第34話 転移トラップと再び人食い門

 31層にたどりついた2人は現在ガーゴイルと戦っていた。


「キュアァァァッ!」


「ケケケ!」


 マッドピエロとルー2人がかりは過剰戦力だったようで、ガーゴイルはフルボッコにされていた。

 ガーゴイルが飛ぼうとした瞬間、ルーのブレスが石の翼を穿つ。

 もちろん、石の翼をはばたかせて飛んでいるわけではないのだが、翼が飛ぶための基点であるため、翼を壊せば飛べないことには変わりないのだ。

 ガーゴイルが動こうとしたら、マッドピエロが玉乗りで跳ね飛ばす。

 今度はルーのブレスが、今度はマッドピエロのナイフが、というように、一切攻撃できぬまま、それどころか行動できぬまま、ガーゴイルは惨殺された。


「ガーゴイルが可哀想になるな・・・」


「先程のガーゴイル・・・通常の個体より弱いようですねぇ。」


「そうなんですか?」


「防御力がかなり低いですねぇ。普通だったら、マッドピエロのナイフが刺さらないので。」


 マッドピエロのナイフが浅くではあるが、抜けない程度には刺さっていたことを快人は思いだす。

 ガーゴイルはHPも防御力も高く厄介だと聞いていたのだが、あっさり倒せて拍子抜けしていたのだが、どうやら弱個体だったようである。


「っ!?」


 ガーゴイルを倒したことで油断していたのか、快人がその場から1歩動くと、そのまま体が動かなくなった。

 快人の足元には魔法陣が展開されている。

 どう考えても転移トラップだった。


(体が動かない!)


「も・・どれ!」


「快人さん!?」


「外で待ち合せましょう!」


 気合いを入れると、なぜか口だけ動くようになったので、ルーを契約印の中に戻し、博士に声をかける。

 博士がうなずく前に、快人はその場から姿を消した。


――――――――――――――――――――


 快人は転移を終えた瞬間、自分の切り札をすぐさま呼び出した。


「ノア!」


「はいはーい!」


 軽い調子で出てきたノアは久しぶりに角を生やした状態である。

 そして、出てきた瞬間、周りにいた雑魚は消失した。


「ふふん♪」


(いや・・・ガーゴイルとかグレーターデーモンとかいたと思うんだけど?)


 グレーターデーモンもガーゴイルと同様に悪魔系のBランクモンスターだ。

 DランクのインプやCランクのデーモンの上位個体である。

 快人が転移した先にはそれらが複数体いたのだが、ノアを呼び出した直後、チリとなった。


「やっぱりノアは規格外だなぁ・・・おいで、ピクシー、ルー。」


「・・・。」


「ルゥ♪」


 快人はピクシーを呼び出すと、案内してくれるように頼む。

 ピクシーが指し示す方向を進むと、すぐに、門へとたどり着いた。


「どう考えても・・・ボス部屋の門だよな、これ。」


 快人が門に触れた瞬間、門に魔法陣が描かれ、ガバッと開く。

 どこかで見たことあるような現象に、快人は頬がひきつった。


「ノア!」


「無理!逃げられないよ!」


 ノアですら抵抗できない強制転移だということを知り、驚きながら、快人達は門へと吸い込まれていった。


「よっと!」


 一度経験したことがある現象だったので、快人はかろうじて対処でき、着地する。

 たどり着いた先は・・・ノアがいた時のような空間ではなく、城の中のような場所だった。


閉塞型シールダンジョン?」


「そうみたいだね。」


 閉塞型シールダンジョンとは、一度入ると特定のモンスターやアイテムによる転移や空間移動を除けば、深奥にいるボスを倒さない限り、脱出することができないダンジョンだ。


「ノア、出られるか?」


「出るだけならできるよ。ただ、どこに出るかはわからないけど。」


「じゃあ、ダメだな。」


 確か、閉塞型シールダンジョンは通常のダンジョンのようなパターンと・・・特殊な形をしているケースがあったはずと快人は自身の記憶を探る。


「ノア、ルー、頼むぞ。ピクシーは案内できそうか?」


 ピクシーは快人の問いかけに首を横に振った。


「分かった、なら戻っていてくれ。」


 快人は契約印の中にピクシーを戻す。

 快人の予想が正しければ、ここは城だ。

 ただし、入口や窓がないが。


「ガァァァァッ!」


「っ!ルー!」


「キュァァァッ!」


 ルーのブレスが襲ってきた相手に直撃する。

 相手はそのまま死んだ。


「今のは・・・」


「レッサーヴァンパイアだね。」


 あまりの即死に快人は襲ってきた相手が何のモンスターなのか分からなかったのだが、ノアはきっちりと確認していたようである。

 悪魔系Cランクモンスター、レッサーヴァンパイア。

 回復力が厄介なモンスターだが、ルーのブレスなら一撃で倒せる程度のようだ。


「多分、ここ城だよな?」


「そうだね。城か屋敷だと思うよ。」


「なら、一番奥の部屋か一番最上階にボスがいそうだな。」


「ボクが運ぼうか?」


「なんか格好悪いけど、頼む。そっちの方がよさそうだ。」


 ノアが快人を抱きかかえて、そのまま飛んで進む。

 こうして、SSランクダンジョンの攻略がスタートしたのだった。

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