第26話 徹の切り札と戦いの結末

「出てこい!ホワイトドラゴン!」


「グルァァァァッ!」


 満身創痍のワイバーンとブラックオーガを戻した後、徹が呼び出したのは、ホワイトドラゴン(成体)だった。

 アダマンタイトゴーレムと同じSランク、それもドラゴン系のモンスターである。

 徹の主力のもう片方で、切り札だった。


「いけ!腕と足を引きちぎれ!胸の付近は絶対に攻撃するな!」


「グルァァァァッ!」


 ホワイトドラゴンが吠えながら、アダマンタイトゴーレムに向かって突撃する。

 さながら、怪獣大戦争だった。


「おわぁぁっ!?」


 ホワイトドラゴンが動いたことにより起きた風で快人は吹き飛ばされる。

 徹は事前に分かっていて、体に力を込めていたので、かろうじて飛ばされずに済んでいた。


「グルァッ!」


 ホワイトドラゴンの爪が光る。

 そして、それを振り下ろすと、まるで豆腐を斬っているのかように、アダマンタイトゴーレムの腕を切り落とした。


『片腕の損傷を確認。修復。』


 が、ボスモンスターとなったことにより得た無限回復がアダマンタイトゴーレムには存在する。

 10秒ほどですぐに腕は元に戻った。


「気にせず、切り裂きまくれ!」


「グルァァァッ!」


 ホワイトドラゴンが次に取った行動はブレス。

 ブレスは下向きに放たれ、アダマンタイトゴーレムの両足を完全に消滅させた。

 ズズンッとアダマンタイトゴーレムは倒れる。


『両足の損傷を確認。修復。』


 再びアダマンタイトゴーレムの両足の修復が開始する。


「グルァァツ!」


 だが、それよりも治るよりも先に、ホワイトドラゴンによって、両腕を引きちぎられた。


『両腕の損傷を確認。修復。』


「グルァァッ!」


 両腕の修復最中に、今度は治った両足を引きちぎる。


『両足の損傷を確認。修復。』


 だがまたまた、両足の修復の最中に両腕を引きちぎる。

 修復と破壊を延々と繰り返す。

 だが、このまま続ければ、ホワイトドラゴンが先に力尽きるだろう。

 無尽蔵の回復力と体力を持つアダマンタイトゴーレムと、攻撃力やらスピードは上回っているものの体力に限度があるホワイトドラゴンでは今のままでは結果は目に見えている。

 だが、この足止めが快人の策には必要な物だった。


「えげつないけど・・・先輩、GO!」


「分かってる!」


 徹は快人に声をかけられると同時に、アダマンタイトゴーレムに向かって走り出した。

 もしも誰かが見ていれば、徹の正気を疑っただろう。

 怪獣大戦争を繰り広げている戦場に生身の人間がそのまま走り寄っていくのだから。


「うぉぉっ!」


 徹は破壊により飛び散る石にぶつかりながらも、アダマンタイトゴーレムのもとにたどり着く。

 そして、よじよじとアダマンタイトゴーレムの上へとよじ登っていった。

 最終的にたどり着いたのは、アダマンタイトゴーレムの胸の部分に埋まっている理恵のところ。


「起きろぉ!理恵!」


「・・・。」


「くそ!このゴリラ!真面目な見た目のくせして、実は成績、俺よりも低い馬鹿!いっつもアイアンクローいてぇんだよ!少しは加減しろ、馬鹿!」


「・・・っ。」


(いや・・・結構不満溜まってんなぁ・・・)


 快人は突然、文句をたらたらと言い出した徹を見て、少し苦笑する。

 だが、それは効果があるのか、ほんの少しだけ理恵がぴくっとしたような気配があった。


「契約士としての実力も俺より弱いくせに!注意ばっかしやがって、いつもうんざりだ!」


「・・・っ!」


「成績も実力も俺より高くなってからいいやがれ!」


「う・・・」


「あーあ、俺は不幸だぜ!お前みたいな幼馴染がいてよぉ!」


「うる・・・」


「あぁ!聞こえねぇな!いつもの怒鳴り声はどうした!」


「うるさぁぁぁぁい!」


 いや、本当悪口ばっかりじゃねぇか、と快人はツッコみたくなるが、徹の狙い通り、理恵は目を覚ました。


「・・・ようやく目を覚ましたか、この馬鹿。」


「って、何この状況!?」


「いいか、とりあえず、落ち着け、時間がない。」


「いや、待って。」


「・・・頼む。本当に時間がないんだ。」


 真剣な表情の徹を見て、理恵は少し落ち着きを取り戻す。


「いいか、俺は今から契約の儀式を行うから、うなずけ。」


「え・・・ちょ・・・」


「説明も全部後だ!【契約コントラクト】『甲、宇嶋徹は、代償に魂をささげ、乙、北里理恵に主従契約を求む。』」


「え?え?」


「いいからうなずけ!」


「う、うん。」


 徹の勢いに押されて、戸惑いながらも理恵はうなずく。


「『ここに契約はなった!証として・・・っ!?」


 だが契約の儀式の文言は途中で止まることとなる。

 戦いにより飛んできた大きめの石が徹の顔に当たったのだ。

 ふらっとそのまま倒れそうになる徹。


「ルー!回復だぁぁ!」


「ルゥ!」


 すでに攪乱をやめて、徹にくっついていたルーに回復をさせる。

 保険として、ついていかせていたが正解だった、と快人は過去の自分の判断を褒める。

 回復したことも含め、後は意地で徹は目を開く。


「『ここに契約はなった!証として、双方の魂に印を刻む!』」


 契約の儀式が完成する。

 それにより、アダマンタイトゴーレムの行動が完全に止まった。


「・・・止まった?」


「うまくいったのか?」


 快人は、周りを見渡して、ボスを倒した後に出てくる転移魔法陣を探す。


「・・・あった!転移魔法陣あった!」


「よっしゃあああ!」


 徹と快人は賭けに勝った。

 徹は喜びの叫びをあげるのだった。


――――――――――――――――――――


ノア「なんか、ボクの出番少なくない?」


作者「まぁ、そもそも、今回の章、完全に主人公、徹ですよね。」


快人「俺が主人公じゃないの?」


作者「その時々ということで。メインストーリーの主人公は快人ですよ。たまたま、今回は徹が主人公みたいになっちゃいましたけど。」


ノア「ねぇ、ボクの出番は?」


作者「というわけで次話!第2章のエピローグです!」


ノア「ねぇ!ボクの出番は!」


ちゅどーん(ノアの攻撃による爆発音)


作者「ぎゃぁぁぁっ!」

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