第2話

この世界は珍しい茶髪から垣間見える鋭い眼光。

次に目に映るのはその鋭い眼光から落ちたところにある背の高い鼻。

主張が激しくなく見るものを誘惑する唇。

背の高くも筋肉質の体格。


…と彼自身は思っていた。


実際は汚物色の髪色からヌメヌメと這い出る吊り上がった目。

吊り上がった目につながった、鼻筋が短く鼻先は丸みを帯びた鼻。

通常の二倍ほどの厚さの尖った唇。

背が低くだらしのない体格。




…彼から見る彼自身と世間から見る彼にはだいぶ差異があったようだ。




今日は東国に来ている。

東国には”フユ”なる時期があるそうだ。

その時期は”身の毛がよだつ”を体感できる程寒いらしいが、私は一か月前からこの村に来ている。

なぜならそう、”フユ”の後半には、女から男に贈り物をする日があるらしいのだ。

意中の男に贈り物をし、その一か月後に男からの返事の贈り物があるのだ。

もちろん俺は、当日行っただけで大量にもらえるのは確信しているが、一か月前からの仕込みでもっと多くの女に俺に挙げるチャンスをくれてやろうというのだ。

俺は毎日町に出た。全ての女に挨拶をした。可愛い子には得に元気よく挨拶した。

勿論、男には挨拶なんてしない。俺に献上する贈り物を女から奪う大賊でしかない。

見るたび悪態をつき、女から遠ざけていった。

その為か、女は俺を見るたび黄色い悲鳴を上げていた。

その為か、男は俺を見るたび毒舌を吐いていった。

女を取られたからってそんな態度を取るなんて男として情けないよなぁ。




”フユ”の後半。その日当日だ。

俺はそわそわして待っていた。

そこに一人目の女が来た。

明るい赤髪にくりっとした眼の可愛らしい娘だった。

体格も悪くない。


「あの、これ…」


とだけ言って女は去ってしまった。

恥ずかしいにも程があるだろう。、何も言わずに行ってしまうなんて。

俺と話せるタイミングなんてそうあるもんじゃなのになぁ。もったいない。

その日はの以外の女は来なかった。

他の女はあの女より恥ずかしがり屋だったらしい。

まぁ、来ただけでもよしとしてやるか。

あの女だけが俺に選ばれる権利を得たというのだ。

…仕方なくあの女を俺の嫁にしてやるか。




その日の一か月後。

俺はその娘のために極上のプレゼントを用意した。

俺のフィギュア。

俺の等身大ポスター。

俺の写真集。

そしてそれを包むただの可愛い紙。

もしかしたら俺の顔がプリントされた紙でもよかったが、そこはサプライズだ。

ただの可愛い紙で包まれたただのプレゼントかと思いきや、俺のグッズ。

素晴らしいサプライズじゃないか。

俺はそれを持ってあの赤紙の女の元へ向かった。

村の酒場にはその女がいた。

周りにもその女の取り巻きがいたが、俺はそれを押しのけ、その女の肩をつかんだ。


「お前、これ、この前のお返し。正直、おれはお前のことを好きじゃないけど、五番めくらいの彼女にしてやってもいいけど?」


「は?」


「え、お前、一か月前…」


「あぁ、」


女は納得したように、頷き立ち上がった。

そして俺の手にある可愛い包み紙の物体をつかみ、地に投げ捨てた。

それは形を失くし、中身をぶちまけた。


「あんたさぁ、気付きなよ。嫌われてること。」


「はい?」


「大体さ、罰ゲームだってわかるでしょう?私がじゃんけんで負けて、急に村に来た嫌われ者に贈り物をするっていうね。まず何?いちいち私に『おはよう』なんて。何回言ったと思っているの?更に私の彼氏には毎日罵声を浴びせてくるし、気持ち悪いのだけど。 てかなにこれ?お前の…グッズ?自分で作ったの?頭やってるんじゃない?この村から出て行って。村の総意よ。勘違いしてんじゃねーよ。このゴミが。最初に見た時から好感度最低なんだよ。顔は汚いし、体型は悪いし。よくそれで生きていけるな。私だったら生まれた瞬間に死んでいるわ。」


 その後、取り巻きにすら馬鹿にされた俺は、その村を後にした。

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勘違いイケメン(仮) madoka @ciela_

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