第51話 今・ここにある・好き
「――――――――…………あれ」
「……ん?」
ヨハインが
クピドの矢が、
「……レピア……!?」
――動かない。
クピドの矢を――狙い撃つだけで「好き」を操ってしまう最強の矢を、しかしレピア・ソプラノカラーは
「どうしたレピア――撃て。撃てッ!!!」
「ッ――――」
ヨハインの眼が光る。
レピアの目が光る。
わずかに
レピアは無表情に涙を流しながら、その矢を夢生に向けながら――何かを
それが夢生にも、痛いほど伝わって。
「バカな――これほどまで俺の
「ッッッ――」
「悔しいんだろう? 悲しいんだろう? 切ないんだろう? 何を耐える? 何を願う? 何を差し出すつもりでいる? 何を
手が。
『!!!?』
つかまれて、ようやく夢生もヨハインも気付く。
矢じりをつかんだのが――とうに死んだはずの
「メス貴様――その傷で何故生きてどうやってここまでッッ」
「
傷が浅いわけではない。
制服は真っ赤な血に染まり続けており、出血量が
しかしそれは、あれだけの撃たれ方をした人間のそれには
「メスが――
「……そのまま返してやりなさい。むーくん」
「!?」
「この化け物には一生
「!!!」
「間違ってるよ、むーくん。あなたの『罪』を都合よく利用しようとしているだけのどうしようもない悪魔のささやきなんて、聞いてやる必要ない」
「――何?」
「あああああッ!!」
白き
桃色の光が散り――クピドの矢に集っていた空間が
「むーくんがレピアに撃たせた?
「……!」
「全部この化け物よ。
「
ひびの入ったクピドの矢を
『ッッ!!?』
「――
「ッ、あのメス――」
夢生の振り向いた先。
「あなたは今、罪の意識をいいように使われて『洗脳』されかかってる。きっと奴の
「チッ、なけなしの
「ッァああ……く……!! 私の、この力は今まで――私の逃げの、証だった。でも今はッ――こうして、本当に許してはいけないものと戦うために役立つことを、
「
「そうだよむーくん――今裁かれるべきは君じゃない、罰されるべきは君じゃない!! 裁かれ罰されなきゃいけないのは――――今君の目の前にいる、
「――心――」
「そうつまり
「あっ……!!?」
先のサクラと同じように、風の顔をつかむヨハイン。
風が絶叫し――――
サクラが投げた二撃目の鉄剣を
「チッ……どいつもこいつも無駄な
「
「――何?」
「ずっと引っかかってた。やっと
「それはお前だろ。誰もお前を好きになんてならない。この眼を否定するお前が――」
「僕は違う」
「違わないね」
「違うんだ」
「違わないんだよカンビオン!」
「解らないんだよ。ひとの『好き』を好きにしてきたお前には」
「解ってないのはお前の方さ。誰がお前を心から好きになった? どうやってそれを証明できる!? 心だのなんだの
「そうだ『好き』は
「――――何だ?」
「何の涙だ、それは――」
「好きは想いなんだ。人は心で人を好きになるんだ。この眼にはそれがない。お前の行いにもそれが欠片だってない。なんでレピアが僕をクピドで撃たなかったんだと思う?」
「その涙はお前が『好」
「レピアの心がこんなこと望んでないって叫んでるからじゃないかッッ!!!!」
「……夢、生……」
――――レピアの目が一瞬、輝きを取り戻し。
右手を
「……そうやって、犬みたいに一生くだらねえ所をぐるぐる回ってるから。お前は俺に女を全部
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