第13話 合流

「ついたー!」


「ルゥ♪」


 快人たちは、近寄ってきたゴブリンたちを余裕で殲滅しつつ、3時間程でボス部屋の前に到着していた。

 ルーが強すぎて、倒すよりも魔石を拾う方に時間がかかっていた気もしなくもない。

 もし、魔石を無視していたら、2時間くらいで到着できていただろう。

 だが、Fランクでも普通に歩いて2時間くらいの広さがあると考えると、EやDでも尻込みする人が多いというのも分かるかもしれない。

 それに現在、集まった魔石の数は100個ほどだ。

 ルーが強いというのもあるが、時給1万弱くらいの仕事だと考えると、Fランクを繰り返し攻略するだけでも十分稼げるだろう。


「こりゃ・・・確かに、ランクを上げずにいる人が多いっていうのも分かるかもなぁ。」


 Fランクの迷宮は日本だと1日30~50個ほど乱立するという言われている。

 まぁ、クリアされてなくなっている数もそれと似たようなものらしいので、Fランクの迷宮の数はそこまで変動しないのだとか。


「これにダンジョンコアの魔石のお金もプラスか・・・」


 ダンジョンコアを所定の位置から動かすあるいは破壊すると、ダンジョンクリアとなり、ダンジョンが崩壊しなくなる。

 もしも、実入りのいいダンジョンだった場合(Cランク以上に限るが)は、クリアした方が損となるため、ダンジョンコアはそのまま放置する。

 ダンジョンボスを倒すとボス部屋に転位魔法陣が出現するため、ダンジョンコアに触れずにその上に乗れば、ダンジョン攻略という形で終了する。

 F~Dランクのダンジョンの場合は、クリア推奨されているため、逆にクリアしなかった方が問題となることも多い。

 それにFランクダンジョンでもダンジョンコアの魔石は十分に大きくエネルギーも潤沢なので、壊した場合でも、1万円、壊さなかった場合は、10万円で買い取ってくれる。


「そりゃおいしいよなぁ・・・」


 ただ、強くなった人がFランクダンジョンをクリアしまくっても困るので、ランクに応じて挑戦できるダンジョンのランクに制限がかかる。

 だが、ランクが上がれば、それだけ恩恵も増える。

 Cランクからはその恩恵が顕著だ。

 実入りの多いダンジョンに挑戦できるようになったり、特殊だったり強力だったりする契約モンスターが存在する契約ダンジョンへの立ち入りも許可される。

 Bランクからはグループの設立が可能になったり、ギルドの正規職員扱いされるのでギルドの情報が確認可能になったりといろいろある。

 が、そういった恩恵が多い反面、しがらみもあるし、C以上になるための条件はかなり厳しい。

 FからDまで上げるのはそう難しくはないのだが、例えばCランクになるためには、Cランクのダンジョン3回クリア、Bランク以上のモンスターと2体以上契約、Dランクダンジョン30回クリアなどなどとかなり面倒だ。

 FからEに上がるための条件はEランクダンジョン3回のクリアだけ、EからDに上がるための条件がCランク以上のモンスター1体以上との契約、Dランクダンジョン3回クリアのみと考えるとその差は顕著だろう。

 しかも、ランクが上がった後からの回数なので、もしEランクの時にDランクダンジョンを30回クリアしていようとも、Cランクへの条件を満たしたことにはならない。

 そういう事情もあって、そもそもFランクしかクリアしないという人もいるのだ。

 中には、Aランクモンスターと契約しているにもかかわらず、何年もEランクのままにしている人もいると快人は聞いたことがあった。


「俺は・・・どうするべきなのかな・・・」


 正直なところ、快人は自分がどういう契約士になりたいのかという明確な目標がなかった。

 そもそも、まともな契約士になれるかどうかも怪しかったのだから、目標がまだないのも仕方のないこともしれないが。


「とりあえず、ダンジョンをクリアしよう!」


 そう思って快人がボス部屋の門を開こうとした時だった。


「おぉーい!助けてくれぇ!」


 後ろから声が聞こえる。

 快人が後ろを振り向くと、大量のゴブリンに追いかけられている人が見えた。


「ちょ・・・えぇ・・・」


「とうっ!」


「ぐへっ!」


 ボス部屋の前は安全地帯ということもあり、ゴブリンたちは入ってこれない。

 1人は飛び込みながら、1人はぎりぎりのところでこけながら、安全地帯へと入ってきた。


「げぇ・・・何体いるんだ・・・」


「あぁっ!俺のゴブリンが・・・」


「俺のも!」


 慌てて、2人は自分のゴブリンを安全地帯からゴブリンの群れに向かって手を突っ込み、引っ張り出す。


「いてて・・・ひっかくな!」


「痛っ!噛みつかれた!」


 ボロボロだが、かろうじて生きているゴブリンを2人は契約印の中に戻す。


「あ、じゃ、そういうことで。」


「ちょっと待ってくれ!」


「頼むよ!助けてくれ!」


「えぇ・・・」


 どうやら面倒なことになりそうというのには間違いなさそうだった。

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