第38話 リディア救出
(こうなったら一か八かだ!)
快人は腹にささっている腕を抜かずに、リディアをそのまま抱きしめる。
快人は傷がひどかった分、感覚が麻痺して、痛みをほとんど感じていない状況だった。
だからこそ、頭が回り、とっさに動けたのだ。
これがもし、中途半端に切られただけだったら、痛みで動けなくなっていただろう。
ただ、それならすぐに治っていたので、あまり問題はなかっただろう。
「ルー!頼む!」
「キュゥゥゥッ!」
ルーがぴとっと快人の頭の上に乗り、回復能力を発動する。
快人自身の異常な回復力とルーの回復能力は相乗効果を発揮し、リディアは快人の腹から腕を抜こうにも抜けないという状況になっていた。
穴がふさがろうとすることで、刺さっているリディアの腕を押さえているのである。
「リディア!聞こえてるか!」
「う・・・あ・・・」
快人の口から血が垂れる。
それを見て、リディアは少しだけ反応した。
(血か!?)
「じゃあ、飲め!」
快人はリディアの頭をぐいっと自分の首元へと持っていく。
リディアはためらう様子を見せながらも、ガブッ!と快人の首を噛んだ。
「ぐぅぅっ!」
勢いよく血を吸われ、快人の意識が途絶えそうになる。
が、回復力のおかげですぐに増血される。
貧血→普通→貧血→普通を繰り返し続ける。
(おいしいわ・・・)
リディアは、快人の血を飲んだことで少しだけ意識を取り戻していた。
今まで飲んだどの血よりも格別な味がする血に吸血鬼としての本能が命令の強制力に勝ったのである。
快人自身は知らないのだが、実は、快人の血と心臓は龍の物と同質になっている。
それゆえに、リディアは快人の血をおいしく感じているのだった。
「いいか?今から、契約の儀式をするから、うなずいてくれ!」
飲みながらも、リディアがこくっと少しうなずいた気がした快人は契約の儀式を開始した。
「【
リディアは血を飲みながら、こくんとうなずく。
快人は確かにうなずいたのを感じて、契約を続けた。
「『ここに契約はなった!証として、甲は心臓と血に、乙は魂に、印を刻む!』」
契約の儀式が完成する。
が、いつものようにすぐには儀式が終わらない。
元からリディアを従属させていた刻印と新たに快人と契約したによる刻印がせめぎあっているのだ。
『させません!』
「邪魔はダメだよ!」
儀式の妨害のために姿を現した黒幕に、ノアは自身を拘束して鎖を砕き、一撃を入れる。
それと同時に、元々の刻印の方がパキンッ!と割れ、快人とリディアの契約が完了した。
「リディア、ストップ!死ぬ!死ぬから!」
契約が終わると、より勢いよく、ごくごくと快人の血を飲みだすリディア。
快人はさすがにこの勢いだと死ぬ!と叫んだ。
「・・・ごめんなさい。」
リディアは快人の腹から腕を引き抜くと、快人の傷がズブズブと治っていく。
相変わらず、治り方がきもいなぁ・・・と快人は少しげんなりとしていた。
「早速で悪いけど、ノアの加勢を頼むよ。」
「えぇ!今まで無理矢理従えられてた恨みを存分に変えさせてもらうわ!!」
ついに、リディアを操っていた人物(人なのかはわからないが)が姿を見せようとしていた。
『・・・仕方ありませんね。撤退させていただきます。』
「待て!」
ノアは一瞬空間が揺らいだあたりを即座に攻撃する。
それにより、今まで隠れていた姿が見えるようになる。
そして、快人とノアは硬直した。
(ノア!?いや、髪と瞳の色が違う!)
「ステラ・・・姉さん?」
『えぇ、そうですよ。今はお別れです。またいずれ会いましょう。』
それだけ言うと、ステラは姿を消した。
それと同時に、空間が崩れる。
快人とノアが硬直しているので、リディアは慌てて2人を回収するとそこから立ち去った。
―――――――――――――――――
ノア「どうして・・・ステラ姉さんが?」
快人(さっき姉さんって言ってたけど、どういうことなんだ?しかも、ノアにそっくりだったし。)
リディア(何かしら関係があると思ってたけど、姉妹だったのね・・・)
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