第2話 好きという言葉には棘があるに違いない-2
翌日。日が経つのは早いもので、あの後フラッと家に帰って布団へと潜ったら次の日になってしまった。宿題もせず、寝てしまった自分を恨む朝。宿題はしないのに、携帯の充電だけは欠かさない。己のルーティンに組み込まれた行動が現実を否定していた。
俺は昨日、彼女から告白を受けた。好きだと、好きだから付き合って欲しいと。
はっきり言おう。めっちゃ可愛いかった。なにこれ狡くない?こんなの絶対オッケー!って言っちゃうよ。というか初めて女の子の目を見た……あらやだ顔が熱いわ!
……話を戻そう。告白を受けた俺だったが、その場で答えを出す事が出来なかった。無理もない、俺は未経験の素人。相手の差し出す手が決して綺麗なものであるとは流石に見極められなかった。
端的に言えば俺はこれが嘘なのではないかと思った。よく見る漫画とかである嘘告白ってやつだ。「はい!」と言ったら最後。わらわらとシロアリの様に湧き出てきたいじめグループが、告白された男子を馬鹿にし始める。告白した女の子は嫌そうに顔を歪めて「キツかったわ〜www」の一言。
正直こんなことされたら耐えられない。もう二度と学校には行かないだろう。好意を踏み躙る事なんて絶対にやってはならない。
とまぁ結局、自分が傷つくのが怖かったのだ。嘘をつかれて、本来の好意に気が付かないほどに自分の殻に篭っていた俺は、結果として彼女を泣かせてしまった。いや、泣いてなかったかもしれない。でも、俺の目にはそう見えた。
ただ、これが二段構えの可能性もある。落ち着け俺、ここは一旦冷静になるべきだ。
下駄箱を開け、履き潰された上履きを手に取る。長年の相棒であるが、そろそろ新調する予定である。すまんな相棒、ゆっくり眠ってくれ。
そのまま教室へと入り、友達がいない事を確認した俺はゆっくりとスリープモードへ移行する。
「おはよー!ってどうしたん?」
クラスの女子が騒いでいる。落ちた言葉のトーンが気になり、ゆっくりと目を上げる。いいか、隠密だ。絶対に俺が見てるなんてバレるな。
教室へと入ってきたのは、昨日の彼女だ。ただいつもの元気はなく、下げた肩にちょっとばかし赤い目。あれはまるで少し前まで泣いてた……え?マジなの?
慰める彼女の友達の姿を見て、俺は昨日の告白が本当なのではないかと思い始めていた。いやいや、けれどもここには俺もいる。こうしてか弱くする事で俺を巧妙に騙そうとしているに違いない。危ない、昨日の俺であれば間違いなく「これがモテ期か……」と言っていた。
あの光景は目に毒だ。目を伏せ、目の前の光景から逃げるのが得策に違いない。
何せ、あれはきっと現実ではないのだから。
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