6 すべらせ坊と岩男
「なんだこれ?
「停電じゃないでしょ。はじめから電気なんてついてなかったじゃない」
「ああ、そういえばそうか」
「ちょっ、おいてくなよソウタ」カジがあわてて廊下にでてきた。カジくんって、体は大きいくせに気はちいさいのね、とフミカはおもった。
「はやく外にでよう」フミカはソウタとカジにいった。
「え? いや、おれらまだ
「そんなこといってる場合じゃない!」フミカが
二人はきょとんしていた。フミカは二人の返事をまっていることすらもどかしかった。
「なんでもいいからはやくここからにげなくちゃ。来ないなら私一人で行くから」フミカは二人をおいて走りだした。
カジはそわそわとおちつきなく、
「ソウタ。おれもやばい気がする。はやくにげたほうがいいよ」
といった。
「いやいや、これからまだ──」
といいかけたソウタの手首を、カジがつかんだ。
「いたたたた!」カジの怪力でソウタの手首はにぎりつぶされそうになった。
カジは
フミカたちは五年生の教室がある三階から階段をかけおりて、
フミカはいちばんちかくのドアの
「びくともしない……」
恐怖にかられたカジは、
「はあはあ……ダメだ」カジは息を切らしながらいった。
「あっちに行ってみよう」フミカは西側にあるもうひとつの玄関ホールへと二人をうながした。
西側玄関までの廊下は
先頭を走っていたフミカがいきなり立ち止まって、両腕をひろげると、うしろを走っていた二人を制止した。フミカの腕がちょうどみぞおちにぶつかって、二人はしばらく息ができなかった。
「なんだよ、急に止まるなよ」ソウタが
「なにか、いる」フミカはいった。
三人は目のまえの
べちゃ、べちゃ、というしめった音がする。
にらみつけた暗闇の中に人影がうっすらとみえた気がした。三人はあとずさった。
べちゃ。べちゃ。
非常灯にてらされ、それの姿を目でとらえることができた。お
「すべらせ坊」ソウタがつぶやいた。
「え?」フミカがききかえした。
「妖怪すべらせ坊。あいつの名前だ。でもなんで?
「引きかえそう!」カジが叫んだ。
三人は正面玄関へと走った。
正面玄関につくと、ホールのどまん中にさっきはなかった巨大な
(なんでこんなところに岩?)と三人ともおなじことをおもった。
と、そのとき
ゴゴゴゴゴゴゴ。
岩の表面がもりあがって二つのこぶができた。こぶはどんどんとのびていって、それが二本の腕になった。次に岩の底から二本の足が生えた。岩が人のかたちになった。
「
「こっちにくるぞ!」カジがさけんだ。
岩男は
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