小さなヒーロー

三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5

第1話小さな私のヒーロー

「せ、先生!息子は大丈夫なんですか!?」


私は周りも気にする暇もなく病院の先生に詰め寄り大声をあげた。


昨日から三歳の息子の容態がおかしく朝になって一番に病院に駆け込んだのだ。



夜から調子が悪くなり熱が40度を超えていて、呼吸も荒い。

顔が真っ赤で抱き上げるとその熱が伝わってくる。


頭に冷えピタを貼るが熱があるのにも関わらず寒そうにガタガタと震えている。


毛布に包んで病院に着くとその様子にすぐに診察室に通された。


「ちょっと検査をしますからお母さんは外でお待ちください」


診察室から出されて待合室を指される。


しかし大人しく座るほど余裕はなく立って診察室を見つめていた。


数分、いや、何十分、数時間待ったような感覚に本当の時間がわからない。


ようやく声をかけられて部屋へと通される、我が子に再会すると少し落ち着いた顔に呼吸も落ち着いて見えた。


「しゅんくん!」


駆け寄って手を握るがまだ少し熱かった。


私の声にダルそうに目を少し開く。


「大丈夫!?」


私の声にしゅんはゆっくりと手をあげて私の頬を触った。


「まま、いたいいたい? だーじょうぶ?」


口が乾いているのか上手く動かない小さな口で私の心配をする。


辛い自分よりも泣いている私の心配をしてきたのだ。


「うっ…」


ぶわっ!とさらに涙が溢れて上手く言葉が出ない…周りの看護婦さん達がもう心配無いよと優しく声をかけてくれた。


「まま、へーき?」


「う、うん、うん!大丈夫だよ、しゅんが元気ならママは大丈夫…」


しゅんはそう言うとヘラッと笑ってまた瞳を閉じてしまった。


「しゅん!」


慌てて声をかけると先生が薬が効いてきて寝てしまったのだと教えてくれた。


「強い子だから大丈夫ですよ」


「ママの心配をして優しい子ね」


しゅんを褒められて私は誇らしかった。


「はい、私の小さなヒーローなんです」


私はしゅんの小さなその手をギュッと握りしめた。




悲しい時、苦しい時前を見ると満面の笑みで微笑む君は私の永遠のヒーローだよ。


生まれてきてくれてありがとう。


小さな君の成長が楽しみでしかたない。


これからもずっと私のヒーローでいてね…


スヤスヤと眠る我が子に早く回復するようにと願いながら額どうしをくっ付けた。

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