第10話 あれ?よっぽどこの人の方が危険じゃない?
(ねぇ・・・あいつ殺してもいいよね?)
(ダメだ。)
快人が怒りながら歩いていると、契約印の中からノアが話しかけてきた。
快人も怒ってはいるが、冷静に判断するだけの理性は残っている。
さすがに殺すのはアウトだ。
(ボク、あいつきらい。)
(俺も初めて会うけど、あんな人がギルマスだなんて知らなかった。)
知っていたら、別のギルドで報告したのに、と快人は少し後悔する。
そもそも、新人に等しい快人がギルドマスターと関わるなんて普通は考えられないので仕方のない部分もある。
「はぁ・・・」
「お!快人!どうしたんだ?」
「あ、武田さん、まだいたんですか。」
武田に話しかけられたため、快人は怒りを抑えつつ、返事を返す。
「まだいたって・・・まぁ、換金待ちだからな。」
「今回は結構大物ですか?時間かかってるっぽいですし。」
「あぁ、Aランクダンジョンだったからな。さすがにクリアはできなかったが。」
「なるほど、どおりで。」
快人が行ったFランクダンジョンは3層しかなかったが、Aランクダンジョンともなれば、50層くらいまであるはずだ。
層が増えれば増えるほど、1層ごとの広さも基本広くなる。
それにモンスターも浅い階層ではFやEランクだが、深くなればなるほど、ランクも高くなり、最後の数層なら、Aランクモンスターも余裕で出てくるだろう。
それに、ボスはたいていダンジョンのランクの1個上なので、Sランクモンスターだろう。
Sランク契約士といえど、Sランクモンスターと契約しているわけではないし、Aランクダンジョンをクリアできるというわけでもない。
Aランクモンスター数体と契約しているという時点ですごいのは確かだが、Bランクダンジョンはクリアできても、Aランクダンジョンはかなり厳しいと言わざるを得ないだろう。
「まぁな・・・で、何があった?」
「やっぱ、バレてます?」
「バレバレ・・・ではないが、まぁ、意外と長い付き合いだしな。」
武田はにやりと快人に笑いかける。
誤魔化せていたと思ってた快人だったが、どうやら甘かったらしい。
武田と快人の付き合いは約1年半ほどだ。
『なんちゃって契約士』と言われていた頃から、仲良くしてくれた人でもあるので、快人にとって信用できる大人だった。
「実は・・・」
快人は先程起こったギルドとのやりとりを武田に説明する。
武田は最初は笑っていたが、最後の方になると、険しい顔をしていた。
「本当にそういうことがあったんだな?」
「はい。」
「分かった。そりゃさすがにまずいな。」
武田も最初は、てっきりからかわれたか何かして少し怒っていた程度だと思っていたのだが、想定以上にやばい事態だった。
(穏便に済ませられるといいんだが・・・)
「あ、いたいた!待ってくださーい!って、げぇっ!?」
ギルドマスターとわちゃくちゃやっていた女性職員が快人の姿を見つけて、慌てて駆け寄ってくる。
だが、快人の傍にいた武田の姿を見つけると、女性らしからぬ反応をしていた。
「おいおい、反応がひどいな。」
「確かに。」
快人も職員の人はギルドマスターの行動をとがめていた方なので、怒りを向けていない。
(どうやら怒ってないようですね・・・よかったよかった。)
自分の立場は大丈夫そうかも!と安心する職員。
「おう・・・とりあえず、聞くが・・・
「根木・・・あぁ、ギルマスですね!安心してください!締め落として気絶させておきました!」
むんっ!といった感じで報告する女性職員。
やはりゴリラであることに違いはなかったようである。
武田も快人もその報告には顔がひきつっていた。
「そ、そうか・・・」
(いや、あいつ、何か格闘技やってたはずなんだが・・・?え?どうやったんだ、まじで。)
武田は根木が格闘技をやってたことを思い出して、冷や汗をかく。
「ま、まぁ、それはおいておくとして、根木の所へ案内してくれ。」
「分かりました!」
(やった!これで私に被害はなさそう!)
心の中で万歳三唱をしている女性職員。
まぁ、図太い性格で何よりだった。
――――――――――――――――――――
女性職員「私、ゴリラじゃないですよ?」
武田・快人「「嘘だ!?」」
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