとりを持って入れる広さだった。逆に元の私の姿だったらちょっと窮屈そうだ。


「エマの裸、可愛いな♪ アタシが隅々まで洗ってやろう。銀の髪も透けていて奇麗だな」

「ちょっ、自分で洗えます! えっ? 銀?」


 私は元々黒髪だ、銀髪のはずがない。

 肩まで伸びた髪に手をやり前にもってくる。確かに銀髪だった。


「髪の色が変わってる」

「なんだ? 元々の色は違うのか? じゃあその碧眼もか?」

「目もなの? 私は元々黒目黒髪ですよ」

「そうか、原因については今すぐは分からないな。とりあえずアタシに会う前のエマの話を聞かせてくれ。  柔らかい腕♪」


 いつの間にか体を洗われているが、諦めて自分の話を始める。中学校や高校の話、写真館で半年働いた話、そして、母の話と祖母の話。

 話し終わるころにはお互い体を洗い終わって湯に浸かっていた。


「そうかい、ずいぶん長いこと勉強するのだなそちらは。それに祖母と母の話、辛かったな。ん? 父は? エマの父の話はまだ聞いてないぞ?」

「父は私が生まれる前に他に女を作って出ていきました」


ヴァレリーさんの顔が暗くなる。自分が質問したことを後悔しているのだろう。そんな顔させたかった訳ではないから、私も申し訳ない。


「そうか、嫌なこと聞いたね、悪かった。父親はどこの世界でもクズばっかだね」

「ヴァレリーさんのお父さんもそうなんですか?」

「そうだね、でも、その話の前にそろそろ風呂から上がらないかい? アタシの話は風呂から出てご飯を食べてからにしよう」


 確かにそろそろ上がる頃合いだろう、お腹も空いたしヴァレリーさんの話は食事の後に聞かせてもらおう。


「分かりました」


私たちは風呂から上がり、タオルで体を拭き始めた。

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