第11話 ギルマスへの脅迫と逆恨み

 職員に案内されて向かったのは、快人がさっきまでいた部屋だった。

 扉を開くとまず見えたのは、白目でだらんとなっているギルドマスターの根木だった。


((さ、殺人現場にしか見えねぇ・・・))


 武田と快人が見て思ったのは、まったく同じこと。

 部屋の中央で白目で寝転がっている男・・・それに余程強い力で絞め落としたのか、根木の首はかなり赤くなっていた。


「ほら!ちゃんと気絶させておきましたよ!」


 気絶している根木を指さしているのは気絶させた当の本人である女性職員。

 一見、殺した相手を見せて喜んでいるようにしか見えない。

 そうだったらサイコパスだが・・・いや、気絶させたことを見せて喜んでるなら、十分サイコパスかもしれないが。


「そ、そうか。おい、起きろ、根木。」


「う・・・あ・・・?俺はなんで・・・寝てたんだ?」


 武田に体をゆすられて徐々に目覚める根木。

 どうやら無理矢理気絶させられたせいで、記憶が曖昧のようだった。

 快人も自分が被害者にもかかわらず、少し同情してしまう。


「まぁ・・・それは思い出さない方がいいだろうが・・・それはおいておくとして、根木・・・お前やらかしてくれたな?」


「何がだ?」


「契約士への脅迫にモンスターの強制譲渡の要求だ。さすがにこれは看過できん。」


「俺は知らないな。」


 起きて早々、とぼけたことを言う根木。

 やっぱり、同情する必要のないくずだな、と快人は少しでも同情したことを後悔していた。


「俺もギルド正式メンバーだ。その中の仕事に監査官としての役割もある。本部に報告せざるを得ないぞ?」


「あ?でも証拠がないだろ?好きにしろよ。」


 にやにやと余裕をぶっこく根木。

 だがその余裕はすぐに崩れることとなった。


「ある。ここがどこか分かってないのか?」


「第4測定・・・そういうことか!?ちくしょうめ!」


 測定室は測定の都合上、使用中は基本、音や映像の記録が残る。

 もちろん、改ざんすることは可能だろうが、根木は今、それができる状況にない。

 詰みもいいところだった。


「お前のことだ・・・多分、魔が差したのもあるんだろ?だから、快人、すまん。俺の顔を立てて、今回のことをなかったことにできないか?」


 武田は快人に頭を下げる。

 正直なところ、快人は根木を許したくはない。

 自分が侮蔑されたというのもあるが、何より、人からモンスターを奪おうという考え、それに契約モンスターをまるで物のように扱おうとする態度が気に入らなかった。

 だが・・・


(武田さんの顔を立てるとなるとなぁ・・・)


 もし、この申し出を断った場合、おそらく、武田はそのまま根木を処罰するだろう。

 そういうのはきちんとする人だと、快人は信用していた。

 だが、それだと武田と快人の関係に亀裂が入るのも間違いなかった。


「・・・分かりました。」


「すまん、助かる。」


「正直・・・まだ納得いかないです。」


「そうだろうな。ほら、お前も謝れ。」


「ちっ!・・・申し訳なかった。」


 とりあえず頭を下げるだけはしておく、みたいな感じで渋々とではあるが謝る根木。

 その態度にイラっときた快人だったが・・・もうとやかくは言うまいと思っていた。


(関わり合いになりたくない。)


「じゃあ、俺、帰ります。登録だけはお願いしてもいいですか?」


「じゃあ、そこの職員、頼むぜ。」


「え?私?あ、はい。」


 武田に指示されたのは根木を気絶させた本人。

 再びなぜか巻き込まれたことに解せぬという顔をしつつも、うなずいていた。


(まぁ、登録だけなら大丈夫・・・だよね?)


 そこはかとない不安を覚えつつも、とりあえず、登録の手続きをしておく職員。


「よし、快人!今日は悪かったな!代わりにと言っちゃあなんだが、好きなもんおごってやるぞ!」


「じゃあ、高級焼き肉屋で。」


「遠慮がねぇな!?」


「稼いでるからいいですよね?」


 気持ちを切り替えて、快人と武田は仲良く、部屋から出ていく。

 その様子を根木は暗い様子で睨んでいた。


(くそが!出来損ないの分際でよくも・・・武田と関わりがあるっていうのは面倒だな・・・絶対に仕返ししてやる。覚えておけよ!)


 根木は仕返しのために、端末を取り出し、誰かに電話をかけた。


――――――――――――――――――――――


現在、フォローも星も♡も着々と増えているので、やる気もりもりです。

どんどん話を書いていきます!

今後ともよろしくお願いします!

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