第8話 ルーの実力

 職員に案内され、ある部屋に案内された快人。

 そこにはいろんな機械や魔道具が置かれていた。


「えーっとですね。ここでは魔道具や最新式の機械を使って、ダンジョンにほぼ近い環境を生み出しています。なので、契約モンスターを楽に召喚できるのですが・・・本当に契約してるんですよね?」


「あんたもしつこいな!?」


 未だに疑ってかかる職員に、快人は驚く。

 それほどまでに、快人の悪名というべきか分からないが、『なんちゃって契約士』の名前は有名だった。


「あ、すいません。では召喚お願いします。」


「・・・おいで、ルー。」


 快人が呼びかけると、ポンッという音とともに、ルーが姿を現す。


「ルゥ♪」


「かわいい・・・」


「おーい、職員さん?戻ってきて!」


「はっ!失礼しました。このモンスターは・・・新種!?え、新種ですか!?」


 職員は手元の端末でルーの写真を撮って、図鑑と照合するが、どのモンスターとも一致しない。

 徐々に検索範囲を広げていったが、ホワイトドラゴンだったりホーリードラゴンと名付けられたモンスターに色は近いが、姿形は違うという結果だった。


「うーん、ホワイトドラゴンの亜種なんですかねぇ・・・」


「おーい。」


「あ、申し訳ございません。」


 さっきから謝ってばかりである。


「えーと、それでは、あの的に最も威力の高い攻撃をお願いします。もちろん、直接攻撃でも構いません。」


 職員は部屋の端に設置されている的を起動する。

 攻撃の威力を測定して数値に出すというパンチングマシーンもどきの機械だ。


「よし、ルー。一番強いの頼むぞ。」


「ルゥ!」


 ルーは快人の指示にうなずくと、口元にエネルギーを集め出した。


「キュアァァァッ!」


 そして、それを放出、すさまじい勢いでルーの口から放たれたエネルギーは的に激突した。


「きゃっ!?」


「おわっ!?」


 想定以上の威力に快人も職員も驚く。

 職員は手元の端末に表示された数値を慌てて確認すると、ぴしっと硬直した。


(え!?3140!?Bランクのモンスター並なんですけど!?)


 大体の目安として、0~300くらいがFランク、300~800くらいがE、800~1500がD、1500~2500くらいがC、2500~5000あたりまでがB、5000~10000あたりがA、それ以上はそもそも測定不能でS以上となっている。

 ルーが出した記録は3140、Bの中で言えば、少し低い方ではあるかもしれないが、通常のドラゴンの子供から考えるとどう考えてもおかしい強さだった。


「え、えーっと、記録は3140でだいたいBランクくらいですね。」


「おぉ!?すごいな、ルー!」


「ルゥ♪」


 パタパタと飛んでいたルーを快人は捕まえ、撫でる。

 ルーは気持ちよさげに鳴き声をあげていた。


「そ、そうですね・・・」


(え、なにこれ。『なんちゃって契約士』が契約してきたモンスターってもっと弱いと思ってたんですけど!?すでにBランク帯、しかもドラゴン系ってどういうことですか!?)


 たらっと、職員は冷や汗を流す。

 先ほどから、疑ってばかりだったので、快人の職員に対する印象はかなり悪いはずだ。

 そう判断した職員はご機嫌取りの方に行動をシフトした。


「えーっと、立川様、契約モンスターが他にできることはございますでしょうか?」


「何ができるんだろ?なぁ、ルー、お前、何ができるんだ?」


「ルゥ?ルゥ!」


「痛っ!」


 快人がルーに尋ねると、なぜかルーは快人の指をかんだ。

 今度は、ルーの体が光ると、快人の指の傷が消えていた。


「おぉ!?すげぇ!?」


(いや、回復系統の能力はすごい貴重なんですけど!?これ、大丈夫!?ギルドマスター呼んだ方がいいかも・・・)


 職員は、自分じゃ手に負えないと判断した。


「申し訳ございません。新種に加えて、回復能力をもつというのはかなり希少になります。そのため、ギルドマスターに連絡したいと考えているのですが・・・」


「えぇー・・・」


 正直なところ、あまり会いたくないというのが快人の判断だった。


「本当に申し訳ございません。」


「ま、まぁ、会うだけなら。」


「はい、もちろん。情報料等も払う準備をさせていただきます。」


 そういうと、職員は端末で即ギルドマスターに連絡をとった。


『なんだ?』


「すいません、ギルマス。ちょっと非常事態というか私の手に負えないというか・・・」


『はっきり言え。』


「新種の上に、Bランククラスの攻撃力、回復能力持ちのドラゴンを契約してきた人がいまして・・・」


『なんだと!?場所はどこだ?』


「第4測定室です。」


『分かった。すぐに向かう。』


 ぶつっと連絡が切れる。

 職員は、これで何か起こっても責任はギルマスがとってくれるはず、と結構ゲスなことを考えていた。


――――――――――――――――――――


女性職員「何かやばそうなら、後はギルマスに任せるのがよし!責任は上司に負ってもらわないと!」


快人(この人がギルド職員で大丈夫なんだろうか・・・?)


武田「一応言っておくが、ギルド職員は普通にエリート職だぞ?まともな奴が多い・・・まぁ、一部例外もいないことはないが。」


女性職員「誰が例外ですか!」


快人「語るに落ちてますね。」


武田「だな。」

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