第6話 女神

006 女神


ふと気が付くと、周囲は白いもやに包まれていた。

意識がはっきりしてくると靄も引いていく。

此処は何処だ。


俺は、確か刺された、死んだのか?


その時目の前に、光が現れる。

そしてそれは、人型を取り始める。

人型は女性になる。神々しい光の後光がさし始める。


美しい顔。

しかし、表情を読み取ることはできない。


「私は、女神です。詳細ははぶきます」

女神を名乗る者は話を始める。


「残念なことに、あなたは手違いで死亡しました」

「え」

「外国人がさされて死ぬところをあなたが身代わりで刺されたのです」

「ええ?」

「問題になったあの偽カードを販売した店員は、偽カードの偽造販売グループに買収された一味でした」

「えええ」

「まさに手違いで死んだのです」

女神は続ける。

「あの店員は詐欺罪で逮捕されましたが、執行猶予付きで悠々と暮らしています」

「そんな!」

「あまりにもかわいそうということで、此処にあなたの魂は呼ばれたのです。因みに、あなたを刺した犯人は、その場で自殺しています」


あまりにもえげつない事実を無表情に突きつけてくる女神。

「ひどい」

「そうですひどいのです、休みの私が何故呼ばれる必要が有るのでしょうか」

「え?」自分に同情してくれている訳ではないらしい。

「ですから早急に処理して、私は行かねばならないのです、あなたに対して冷たくなってしまうのも仕方有りません」

「ええ!」

「さあ、あなたが望むと望まざるとにかかわらず、転生しなさい!」

「えええ」

「伸るかそるか!きなさい」女神が手をかざす。

「ひええええ!」俺の意識が混濁こんだくしていく。


こうして俺は、異世界へと望むと望まざるにかかわらず出発したのだった。

そう、たとえ字が間違っていたとしてもなお。

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