第21話 驚愕の事実

 本当に申し訳ございません!最近忙しくて、投稿が遅れています。

―――――――――――――――――――


「単刀直入に本題を言おう。理恵はボスモンスターと融合している。」


「は・・・?」


 余りの衝撃的な事実に言葉を失う快人。

 それもそうだろう。

 ボスモンスターと融合なんて、初めて聞く現象だ。


「ダンジョンオーバーはダンジョンの新規一掃・・・その際に、中にあったものを。」


「まぁ、それは知ってますけど。」


 契約士としてはあまり一般的な知識ではないが、快人はSランク契約士の武田に話を聞いた際に、そういった知識も少し教えられていた。


「そしてその際、きわめて稀な例だが、契約モンスターや契約士の体の一部がダンジョンと融合してしまうケースが存在する。」


「そんなの、聞いたことないんですけど・・・」


 まったく初めての情報かつ、しかも、ダンジョンに潜る気が失せそうな情報にげっそりとした表情をする快人。

 

「当たり前だ。契約士が減ってもらっては政府も困るからな。だが、これに関しては、弱いモンスターだったり、弱いモンスターとしか契約していない契約士に限定される。」


「え?何その条件。」


「これは、存在の強さといったものが関係しているらしい。詳しくは俺も分からないが。」


(随分と曖昧な情報だな・・・希望的観測じゃないといいんだけど)


「それでだ。今回の場合は最も最悪な例。ダンジョンボスと人の融合だ。理恵はCランクだが、手持ちはCランクモンスター3体のみだ。弱いモンスターとの契約という条件を満たしている。」


「え?」


「これは、2か月ほど前のクエストが原因らしいから、今回のダンジョンで失ったというわけじゃあない。」


「というか、ランクダウンは・・・あぁ、そっか!」


 モンスターの所持数の条件を満たせなくなった場合、ランクダウンという処置が行われる。

 Cランクならば、Bランク以上のモンスターと2体以上契約だが、それを満たせなくなるとランクダウンの処置がされる。

 だが、すぐに下げるわけではない。

 執行猶予として、半年間のクールタイムが存在し、その間に再び条件を満たせば、ランクダウンは免れる。

 もしも、ランクダウンしてしまえば、もう一度最初から条件を満たさなければならないのでかなり面倒だ。


「もう1つ最悪なのが・・・ダンジョンボスの系列だ。」


「系列?」


「ダンジョンボスの名前は、アダマンタイトゴーレム。ゴーレム系Sランクモンスターだ。」


「・・・嘘だろ。」


 ダンジョンボスは通常の同じモンスターよりも強化される。

 通常のホブゴブリンよりもダンジョンボスのホブゴブリンの方がはるかに強い。

 そうはいっても、1個ランクが上がるって程でもなく、個体値が最高値であるとだけ思ってもらえればいい。

 だが、ゴーレム系のモンスターはボスによる強化が独特だ。

 通常なら、ゲームで言えばステータスが全部上がるバフがかかっているようなものなのだが、ゴーレム系の場合はそのバフがない代わり、核を破壊されない限り、


「先輩・・・核の場所は?」


「・・・理恵の心臓らしい。」


「なるほど・・・」


 徹と快人は空を仰ぐ。

 考え得る限りでは最悪のパターンだった。

 理恵の心臓を破壊しなければ、アダマンタイトゴーレムは死なない。

 逆に言えば、人間というもろい存在を壊すだけで、Sランクモンスターを楽に倒せるのだ。

 理恵を救うという選択肢でなければ、それこそBランク程度のモンスター、下手をすればCランク程度でも倒すことが可能だろう。

 だが逆に、理恵を救うとなれば、その難易度は単純なSランクを大きく超える。

 それこそ、SSSランクまで。


「・・・先輩に相談です。」


「・・・なんだ?」


「もう1つ罪を負う気はありますか?」


「それで理恵が助かるなら。」


「イケメンだなぁ・・・」


 即答する徹に、いつもだらけている癖して、こういう時、行動もイケメンになるのはずるいなぁ、と快人は思う。


「俺も最近ダンジョンオーバーになったんですが、そこのダンジョン、悪魔系が出現するダンジョンになったんですよね。」


「悪魔系・・・そうか!ヴァンパイアか!」


 悪魔系Aランクモンスターのヴァンパイアは血の操作を得意とする。

 もしも、理恵の心臓を破壊したとしても、ヴァンパイアによる血の操作で、血の巡りをとめずに、そのままダンジョンを脱出。

 その後、なんらかの回復手段で、心臓を元に戻せば・・・と快人も、そして徹もそう考えていた。


「ただ・・・Bランクダンジョンなので、いてもレッサーでしょうね。」


「そうか・・・」


 レッサーヴァンパイアというCランクの悪魔系モンスターもいるが、それはまぁまぁ弱い。

 血の操作もそこまで精度は高くないので、1人分の全身の血を操作するという作業をとてもではないができるとは2人とも思えなかった。


「なので、賭けにも等しいです。というか、それよりも先輩がヴァンパイアが出るダンジョンを知ってればいいんですけどね。」


「知っている・・・が契約ができるとは思えない。」


「でも、ヴァンパイアって面食いだって聞きますよ?」


 そう、ヴァンパイアの性質として有名なのが、面食いというところだ。

 実際に、ヴァンパイアと契約できているのは、美男美女ばかりだった。

 言うまでもないが、徹もかなりのイケメンである。


「快人は・・・?」


「無理です。昔、一度だけ実験で悪魔系の契約ダンジョンにいれてもらったことありますけど、襲われましたし。」


 そう。

 快人は本来ならば、Cランク以上にでもならないと入ることが許されない悪魔系の契約ダンジョンに入った経験があった。

 『なんちゃって契約士』として騒がれていた時期の出来事である。

 研究者が、どのモンスターでも襲われるのかと気になったらしく、快人は様々な契約ダンジョンに放り込まれていたのだ。

 途中で興味を失ったのか、全ての契約ダンジョンに潜ったわけではないが。


「「はぁ・・・」」


 何にも策が思い浮かばない2人は大きくため息をつく。


「伸司も呼びますか?」


「いや、伸司の奴はBランク以上のモンスターと1体しか契約できていない。それもゴーレム系だ。」


「なるほど・・・じゃあ、無理ですね。」


 ゴーレム系は動きがのろいのが特徴だ。

 同じゴーレム系同士ならランクが高い方がそりゃ強い。

 アダマンタイトゴーレムの一撃を食らえば、Bランクのゴーレムモンスターはおそらく即死する。

 避けるのはスピードからして無理だろう。


「そうだ。対ゴーレムモンスターっていませんでしたっけ?」


「モルのことか?」


 モルとは、魔獣系Dランクモンスターで、モグラのモンスターである。

 地面を掘ることが得意ということもあり、鉱物や地面を素材としたモンスターであるゴーレム系を簡単に破壊できるという特効モンスターなのだ。


「そうです。Bランクモンスターのモルキングなら、アダマンタイトでも壊せるんじゃ・・・」


「壊れても治るぞ?」


「それで、理恵先輩を掘り出してもらって、アダマンタイトゴーレムからそのまま救出したらどうなるんですかね?」


「・・・一考の余地はあるな。」


 確かに単純に分離させることができれば・・・と徹は考える。

 快人は他にも何か案がないか、と考えていたら、ピーンと天啓のような考えが思い浮かんだ。


(突拍子もないけど・・・いけるか?)


「先輩。」


「なんだ。」


「――――――。」


「・・・分かった。それを試そう。」


 快人は突拍子もない策ではあるが、成功率がはるかに高そうな案を言う。

 失敗しても逃げればいいだけだ。

 徹も快人の案を採用した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る