第20話 特殊クエスト
契約士には稀にクエストという特定のダンジョンのクリアだったり、特定のアイテムの入手だったりと、何かしらの任務を要請されたり受注したりすることがある。
もちろん、これに関してはCランク以上にならないと要請されないし、受注することもできないので、今の快人には一切関係ないが。
クエストの場合、準備のお金をギルドや依頼者に用意してもらえたり、ダンジョンのクリアならば、それに加えてクエストの完遂料金がもらえたりと色々お得だ。
もちろん、失敗すれば違約金を払わなければいけないので、そもそも受けないという人も多い。
そして、クエストには特殊クエストというものがある。
これに関しては、拒否不可、違約金なしという条件で、稀にではあるが、クエストの完遂に必要であれば、ランクがいくら低かろうとも参加しなければならないのが原則だ。
クエストでもこれだけは快人にも関係があるのである。
「で、どういうことですか?」
金曜日の放課後、快人は1人で契約部の方に顔を出していた。
なぜなら、伸司は今日からダンジョンに潜って、Cランクに上がるための条件の1つであるCランクダンジョン3回クリアの3回目に挑戦するからだ。
そうして、1人で契約部の方に顔を出したのだが、部室に入ると、珍しく起きていた徹がいた。
しかも、かなり険しい表情で。
「特殊クエストだ。快人にも手伝ってもらう。」
「いや、事情を・・・」
「昨日から理恵が学校に来ていない。」
「理恵先輩が?」
あのまじめな理恵が学校を休むという事態に、快人は驚く。
「先に言っておく。これはおふざけじゃない。正直なところ・・・お前を巻き込むのも悪いと思っている。それにお前がBランク相当のモンスターと契約しているというのも勝手に調べさせてもらった。」
「・・・徹先輩、それはさすがにまずいですよ。」
Bランクからはギルドの情報にアクセスできるとは完全な個人情報である。
それに快人の情報は、いろいろごたごたがあったせいで結構重要な情報扱いされていたはずだった。
「それだけ緊急事態なんだ!」
ダンッ!と机を思い切り叩く。
いつもへらへらというのも違うが、だらけている徹がここまで切羽詰まったような態度をとることに快人は驚愕していた。
「話聞きます。早く話してください。」
「・・・一昨日、理恵は近くのDランクダンジョンに挑んでいたらしい。」
「ソロで?」
「ソロではあったが、内部に他にもソロのCランクの人がいて、その人と協力したらしい。」
まさか、ダンジョンブレイクでも起こって、理恵先輩を放置したのか?と快人は考える。
「だが、ダンジョン攻略中にダンジョンオーバーが発生した。」
「ダンジョンオーバー・・・」
先日、快人も体験したばかりの現象だ。
快人はちょうど今日の朝、そこがBランクダンジョンに認定されたと知った。
(本当にルーとしか契約してなかったらやばかっただろうな・・・)
「それだけならまだよかった。だが・・・いや、ここからの話はかなりまずい。ギルドにも黙って動く。もし、成功したとしても、ギルドをやめることになるかもしれない。それでも、聞くか?」
「その行動で、理恵先輩が助かるんですよね?」
「あぁ・・・」
「なら、忠告は聞かなかったことにします。それなら、ギルドの人に聞かれた時に、そんなの教えてもらえなかったので、ただの特殊クエストだと思ってましたって、答えて、先輩に全部、罪を任せます。」
「ふっ・・・それがいいな。分かった。俺が勝手に話す。お前はそれをたまたま聞いただけだ」
今日初めて、険しい表情から少し穏やかな表情となり笑う徹。
その後、真剣な表情に切り替えると、本題について話始めた。
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