切情

「切情」

色褪せはじめた君の髪の音色が恐ろしく豊かで


乾き変色した肌までもが感涙する


君の全てを一粒(いちりゅう)も無駄にはすまいと


僕は瞳で接吻した迸る唾液の享楽不純な物質


骨と皮の感触は恍惚と転がる眼球の固形となった血液


首筋の絞痕だけが艶かしく生気に満ちた苦悶の音


弧を描く隔絶した欲情が執拗な鼓動を早めて


君の懇願と消滅とが雨含む塵紙の如く離れない


幸福の夢は何度も果たされ再度再度忘却は彼方に


新鮮な郷愁古びた嘆き未来の笑顔をかたわらに


手形と化した哀切が力の限り君のあざを包む

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