第2話「飛べ!」

 そういえば俺、漫才師だったよな。


 でも俺何もギャグとかできんし。


 相方が書いたネタ通りにやることしかできんし。


 面白いことが好きだからって言って軽い気持ちで始めたのが馬鹿だった。


 勉強することもたくさんあったし。


 でも死んじまったのかあ。


 これでめんどくさいことともおさらばだな。


 でもせっかく漫才師だったんだし、この世界でも何かできんかなあ。


 ピンネタとか持ってないけど。


 そういえばこの世界、どんな世界なんだろ。


 今んところ誰にも会ってないし、暗い世界っぽいな。


 もう魔王に支配された世界とか?


 それだったら最悪だな。


 そもそも魔王とかいるのかな?


 いたら倒してやるか。どうせ暇だろうし。


 なーんか、転生者特典的なものはないのだろうか。


 あ、そうだ。さっきの自称神様のアドレスに聞いてみよ。


『転生者には特典とかないんですか?』


 ――30分後、やっと返信が来た。


『特典ほしい?』


 ほしい? じゃねえよ。特典あるならくれよ。


『ほしいです』


 ――30分後。


『ほんとにほんと?』


 返信するのがやたらに遅い。


 これ本当は誰かのドッキリで、今焦って何かそれっぽいもん準備してるんじゃ……


『ほんとにほんとです』


 ――30分後。


『しょうがないなあ。じゃあ……』


『?』


 ――30分後。


『空飛ぶ絨毯あげるよ』


 空飛ぶ絨毯? ドッキリだったら空飛ぶなんて不可能じゃね?





 ――どさっ。






「イテッ!」


 空飛ぶ絨毯が空から降ってきた。


 え、どっから降ってきた?


 てか何この絨毯めっちゃ重いんだけど。めっちゃ薄いのにめっちゃ重い。大人が10人は乗れるサイズだ。


 これ飛べるのか? 乗ってみよ。


「よいしょ」


 ……動かない。


 あれ? どうやったら飛ぶんだろ?


 飛べって言ったら飛ぶかな?



「飛べ!」






 ――ぎゅいん!





   「うわっ」

 

 絨毯は唐突に動き出し、くるくる空中を回転する。


 不思議と目は回らないし、自分の体が絨毯と接着剤でくっついているかのように離れない。


 空中で逆さになっても、落ちなかった。


   「すげえ」


 やっと俺はここが異世界だと確信した。

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