第30話 リディアとの邂逅
(・・・失敗したわね。)
子供を見かけて親切から声をかけたのだが、そのせいで面倒な相手につきまとわれることとなってしまった。
悪い虫を寄ってこさせる原因となり、子供を怖がらせてしまった、とリディアは後悔していた。
(従属さえされていなければ・・・)
リディアは自身の首筋に刻まれている刻印を意識する。
先程から、男達を威圧して追い返そうとしているのだが、外に出る際は、力を使わないという条件を出されているので、先程から条件を破ろうとしている罰として、全身に痛みが走っていた。
(苦しい・・・)
痛みから顔色が悪くなり、息が少し荒くなる。
男達はそれを見て、怖がっていると勘違いして、余計にわちゃわちゃと声をかけてきていた。
「よう、久しぶりだな。」
「「げぇぇぇぇっ!?」」
リディアは誰かが自分と男達の間に歩いてきたことに気づく。
リディアは顔を上げると、少年と少女がそこには立っていた。
「な、何でお前が!?」
「いや、こっちのセリフだ。こんなに早く、ブタ箱からよく出てこれたな?」
「な、なんのことだよ。」
男たちは快人の言葉を聞いて、顔をひきつらせると、周りを見る。
自分が何か罪を犯したことが周りにバレそうで、怖気付いたのだ。
「全部言ってやろうか?」
何を、とは快人も言わない。
男たちは顔を青くする。
「そ、そういえば、俺、用事があったわ~。」
「俺も俺も。」
「「それじゃ!」」
息ぴったりに流れるように退散する男二人。
人ごみを押しのけ、かきわけるかのように走り去っていった。
「逃げ足速いな。」
「前回はその足を最初につぶされてたからね。」
片方の人のみだけどね、とノアは笑う。
契約の代償だったとはいえ、ノアがつぶしたんだけどな、と快人は思う。
(というか普通に腕と足あったよな?上級ポーション使ったってことか?どこにそんな金があったんだ?)
消失した部位を生やすには最低でも上級ポーションが必要である。
上級ポーションの値段はだいたい500万から1000万。
高ランクの契約士になればちょっとお高い買い物程度で済む値段だが、それでも高いものは高い。
男たちは根木から受け取っていた報酬やアイテムは基本、取り上げられ、慰謝料なども払ったはずである。
にもかかわらず、上級ポーションを持っていた、あるいは買えるだけの財力があったのだろうか?と快人は考える。
(まぁ、取り上げられる前に勝手に使いでもしたんだろ。)
あいつらならありえそうだ、と考える快人。
「ありがとう・・・助かったわ。」
「あぁ、いや、ただ一応、知り合いが迷惑かけて・・た・・」
途中で快人は驚きで硬直する。
リディアが快人と実は知り合いだったとか、そういうのではない。
(うわ・・・むっちゃ綺麗・・・っていうか、ノア並みだな。)
リディアとノアでベクトルは違うものの、人を超えたような美貌という点は変わらない。
余りに整った顔立ちに快人は驚愕していた。
「どうかしたのかしら?」
「カイト~!」
「あ、いや、なんでもない。とりあえず、知り合いが迷惑かけてたっぽいからな、介入しただけだ。」
そう言うと、快人はむっすぅという顔をしたノアをなだめる。
ノアは「絶対見とれてたよね!」とすねながら言っていたが、快人の「ノアの方が綺麗だぞ」という言葉で、機嫌が戻るどころか、よくなっていた。
「あいつらがまた来ないとも限らないし、一緒に行くか?」
「えぇ・・・そうね。お願いできるかしら?」
「あぁ・・・いや、やっぱり行かなくてよさそうだな。」
快人は「みかん~!どこ~!」と声を上げている女性が徐々に近寄っていることに気づく。
「こっちです!」と快人が叫ぶと、女性はそれに気づいたのか、近寄ってきた。
「みかん!」
「お母さん!」
「すいません。保護してくださってありがとうございます!」
みかんとその母親は抱き着きあうと、母親の方がお礼を言って、頭を下げる。
「いえいえ、というか、俺たちは何もしてないんで。こっちの子が見てくれていたようですよ?」
快人は自分をメインに礼を言う母親にきちんと報告する。
なんだか、成果をかすめとったようで嫌だったのだ。
「そうなの?」
「うん!お姉ちゃんありがと!」
「よかったわね。お母さんと会えて。今度はしっかりついていくのよ?」
「うん!」
「すいません、ありがとうございました。」
少しの間、リディアと親子は喋ると、親子の方は買い物へと去っていった。
「俺達も行くか?」
「あ、待って!」
「ん?」
リディアは去ろうとした快人達を呼び止める。
「その・・・名前を教えてもらってもいいかしら?」
「あぁ、立川快人だ。」
「ボクはノアだよ。」
「カイトにノア・・・私はリディアよ。さっきはありがとう。助かったわ。」
(リディア・・・?)
ノアは名前を聞いて、首をかしげる。
自身の知っている人物に、目の前の少女と見た目がほぼ一緒の人物がいるのだ。
(でも、碧眼じゃなかったよね。)
瞳の色が違うので、ノアは他人の空似だと考える。
「気にしないでいいぞ。」
「そうそう。」
「そう?・・・でもお礼はきちんと言わないといけないわ。ありがとう。」
リディアは笑みを浮かべる。
その整った顔立ちで浮かべる笑顔は快人の頬を赤くさせ、周りにも被弾した。
ノアが再びむぅ・・・となるが、今回のは仕方ないとも思った。
同姓でもあるノア自身も少し見惚れてしまったのだから。
「そうだ、どこか行くなら送ろうか?やっぱり危険だろ?」
「大丈夫よ。もう帰ることにするわ。さっきので、散歩する気もなくなってしまったから。」
再始動した快人が声をかけるが、リディアは断る。
力を封じられた自分があまりにも無力だということを知ったからだ。
自衛のためなら力を使ってもいいように、自分を隷属させている主を説得しようと、リディアは考えていた。
(よくよく見たら・・・)
そうして、リディアは気づく。
ノアという少女が、主にとても似ていることに。
(他人の空似かしら・・・)
リディアもノアと似たような考えを出す。
結局、その後、少しの間喋った後、快人達とリディアは別れるのだった。
「また会えるかしら・・・」
リディアは路地裏に入った後、主に念話で声をかけ、呼び戻してもらう。
リディアが裏路地を入ったのを見て、追いかけてきたチャラ男たち(逃げていった男2人とは別の)は、路地裏に誰もいないのを見て、怪訝そうな顔をした。
―――――――――――――――――
作者「なんかラブコメ風になった気がする・・・」
ノア「・・・ボクよりもなんかラブコメだよね?」
作者「でも、デートできてるよね!?」
ノア「・・・仕方ない。デート10回で手をうつよ。」
作者「さすがに多いぞ!3回だ。」
ノア「8回!」
作者「3回!」
ノア「うぬぬ・・・5回!」
作者「じゃあ、4回だ!」
ノア「分かったよ。それで我慢するよ。」
快人「当の本人を除け者にして勝手に決めるな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます