第18話 妖精ダンジョン

 申し訳ございません。課題などに追われてまして、遅れました。

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『ニュースの時間です。契約士ギルドがここ数か月、ダンジョンオーバーの発生回数が急激に増加していると発表しました。』


 快人がもぐもぐと朝食を食べていると、ニュースで興味深い話題が出てきた。


「ダンジョンオーバーか・・・」


 ダンジョンオーバーとは、ダンジョンが成長して、出現するモンスターのパターンや階層数、階層ごとの広さが変化して、ランクがアップする現象のことである。


「ダンジョンは生き物みたいなものだからね。」


「ん?ノアは何か知ってるのか?」


 家では勝手に人の姿で自由に動き回っているノア。

 ちなみに、今、快人が食べている朝食はノアが作ったものだった。


「詳しくは知らないけど、一種のシステムだけど、生き物だからね。」


「よく分からん。」


「ボクも少ししか知らないから、うまく説明できないんだ、ごめんね。」


「いや、別にいいや。とりあえず、何か知っておかないと危険ってわけじゃないんだろ?」


「うん、まぁ、ボクがいれば問題ないよ。ただ、敵がほんのちょっと強くなるだけだから。」


「まぁ、ノアにとってはそうだろうな・・・ごちそうさま、おいしかったよ。」


「えへへ、お粗末様。」


 快人は食べ終わったのでお礼を言うと、にへっとノアは笑みを浮かべる。

 快人はノアの笑みを見て、少し赤くなりつつもシンクに食器を入れて水でざーっと洗い流す。

 その後、キッチンにある食器洗浄乾燥機の中に食器を放り込んでおいた。


「洗うのやっておくよ?」


「いや、食器洗浄乾燥機がせっかくあるんだから、こっち使った方がいいだろ。」


「うーん、洗い残しがある時があるんだよねー。」


「というか、早くも馴染んだな・・・」


 どうしてそこまで知ってるんだ?と快人は苦笑する。

 ノアは快人よりもキッチンのことに関しては詳しそうである。


「そりゃ、キッチンはボクの仕事場だからね!」


「いやいや、ノアの仕事場はダンジョンだぞ。」


「うーん、じゃあ、快人がいる場所がボクの仕事場だからね!」


 にっこりと笑いながらそういうノア。

 快人は顔を赤くして、ノアから顔をそむける。

 ノアも快人が恥ずかしがっていることが分かっているので、余計にニコニコとしていた。


「と、とりあえず、ダンジョンに行くぞ。」


「はーい。ボクは戻るね!」


 ノアは契約印の中に戻る。

 快人はその後、準備を整え、今日挑戦するダンジョンへと向かった。


――――――――――――――――――――


「Eランクダンジョン・・・初めてだな。」


(まぁ、ルーだけで楽勝だと思うよ。でも、広いからちょっと時間がかかるかもね。)


「よし、とりあえず、挑戦だ!」


 快人はEランクダンジョンへと初めて入るので少し緊張していた。


「はぁ・・・事前にわかってたけど、こりゃ凄いな・・・」


 今回、快人が挑むEランクダンジョンでは主に、ピクシーという妖精系のEランクモンスターが現れる。

 状態異常、特に眠りや混乱に特化にしたモンスターで、単純な強さで言えば、Fランクモンスターのゴブリンよりちょっと弱いくらいだが、ウザさで言えば、Eランクのモンスターでもトップクラスである。

 だが、妖精系モンスターのダンジョンは違った意味でも人気だった。

 妖精が住まう場所だけあって、花園であったり泉であったりと景色が非常にきれいで幻想的なのである。

 普通なら観光地として管理するケースもあるのだが、今回の場合、ピクシーだけでなく、イービルという悪魔系という希少系モンスターも出現しているからだ。

 イービルもピクシーと似たような眠りや混乱に特化したモンスターなのだが、何しろ見た目が悪い。

 ピクシーはよくある通り、可愛い妖精のイメージであっているのだが、イービルはピクシーをゾンビにしたような見た目をしている。

 そのため、観光地化は無理だったのだ。


「うーん、ピクシーは倒したくないなぁ・・・」


(それでもいいと思うよ?多分、ピクシーの方は近づかない限りは攻撃してこないから。)


「なら、放置でいいな。出てこい、ルー。」


「ルゥ♪」


「じゃあ、いつも・・・って!どこに行くんだ!?」


 いつもは快人の言うことを聞くルーなのだが、なぜか、ルーは呼び出されてすぐ、勝手に飛んで行ってしまった。

 快人は想定外の行動に慌てて追いかける。

 ルーが飛ぶ方がそりゃ速いので、どんどん置いてかれていた。


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」


 快人はしばらく全力疾走で走ったものの、ルーを見失ってしまう。

 いざとなれば、契約印を通じて呼び出せばいいか、と快人はしばらく周りの景色を楽しむことにした。


「よっと。」


「ノア!?出てきて大丈夫なのか!?」


「大丈夫だよ。周りに誰もいないのはちゃんと確認してるから。それに見つかっても、ほら。」


 ノアは角を隠して、家にいるときと同じ、完全に人間の姿で立っていた。

 ノアはご機嫌な様子で、快人の腕をとり、横に並んで歩く。

 傍から見ると、まるで仲のいいカップルのようだった。


(カイトとデート♪)


(っ!なんかいいにおいがする・・・)


 快人はがちがちになりつつも、ゆっくりとノアと歩く。

 すると、ルーが飛んで戻ってきているのを、快人は発見した。


「あ、戻って来た。」


「ルゥ♪」


「ん?なんかついてきてないか?」


 パタパタと快人の周りを飛んでいるルーだが、その背には何かが乗っていた。


「ピクシーだよ。」


「いやいや、モンスターなのに大丈夫なのか?」


「うーん、一概にモンスターと言っても襲ってくるわけじゃないからね。」


「俺はバリバリ襲われてたんだが・・・」


 快人は自分が契約ダンジョンの探索中にピクシーの群団に追いかけられてひどい目にあったのを思い出す(眠りの状態異常を食らった後、他の妖精にいたずらされて、顔に1週間ほど消えないらくがきを書かれた)。


(まぁ、他のモンスターと比べれば、確かに襲うというより遊ぶみたいな感じだったけど。)


「どうやら、道案内してくれるって。」


 ルーと何か会話をしていたノアがそういう。


「クリアしていいのかすごい迷うんだけど・・・」


 余りに親切なので、ダンジョンをクリアして消してしまうことにためらいを覚える快人。

 それを聞いてはノアは少し苦笑をしていた。


「してもいいと思うよ。ダンジョンがクリアして消えたからって、完全に消滅するわけじゃないからね。」


「え?そうなの?」


「崩壊の時は、ピクシー達も狂暴化しちゃうからね。それなら、クリアしてしまった方がいいとボクは思うよ。」


「崩壊?」


「えーっと、カイト達で言うダンジョンブレイクという現象だよ。」


「なるほどなぁ。じゃあ、クリアするしかないな。」


「そういうことだね。だから、案内頼むよ。」


 ノアがピクシーに話しかけると、ピクシーはこくりと小さくうなずいた。

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