第32話 悪魔ダンジョン
8月1日。
快人はギルドから出されていた指名クエストに参加するため、元妖精ダンジョン、現在、悪魔系が出没するBランクダンジョンへと向かっていた。
「エイワン博士ですか?」
快人は、ダンジョン前に1人で立っていた白衣を着た中年の男に声をかける。
「どうも!立川快人さんですね!ふむふむ・・・見た目も性格もいたって普通ですね・・・。いやー!私、あなたのファンでしてね!契約士の適性持ちにもかかわらず、契約ダンジョンで全モンスターに襲われる契約士!なんて希少な存在なんでしょう!それを迫害するだなんて、ギルドの頭の固い上層部め!」
「ははは・・・」
(ナニコレ・・・キャラが濃い・・・)
エイワン博士は快人に声をかけられると快人の手をがしっとつかみ、ぶんぶんと上下に振り回す。
しかも、口がよく回るようで、機嫌の落差も随分と激しいようだった。
「おっと、これは失礼。私はエイ・ワン。よく間違えられますが、エイ・ワンでフルネームですので。博士と呼んでいただければ、うれしいです。」
「では、博士。ダンジョンに入る前に聞いておきたいことは?」
「そうですねぇ・・・いえ、やめておきましょう。事前情報は時に、認識を狂わせます。私が質問したことに答えるという形でいきましょう。」
「はい。」
(さっきのは何だったんだ?)
一旦落ち着くと非常に優秀そうな研究者の顔をのぞかせる博士。
見間違えだったに違いない、と快人はそう強く信じることにした。
「あ、やっぱり事前情報いいですか?」
「ちなみに何の情報か聞いても?」
「契約できなかった頃のですねぇ・・・話を・・・」
(この人の場合、侮蔑からじゃなくて、好奇心からだけど・・・その好奇心がやべぇ・・・)
「もうタイムアップということで。あとはダンジョンについての質問でお願いします。」
「そんなぁ・・・」
「どうして、あの時、最初から質問をしていなかったんだ」とか「時間を戻すモンスターを探すべきか?」などなどとぶつぶつとつぶやき始める博士。
なんかやばいことに手を出しそうな博士を見て、快人は「さぁ、行きましょう!」と慌てて、博士をダンジョンに向かうように促した。
――――――――――――――――――――
「珍しいことに悪魔系のみですねぇ・・・」
あれから4時間程が経ち、現在ダンジョンの5層まで2人は到達していた。
まだEランクまでしか出てこないので、快人のルーだけでも十分に対処ができている。
「そこの新種のドラゴンも気になりますねぇ・・・」
ルーがブレスを放っている最中に、そんなことを博士が言ったので、ルーが「キュアッ!?」と驚きか不快感からブレスがそれた。
「おや?人語もきちんと理解しているんですかねぇ?」
「いやいや!?そんなにじっくりねっとり見られたら、モンスターだって気づくでしょ!?」
「おっと、失礼。私は、好奇心が過剰だと同僚にもよく言われているんですよぉ。気をつけないと。」
時すでに遅しって言葉知ってますか?と快人は言いそうになったが、物理的に手で口をふさいでストップする。
仮にも雇い主が相手なのだから、しっかりとした態度をとらないと!と気を引き締めなおす。
すでに「仮にも」という言葉がついている時点で、快人はどう考えているのかは丸わかりだ。
「もう少しもぐりましょうか。」
「はい。」
しばらく、ダンジョンの下へ下へと進む。
安全地帯(モンスターが入ってこないところ)で食事をしたり、仮眠をとったりしながら、1日程が経った。
「うーん、20層ですかぁ・・・」
「何か問題でも?」
「Bランクのモンスターが出て、40層近くあるダンジョンの割には1層ごとの広さが狭いんですよねぇ・・・」
「まるでEランクダンジョンに無理矢理階層を増設したみたいですねぇ」と博士は言う。
通常Bランクダンジョンともなれば、ボス部屋に到達するまで2週間程かかるのである。
だがこのままいけば、3日くらいでボス部屋まで到着しそうな勢いだった。
「ダンジョンオーバーが原因なんでしょうか。」
「それに罠もありませんし。」と博士が言った瞬間、博士の足元でカチッと言う音がなった。
博士はそのまま足を動かさず、そのまま、快人の方に顔を向ける。
「まさか・・・」
「・・・博士、フラグって知ってます?」
2人とも引きつった顔をするのだった。
――――――――――――――――――――
作者「フラグとは、忘れた頃にやってくるものである。」
快人「天災みたいに言うな!」
作者「いやぁ、でもそんなものですよね。」
快人「否定はしないけども!」
博士「フラグを非科学的とは言いませんよぉ、そもそも、ダンジョンが非科学的ですからねぇ。」
作者「なんか現れた!?」
快人「博士・・・どうしてここに?」
博士「はて・・・ここはどこでしょう?」
作者「まさかの迷子。」
快人「戻りましょう、博士。」
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