第15話 根木の追放

「くそ!連絡が遅いな・・・」


 根木は快人を襲わせるために派遣した2人の連絡が遅いので、いらいらしていた。

 襲わせる2人にはかなり前に出現したBランクのアンデット系モンスターのワイトと、最近契約ダンジョンに出現したというBランクのアンデット系モンスターのデュラハンを与えていた。

 根木は地方の小さい支部ギルドではあるが、ギルドマスターになった時から、汚れ仕事を負わせる人材を用意していたのだ。

 それにより気に入らない契約士を殺させたり、新人でちょっと強いモンスターを手に入れた契約士から契約モンスターを奪わせたりしていた。

 快人は出来損ないとはいえ、Bランクモンスターと契約しているので、自分の手持ちの駒の中で最も強い2人を送ったのだが・・・いまだに連絡がこない。


(くそ、どうなっている・・・ダンジョンに入ってから、8時間も経つんだぞ?もう終わってないとおかしいはずだ。失敗したのか?奴は、隠れるのはうまいと聞いたことがあるからな。2人が見つけられない可能性もありえる・・・。)


 2人がぼこぼこにされたという考えが湧かないのも無理もないだろう。

 快人がもしノアと契約していなかったら死んでいただろう。

 根木はいらいらとしながら、支部長室をうろうろとしていると、支部長室のドアがノックされた。


「なんだ!?」


 機嫌が悪い根木は叫ぶように返事する。

 しかし、ドアが開いた向こうに憤怒の表情をしている武田を見て、根木の機嫌の悪さは吹き飛ぶこととなった。


「ど、どうした?」


「・・・。」


 ずんずんと黙ったまま近寄ってくる武田。

 根木は嫌な予感がして逃げようとするが、ガシッと捕まえられた。


「くそぉ!はなせぇ!いったい何なんだ!?」


 暴れる根木を両手で捕まえ、ずるずるとひきずっていく武田。

 そのまま、エレベーターに乗り、1階に降りると、武田は根木をホールへと連れていく。

 そして、ホールにたどり着く。

 根木をぶぅんとぶん投げた。


「どわっ!?何をするん・・・だ・・・」


 根木はまわりに契約士が集まり、自分をにらんでいることに気づく。

 いったいどういうことだ!?と戸惑っていると、ちょうど視界にあの憎き小僧である快人の姿が映った。


「貴様!いったい・・・」


 快人の姿に集中していて気づかなかったが、足元には自分が派遣した2人の契約士が寝転がっている。


(くそ・・・まずいぞ・・・、だが、まだ挽回の余地はあるはずだ!)


「いったい何だって言うんだ!」


「お前が快人を襲わせるために送った刺客だろ?知らねぇとは言わせねぇぞ。」


 武田がずいっと現れ、地べたにしりもちをついている根木を見下ろす。


「知らん!俺はそんなことしていない!」


「嘘を言うんじゃねぇ!今更、取り繕えると思ったら大間違いなんだよ!」


「俺がそんなことするわけないだろう!」


「強制的に契約モンスターを渡すように脅したにもかかわらず・・・か?」


 武田にそう言われ、根木は顔をしかめるが、まだ確実な証拠はないはずだ、とぼろを出さないように気を付ける。


「それについては悪かった!だが、魔が差しただけなんだ!あれ以降は何もしていない!」


「最終勧告だ、根木。本当にお前はやってないんだな?」


「やっていない!」


 それを聞いて、武田はちらりとどこかを見ると、残念そうな表情をしていた。


「・・・残念だ、根木。お前はギルド職員から解雇。そのままブタ箱行きだ。」


「ふざけるな!何を根拠に・・・」


「お前は知らないかもしれないがな。魔道具の中には、真偽の水晶玉と言って、相手が言っていることが嘘か本当かわかるものがある。」


 そういうと、武田は自身の後ろにいた誰かから光っている水晶玉を受け取った。


「この水晶玉は嘘をついたときに光る。本当、残念だぜ、根木。」


「ふざけるなぁぁっ!」


 根木は自身の契約印から、ドラゴン系のBランクモンスターのワイバーンを呼び出す。

 そして自分を連れて逃げろと命令しようとした瞬間だった。


「ルー、ぶちかませ。」


「キュアァァァァッ!」


 いつの間にか、ルーを呼び出していた快人がルーに命令すると、ルーのブレスがワイバーンの胸を貫いた。


「ぐあぁぁっ!」


 ワイバーンは絶命、それと同時に根木の左足が吹き飛ぶ。

 ダンジョンや特殊空間以外でのモンスターの呼び出しにはかなりの体力が必要だ。

 快人は少し顔色が悪くなっていたが、急速回復のおかげですぐに顔色は元に戻った。


「くそ!くそ!くそぉぉっ!」


「大人しくしろ!」


 こうして、根木は警察に捕まり、この後、契約ギルドの内部を洗い、余罪などを確かめた後、職員などを一新した。


「で、どうして、私がギルドマスターなんですかぁぁぁ!?」


 いろいろ関わってしまった女性職員は平職員から急激に昇進した自分の立場に嘆くが、意外と評価がよく、上司にしたいギルマスナンバー1になったとかならなかったとか・・・。


――――――――――――――――――――


男性職員A「見た目は普通に可愛いんですけど、ゴリラパワーだけは遠慮してほしいですね。」


女性職員B「ギルドマスターが何十キロもあるはずの書類の束を片手で軽々と持っているのを見て、目を疑いました。」


女性職員C「あれを同じ人類の女性だと思わないでほしい・・・」


新ギルマス「なんてこと言うんですか!?私、れっきとした乙女ですよ!」


A・B・C「「「ないない。」」」


新ギルマス「こらぁ!減給しますよ!」


A・B・C「「「ギルドマスターは素晴らしい女性です。」」」


作者「なんか類友の気配が・・・」


新ギルマス・A・B・C「「「「なんか言いましたか?」」」」


作者「ひぃっ!」


――――――――――――――――――――


 これにて、1章完結!

 2章はどうなるかな・・・?

 楽しみに待っててください。

 ちなみに明日は2話投稿しますが、説明話ですので、呼び飛ばしてもらっても大丈夫です。

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