第61話 告白・は・はじまり
「っ……」
レピアの光が消える。
ピシ、と。
顔をうつむかせた
「ッ行かないで
「ッ……!?」
「…………ッッ、」
――
行かないでと叫ぶ心。
表情はうかがい知れない。
だがその意図は――レピアの気持ちは、嫌というほど夢生に伝わった。
彼女はキューピッド。
彼女は一人の少女。
だからそれしかなかった。
だから、
「……………………僕が、行ったら…………君は帰るの?
「!!!!!」
(――――違う。違う!!!!!)
「いやごめん。違うよね。そうだよねっ……!!」
――お
目を限界までつぶり、歯を全力で
すべての想いをのせて――夢生はレピアに、ずっと言いたかった言葉をかけた。
「レピア。僕――……風ちゃんの所に行ってくる」
「――ッッッ!!!!」
思わず顔を上げたレピアの目に映るは、夢生の背中。
声を失った少女の前から、その背中はどんどん遠のいて――――
その背で、
「風ちゃん――
「……むーくん」
「僕――ぼく、君が好きだ。どうか僕と付き合ってほしいです!!」
――――息を飲む、声。
誰かにとっては
少年と天使が
それが今――
「……ごめんなさい」
ぜんぶひっくりかえって、ふっとんだ。
「 ゑ《ヱ》 ? 」
――――
緊張の糸的な糸という糸が全部切れ、大の字になってぶっ倒れた。
「え? あの、
「死体を
「いや、はじゃなくて。だからごめんなさいって」
「言うな言うな何回も言うな!!! いやだから、え? なんで!?!?!? 完全に今もう受け入れる流れだったじゃん?!!??!? つかあんた好きなんでしょむーのこと!!!?
「ああ、いえ。私、こういう冷静な判断が下せない状況で大きな決断をしないことにしてるの」
「ナニその取ってつけたような設定!?!??!?? 悪いけどね、コイツやアタシがどれだけあんたのこと思って」
「イヤ本当に、冷静じゃない時には大きな決断はしたくないの。
「お前マジそれ恋愛向いてないからね!?!??!? 愛やら恋やらなんてそもそもが
「そうそれ。そういう
「そこでそれ持ち出す?!!?!??? もうクソ
「っていうか、私おなかとかに穴二つもあいてて結構
「
「もうっ……む、むーくん! 気絶してないでちゃんと起きて! このままじゃなんだか私が悪いみたいじゃ――ホラ! 最後まで話を聞いてっ」
「えゲ……え? さ、最後……?」
「そうだよっ。え、ええと。つまり、そういうことだから――」
気絶した夢生の
「今度、デートしよう。むーくん」
「はぇ」
「………………は?????? お前マジ何なの殺すぞ」
「わ、私達って、ほら。この数ヶ月学校のことにかかりきりで……そういうことを一度もしたこと、ないじゃない?」
「ひぇ」
(聞いてるのかしら、
「普通、こういうのはデートを何回か重ねて、ホラ。お互いの気持ちが
「ふぇ」
「口でもにょもにょ言ってるしこの女!??!?! むーもう目ェ使え今!!!! そいつもうゴネてるだけだから百パーあんたのこと好きだから!!!!! アタシ
「つまり! 私は……今度はちゃんと、
「ほぇ――――え゛、」
「い。一緒に、」
風がきゅ、とためらいがちに夢生の手を握り。
「いっしょに、イルカとか……見に行きたい、です」
「……ふ。わ……ぅ。うん。わかった」
「うん。じゃあ……今度また、予定決めよう!」
「だーもう何なのさ!??!?! もういいじゃん付き合ってよアタシのためにもさぁ?!!??! アタシの
(
「ごめんね、私のためにも今は無理。――それに、これはついでだけど」
風が小さく
「
いつもの
「――え?」
「あ――あいやあの、風ちゃん?? あれは違くて、」
夢生少年、仕方なかったとはいえレピアに自分からキスした現場をガッツリ風にみられていたことを思い出す。
「帰らないといけないんでしょ天使さんは、私がむーくんと結ばれちゃったら。つまり逆に考えれば――むーくんと私が結ばれない限り、
「――あ――」
「悪いけど、私ね。寝取られるのとか許せないタチなの」
「ねッ?! な、何言って――」
「あなたがどれだけむーくんの近くにいようと構わない。私はやられた分しっかりやり返して、」
レピアは、ようやく。
それがライバルからの果たし状であることを、理解した。
「今度こそ、ちゃんとあなたに
「わっ!?」
夢生の腕を自分に引き寄せながらそう言う風。
レピアは笑顔とも泣き顔とも怒り顔ともつかない表情で、口元を
「……後悔すんなよ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます