第2話折り畳み傘2
「だったら、君が俺と付き合ってよ」
「いいですよ」
「は?」
こいつ今なんて言った?想像していた反応とあまりにも違いすぎる返答に動揺を隠しきれない俺
「ふふふ、なんですか?微妙な顔して「それはちょっと…」とか言って欲しかったんですか?先輩ってMなんですか?」
「なわけねぇだろ、は?てかお前意味分かってる?」
「もちろん分かってますよ、でもその質問は冗談と分かっていてもされると嫌な事なのでやめた方がいいと思いますよ!あーでもこれから私が先輩の彼女なので、その質問をする機会らなくなっちゃいましたね!」
自分の彼女、今まで彼女が出来たことのない俺の心臓を心躍らせるには十分だった。
いやいや俺の理性もっと働け!どうせ冗談とか、からかってるだけに…と考えながら春菜
の方を見ると目があった。
「…本気、なのか?」
「ええ、もちろん」
………気まずい沈黙が訪れる。もしこれが恋人同士ならキスでもするんじゃないか、雰囲気、あれ?今付き合ってるんだっけ?
その瞬間突風が2人を襲う
「うわっ」
「きゃ」
とても強い風に驚いたのか、春菜は傘を離してしまいどこかに飛ばされてしまった、俺は傘は離さなかったが、風に逆らっていたせいで裏返ってしまった。
「こっちだ」
そういって春菜の手を引いて風と雨を避けられる場所に入る。民家の屋根付きの駐車場のようなところで正面の大きなマンションが雨風を防いでくれている。
「私の傘…」
「ダメだこっちも壊れてる」
ひっくり返った傘を無理やり戻したが骨の部分が折れてしまっている。
「さて、どうするか…」
「どうしましょう」
「お前、誰か迎え来てくれるあてってある?」
「ない、親もまだ仕事だと思う、先輩は?」
「こっちも似たようなもんだな」
さてどうしたものか、壊れてしまった折り畳み傘を、多少無理やり畳む。
「すまん、せっかく借りたのに、弁償するよ」
「いや、しなくていいですよ、先輩はもう彼氏なんですから」
それこの状況でもまだ続いてたんだ。真意を確かめたいところだが、今はそれどころじゃない。
「ねぇ先輩、走りませんか?確か走れば10分くらいの所にコンビニがありましたよね?」
コンビニ、たしかにあるが10分の距離じゃなかったはずだ、しかもこの風も強くて雨が降ってる中なら転ぶ可能性もあるし、たとえ上手く行ったとしても、風邪を引くのがオチだ。なら仕方ない
「お前、よければうちくる?」
「コンビニよりも近いってことですか?」
「あぁそうだな」
「どのくらいですか?」
「んー3秒くらい?」
「ふぇ?」
可愛くキョトンとする、可愛い反応の仕方するなーこいつ
「俺の家」
そう正面のマンションを指すと春菜の綺麗な目がジト目になっていく。
「少し前まで悩んでた私がバカらしいじゃないですか、でも…よければ傘を貸してくれれば」
「なに?お前俺の彼女じゃなかったの?彼氏の家入んの恥ずかしいのか?」
「先輩ってやっぱ意地悪ですね、だからモテないんですよ、ほら行きましょう」
そう言って走り出してしまう春菜、風向き的に雨の強さも風も大分マジだが。まったく雨がふってないわけじゃなく、もちろん地面も濡れている。
「危ない!!」
「え?」
俺はバカなのだろう、正面から倒れそうになる春菜の斜め後ろから滑り込むように、地面と春菜の間に入る。痛いし、びしょ濡れだ。
そんな中でも、俺の背中に微かに当たる柔らかい感触に意識が吸われる。
「大丈夫ですか!?先輩!」
「見た目ほとんどなくても実際押し付けられると、ちょっとはあるんだね」
「は?何言ってるんですか?早く立ってください、怪我はないですか?」
「大丈夫だって、ほら行こ」
そう言いながらも足が結構痛いので春菜に肩を借りて家に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます