胸糞注意! 私だけのヒーロー! ハピコロバイ!
戸森鈴子(とらんぽりんまる)
胸糞注意! 私だけのヒーロー! ハピコロバイ!
今日も闇夜を切り裂き、悪を滅する! 私だけのヒーロー! ハピコロバイ!!
「いっけぇええ!! ハピコロバイ!!」
『おごおおおお!! ぐるしゃげぶる☆アボバッサ☆んごんだ!!』
叫び声とほとばしる人間の血!
「ぎゃああああ!!」
私の素敵なアイラブ☆マイヒーローは、バイクでのひったくり犯の首を華麗に斬り落とした!
「やったわ! ハピコロバイ!」
『んごおおおおおおおお!! ぼさ☆ぼっばっがああああ!!』
「ふふ、今日も三人やったわね!」
あんな奴らは更生不可能!
ミンチ上等!
お姉さんのハンドバッグは……ちょっと脳髄と血液にまみれちゃったけど……いいよね?
警察がけたたましくサイレンを鳴らして集まってきた~。
「行こうハピコロバイ」
『ぐぅあぐあ』
私はハピコロバイに抱かれて、ビルとビルを飛び移り隠れ逃げる。
そろそろ……海外ヒーローものみたいにニュースに取り上げられて
『我らがヒーロー! ハピコロバイ!』って話題になってもいいと思うんだけどなぁ~。
『おごが……あごが……ぐあぐう……ぐぐ』
「うん、いつもの公園で降ろして」
ぴょんぴょ~~んとハピコロバイがジャンプを繰り返してついた家の近所の公園。
あ~ハピコロバイのトゲットゲの汚い灰色の体毛。
「痛っ……」
すっごく長い牙にダラダラと溢れる臭いヨダレ。
「くっさ……」
私はビニール生地のパーカーを羽織ってるからヨダレには濡れない。
蛍光色の宇宙柄のセーラー服が私の戦闘服。
ピンクの髪はツインテールで、まさに美女と野獣よね。
長い耳に、短い手足……。
ハピコロバイの瞳は、汚く濁ってものすごく釣り眼。
「どこ見てるの?」
豚の鼻を強烈に潰したようなグロい鼻。
「醜いわね……ハピコロバイ……」
『ぶぶえ……ぶば……ぶううううがぁ』
「解除」
ハピコロバイは涙を一粒零した。
すると体毛は抜け落ちて、どんどんどんどん美少年になっていく……。
「ひどいよ……ひどいよ……はとみちゃん……」
しくしく泣く身体は、『あれ』が生えてる美少女ね。
男の娘ってやつかな。
私は公園に隠してあった毛布をかけてあげる。
「んー? 今日も可愛いわよ、カモメ君」
カモメは私の大事な幼馴染の男の子。
生まれたまんまでナチュラルに金髪の巻毛に長いまつ毛。
キラキラのブラウンの瞳から涙が溢れる。
「ねぇーもうやめてよーお願い」
「何を言うのよ……ハピコロバイ」
「やめて! ハピコロバイなんてやめて! 呼ばないでよお」
カモメがわなわなと泣きながら身体を縮こませる。
「ハピコロバイ、頭ハッピーなやつを殺してバイバイさせる……意味ピッタリじゃん」
「そ! そんなの! 怖いよ! もういやだよぉおぉ!!!」
公園の土の上で裸で横たわって泣く美少年。
毛布の影から、チラチラと○○○が見えてるよ~?
あぁやめてカモメ、性癖の新たな扉を開かせないで~~。
「は、はとみちゃんは、はとみちゃんは!! 僕を使って殺戮を楽しんでるだけじゃないかぁっ!」
公園に響く、カモメの泣き声。
「んんん~~??」
「ぐすっ……そうでしょ……?……だ、だからもう……やめ……」
「んひょおお!! 大正解~!!」
私は飛び跳ねた! ボタンを押すように飛び跳ねた!!
「ひえええ!?」
「この日を待ってたわよぉ! 私のそのココロに気付いてもらわないと、葛藤する美少年を操って殺戮を繰り返す醍醐味がないんだからぁああ!!」
「はっ……はとみちゃん! なにを!?」
「んふっふ~! 私だけのヒーロー! ハピコロバイ~~!! この世の全てを破壊しましょう~~!!」
「い、いやだぁあぁああああ!!」
「私だけのヒーロー!!」
「やめてぇええええええ!」
「ハピコロバイ! はっつど~~う! ボタンポチィ!!」
泣き叫ぶカモメは、また醜い化け物になっていく……ゾクッゾクゥ……!
私が操るハピコロバイはそれはもう強くて、世界は本当に滅亡したんだと思う。
思うっていうのは、あと少しってところで休憩してたらハピコロバイに私も殺されちゃったんだ。
うふ、それも想定内。
あんな終焉世界でカモメは一人でどうやって生きていくのかなって思ったら、興奮しちゃって脳髄撒き散らしてビクンビクン! して私は死んだよ。
あぁ……すごく妄想が捗る……滅亡世界に絶望の美少年。
ハッピーに殺されてバイバイだよ、私だけのヒーロー。
私だけのヒーロー! ハピコロバイ!!
胸糞注意! 私だけのヒーロー! ハピコロバイ! 戸森鈴子(とらんぽりんまる) @ZANSETU
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