第4話 4 入園式
4 入園式
4月に着任した花恋先生にとっては,初めての入園式,先生方と打ち合わせをしたけど,子どもと同じようにそわそわしてしまう。花恋先生は受付係だけど,どうやって保護者の方や来賓の方と会話をしたらいいのか心配だった。
(お父ちゃん,受付け係は動かなくて楽だと思っていたら,来た人に最初,「じっ~と」見られてあせります)
来た方を来賓と保護者別に分けて参加名簿に○印をしいただいて,式次第などの用紙を渡す。これは,職員会議で花恋先生が受付係と決まった時に教えてもらったこと,でも,初めての方とどうやって話をしたら良いのかがとても不安だった。
「こんにちは,こちらが来賓名簿でこちらが保護者です」
花恋先生は名簿に○印をしてから必要なものをお渡ししていたら,困ったことが起きたのだ。
「受付け係,お疲れ様,時間がないから貰って行きます。○印をしといてください」
どちら様でしょうか,この言葉が失礼に当たるかもと思っている間に受付から離れ会場に行ってしまった。きっと,知っていて当然の方なんだろうけど,初めての花恋先生はわからない。
(ま,いいか,最後に残った所に丸印をしよう)
主任の百花先生がやってきた。
「花恋先生,名簿見せて,あら,大事な人が来てないね,式を延ばすように連絡するから,花恋先生,もう少しだけ受付けお願いね」
「はい,わかりました」
(大事な人ってだれだろう・・・・・・・・・)
すぐに,百花先生は戻ってきて,
「どうして○印しなかったの,来てるでしょ,もう,しっかりして花恋先生」
さっき○印をしないで通りすぎた方は,園の理事長だった。園長はいつも園にいるので知っていたけど,理事長は忙しいため,会っていなかったのだ。
さて,式場に行くと担任クラスの星組の子ども達は落ちつきのない動きや私語,となりとふざけていた。
蜂上先生が花恋先生が来るまで世話をしてくれていた。
「花恋先生,昨日,ちゃんと子ども達に言ったの! 私が話しても言うことを聞かないのよ,今から始まるよ」
主任の百花先生は,式が始まれば静かになることが多いから,ここでは子どもを見守るように言われた。受付係をするので健康観察をして子ども達に話して行ってしまった。しかも,後から花恋先生は入ってきたので子ども達は花恋先生が見えない。
どうしよう・・・・・・・・・・・・・・・・
「園長先生のお話です。」
園長先生が入学のお祝いの言葉を話し出しても星組の子ども達は顔を見合わせて,クスクス笑っている。とうとう司会の先生が,注意をした。
「星組のみなさん,静かに!」
星組の園児は静かになったが,またすぐに園長先生の話を聞かず,自分達の世界観に入ってクスクス笑ったり,隣の子を突いたり,落ち着きがない。司会の先生は,さらに語気をあげて,
「星組さんだけが,ちょっとにぎやかですよ!園長先生のお話を聞きましょう!!」
花恋先生は,もうじっとしていられなくなった。ポケットから花恋人形を取り出して笑顔いっぱいにして星組の前に行って話した。
「園長先生,みんなにいいお話をしてくれるよ,はい,手をグー,高く上げて,は~い,その手を静かに,ほらここ,ももの上にのせましょう,みんなじょうずだね,みんなにどんないいお話をしてくれるか聞こうね,楽しみだね」
花恋先生は短い時間だけど,手遊びで気分転換を園児にさせたのだ。そして,叱るのではなく,期待感を持たせたのである。
星組の園児は,何回注意しても落ち着かなかったが,花恋人形の魔法の言葉で,みんな園長先生のお話を目で聞き続けた。
式が終わって,式の最中に子ども達に話しかけたことを百花先生に注意された。花恋先生は,園児の話を聞く習慣を身につけさせることの大切さを痛感した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます