第23話 Aランクダンジョンはやはりきつい

「ルー!」


「キュアァァァァッ!」


 ルーのブレスがCランクモンスターの群れに放たれる。

 が、さすがCランクのゴーレム系だけあって、直撃したものは倒れたが周りにいたやつらは普通にそのまま突撃してきていた。


「もう一度!」


「キュアァァァッ!」


 ルーにCランクの群れは任せつつ、徹と快人は先へ進む。

 今回はダンジョンをめぐることが目的ではない。


「ピクシー!どっちだ?」


 幸いなことに、ピクシーはダンジョンの道案内ができるらしく、快人達は最短距離で進めていた。


「げぇっ!?また来たぁ!?」


 最短距離で進むのはいいのだが、さすがAランクダンジョンだけあって、モンスターと遭遇することも多い。

 現在30層ほどだが、先ほどからCランクモンスターの群れと遭遇していた。


「ワイバーン・・は無理か!くそ!出てこい、ブラックオーガ!」


「グォォォォッ!」


「蹴散らせ!」


 徹はAランクモンスターであるブラックオーガを呼び出す。

 アダマンタイトゴーレムと戦うことが前提である以上、モンスターを疲労させるわけにはいかない。

 ブラックオーガは徹にとっても主力の片割れである。

 だが、サブであるBランクモンスターのワイバーン2体が群れを相手している以上、主力を出すしかなかった。


(快人のモンスターは善戦してくれている・・・)


 同じBランクのドラゴン系であるにもかかわらず、ワイバーンは2体でないと群れを相手できないことに、徹は歯噛みする。

 なぜなら、ワイバーンは成体でBランクに認定されるのだが、成体になってもブレスを吐くことができないからだ。

 肉体攻撃しか攻撃手段がないのである。

 なので、群れの相手となると、ルーに後れを取っているのだった。


(それにしても、あのルーっていうモンスターはどうなってるんだ・・・?)


 ブレスはドラゴンにとって奥の手にも等しい技である。

 エネルギーを多く消耗するのでそう簡単に使えるわざではないはずだった。

 だが、ルーはダンジョンに潜ってからすでに数十発もブレスを放っている。

 にもかかわらず、未だに疲れた様子を見せていなかった。


「よくやったぞ!ルー!」


「ルゥ♪」


 わしゃわしゃと快人に撫でられて喜ぶルーを見て、いぶかしむ徹。

 だが、そんなことは今は関係ないとその思考を振り払った。


「行くぞ!」


「はい!」


 ブラックオーガが群れを蹴散らしたのを確認すると、契約印の中に戻す。

 できるなら、もう1体の主力はAランクのドラゴン系モンスターなので、呼び出して、背に乗る形で移動したい。

 だが、やはり疲れさせるわけにはいかないので、その手段は余程大量のモンスターに囲まれた時の最終手段だった。


「ワイバーン!つっこめ!」


 下に降りる階段の前にモンスターが集まっていたので、ワイバーンを突っ込ませて、道を作る。

 そして、階層間をモンスターが移動できないのを利用して、そのまま階段へと飛び込んだ。


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」


「モンスターが多いな。」


「いや・・なんで・・そんな・・・」


「何で元気なのかって?契約士の体力トレーニングは基本だぞ。」


 息が荒い快人と疲れた様子ではあるが、まだ余裕がありそうな徹。


(だが、よくついてきてくれている・・・)


 快人をワイバーンに乗せるか?と徹は考えるが、やはり、それはダメだ、とその考えを否定する。

 ワイバーンは素早い方のモンスターだが、小型のドラゴンなので、乗ってしまってはそこまではスピードが出ない。

 ワイバーン1体では群れを抑えられないので、移動手段に使うことはできなかった。


(もう2体ほど、ワイバーンと契約できているか、他に群れを相手できるようなモンスターがいればな・・・)


 もっと準備を整えてこなかったことに徹は歯噛みする。


「んぐ・・・ふぅ。」


「ん?何飲んでるんだ?」


「妖精の雫です。」


「妖精の雫か・・・って待て待て!どうやって手に入れた!」


 妖精の雫とも言えば、1瓶100万近くもする高級品だ。

 それにCランク以上のダンジョンじゃないとと手に入らない代物だ。


「ピクシーと契約したので手に入りました。」


「そんなこと聞いたことないぞ・・・」


 妖精系のモンスターと契約している人は快人以外にもいるが、妖精の雫をもらえたという話は聞かないのである。

 もちろん、黙っている可能性もあるが、全員が全員黙っているというのはありえないし、ギルドに報告がいっていないとも考えられなかった。


(いろいろと秘密がありそうだ・・・)


 快人の謎めいた一面を見てしまったが、何か見たらまずいような予感がして、徹はそこを無視することにした。


「先輩も飲みます?」


「まだあるのか!?」


「疲労も状態異常扱いっぽいんで、元気になりました。」


「いや、そうじゃなくて・・・ま、まぁいい。もっと疲れた後でくれ。金はきちんと払う。」


「分かりました。」


 担いでいるバックの中に乱雑に妖精の雫を放り込む快人を見て、徹はため息をつく。

 だが、いい気分転換になったともポジティブに考えていた。


「行くぞ!」


「了解!」


 再び、徹と快人は、ボス部屋をめがけて進みだした。

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