第14話 襲撃

 とりあえず、快人は2人に事情を聴くことにした。


「「実は・・・」」


 2人はどうやら、最近、ゴブリンと契約できたばっかりの契約士らしく、今日、はじめて、Fランクダンジョンに挑んだんだとか。

 快人は少し呆れる。

 ゴブリンとしか契約してないのに、ゴブリンが大量にいるダンジョンをクリアできると思ったのか、と。


「いやぁ・・・できると思ったんだよなー。」


「そうそう・・・契約すると同じモンスターより強くなるって聞くしさ。」


「そうか・・・それじゃ。」


 もう無視してボスに挑もう、と快人が行こうとすると、2人は慌てて快人を引き留める。


「頼む!これじゃあ、俺ら帰れないし、ボス部屋に一緒に行かせてくれないか?」


「もちろん、分け前もらおうなんて考えてないしさ!転移魔法陣だけ使わせてくんねぇかな?」


「うーん・・・」


 無償での助けはあまりよろしくない、と武田に聞かされていた快人は少し悩む。


「俺ら金ないからさ、今日集めたゴブリンの魔石・・・2人で5個しかないけど、渡すから・・・このとおり!」


「頼んます!」


「うーん・・・まぁ、分かった。魔法陣だけな?」


「「もちろん!」」


 快人はとりあえず了承して、3人でボス部屋の中に入る。

 中にいたのは、Eランクのゴブリン系モンスターのゴブリンソルジャーだった。

 しかも槍持ち。

 ソルジャーの中では一番槍持ちが強いらしい・・・のだが、ルーにはあまり関係がない。


「それじゃあ、ルー、たの・・・」


「縛り上げろ、ワイト。」


『了解した。』


「え・・・?」


 ルーに頼もうとした瞬間、後ろから声が聞こえると、ルーと快人、そしてゴブリンソルジャーの足元に魔法陣が現れ、そこから鎖が伸びた。


「ぐっ!」


「キュッ!?」


「ゴブッ!?」


 快人とルー、ゴブリンソルジャーは必死に鎖が逃れようとするが、じゃらじゃらとなるだけでほどけそうもない。

 快人はこれをやった当の本人をにらんだ。


「いったいどういうことだ!?」


「あ?分かんねぇの?俺がやったの、俺。」


 片方の男が自分を指さしてにやりと笑う。

 そのそばには、Bランクモンスターのワイトがふわふわ浮いていた。


「ルー、ブレスを!」


「キュアァァァッ!」


「おっと、防げ。デュラハン。」


『・・・。』


 ルーがブレスを吐くが、それは突如出現したデュラハンの盾によってはじかれた。

 どうやら、もう1人がデュラハンと契約していたらしい。


「危ねぇな・・・えぇ?」


「うぐっ!」


(カイト!)


(まだだ!まだ出るな!)


 ワイトを従えている方の男が快人を蹴り飛ばし、倒れた快人を踏みつける。

 それを見ていたノアが快人のことを心配し、そして男たちに怒りを覚えるが、快人はノアに待機するように指示を出す。


「まぁ、しょせん、Bランクモンスターを得たばっかりの新人なんてこんな程度だよな。つーか、馬鹿じゃねぇの?ゴブリンとしか契約できないやつなんて普通はいねぇよ。あ、お前は契約できなかったんだっけ?」


 げらげら、と下品な笑いを上げる男たち。


「誰の指示だよ・・・」


「あ?分かんねぇのか?まぁ、どうせ死ぬんだし教えてやるよ。根木だよ、根木。」


「あ、お前の契約モンスターを俺達にくれるなら命だけは助けてやってもいいぜ!」


「そうそう、ゴブリンソルジャーに生身で勝てたらな!」


 再び、下品な笑い声をあげる男たち。

 ノアも我慢の限界だった。


(カイト!)


(分かった。姿を見られないようにやれ!)


(分かった。)


 快人は契約印からノアを出すと、ノアはワイトとデュラハンの心臓に腕をつきこみ、そのまま握りつぶした。


『ぐわあぁぁぁっ!』


『・・・・っ!』


 デュラハンとワイトが死ぬと同時に、デュラハンと契約していた方は右足が、ワイトと契約していた方は左腕が吹き飛ぶ。

 そして、ゴブリンソルジャーとルーと快人を縛っていた鎖が霧散した。


「「いってぇぇぇ!」」


「ルー、ソルジャーの相手を頼んだ。」


「キュアァァァツ!」


「ゴブッ!?」


 え?一緒に捕まってた仲なのに?こんな瞬殺なの!?という思いが込められているかのような鳴き声を上げながら、ブレスで消失するゴブリンソルジャー。

 どうせ倒さなければならないので、後でやるか今やるかの違いだった。

 それでも瞬殺はやはり可哀想ではあったが。


「よくもやってくれたな。」


「いってぇ・・・くそ、ふざけんな!いったい何しやがった!」


「いてぇ・・・いてぇよぉ・・・」


 足をなくした方は、初めてだったのか、痛みに悶えているが、腕をなくした方はアドレナリンがガンガン出てるのか、それとも何回か経験したことがあるのか、快人に向かって叫んだ。


「誰が言うかよ。ルー、こいつらを殺せ。」


「は?待て待て!殺すのは犯罪だぞ!」


「防衛により殺すのは犯罪じゃない。それにダンジョン内でのことは黙認されるしな。それにお前ら・・・Kマップで挑戦せずに入ってきてるだろ?」


「うぐ・・・だけどなぁ!俺達のバックには根木がいるんだよ!俺達がダンジョン内で死んだら・・・どうなるかわかるだろ?」


「あぁ。」


 快人はもしも殺した場合どうなるか、大体の予想はついている。

 根木がKマップでの情報を改ざんして、2人がその場にいたことにして、殺したのは快人だ!と宣言しようとするくらいには。


「なら、俺達を殺すな!俺が根木にとりなして・・・」


「だけどそんなの知ったことか。」


 今更、どうでもよかった。

 敵になるなら排除すればいい。

 この際、ノアに・・・


(ストップ!カイト!落ち着いて!)


(っ!あれ・・・今何か・・・おかしかった気が・・・)


(龍の防衛本能だよ!自己防衛だったり自分の物に手を出されたりしたときの感情は龍は特に強いから、それに流されてるんだよ!落ちついて!)


 スゥーハァーと快人は深呼吸を繰り返して、気持ちを落ち着ける。

 10回ほど深呼吸をすると、先ほどまで過激だった思考が落ち着いていた。


(悪い。ノア、助かった。なんかおかしくなってたみたいだ。)


(ボクが原因でもあるからね。落ち着いてよかったよ。)


「はぁ・・・分かった、つれていく。」


 快人はどうやって2人を運ぼうかと数分程考えることになるのだった。


――――――――――――――――――――


快人「やべぇ・・・どうやって運ぼう。」


ノア(普通に足もって引きずればいいんじゃない?)


快人「そうするか・・・」


ずるずる(快人が足をもって転移魔法陣まで男2人を引きずる音)


男2人「「痛い痛い痛い!」」


快人「よし、外に出たぞ。ここからどうするか・・・」


ノア(誰かに手伝ってもらえばいいんじゃないかな?)


快人(そうか!武田さんに頼もう!)


プルルルル・・・(電話をかける音)


武田『快人か。どうかしたのか?』


快人「実はですね・・・かくかくしかじか」


武田『なんだと!?待ってろ!すぐに向かう!どこのダンジョンだ!』


快人「ここです。・・・ピッ(Kマップのメッセージ機能により、武田へ位置情報を送信。)」


武田『すぐに向かう。待ってろよ!』

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