第8話 陰陽・太極・す
「……え?」
絶望に押し潰されかけていた
何が起こったか解らない少年を置き、天使は笑う。
「アタシさ。外見と口だけで自分を語るイキり野郎が一番嫌いなタイプなの」
「ハ。生き様で語れって? あんた、もしかしてそのナリで誰とも付き合ったことない? 内面なんてキッカケ作ってからしか見えないぞ。そんだけ美人なのにいつまで頭ん中で恋愛してんだよ。いいからダマされたと思って――」
「ブーメラン。ブッ刺さってっけどそのお花畑なアタマで理解できてる? 内面は付き合ってみないと分からない、その通り――――だから汚い内面が合って数分でにじみ出てるお前は『おととい来い』っつってんの♡ アタシをナメてむーをサゲて、そうしねーと自分の価値を示せないクソダサい男。あんたみたいのがウヨウヨしてる『ハキダメ』なんかに、このアタシを誘わないでくれる? キモすぎるってw」
「………………だから嫌いなんだよな。言葉も相手も選べねーバカ女ってのはよォッッ、」
「レピ――」
ドダン、と遠くから大きな音。
一斉に振り返る一同。
そこに倒れていたのは――ズレて割れたサングラスを辛うじてかけている、一人の男子生徒。
「み――
「階段から落ちてきたのか、今……?」
「待てよっ、
「どうやら――」
タン、タンと足音。
階段を、
「――またあなた達に助けられたみたいね」
「
「チッ、エセ
「ちょっと待てやコラァッ!」「まだ終わってねぇぞガキィッ!」「女にナメられっぱなしでいられっかよ!」
「ありがとう、
「おいいつまでアタシだけフルネーム呼びすんのよやめろ」
「あ、あの……僕らは別に、」
「大丈夫。無理に風紀に入ってほしいとは言わないから」
「!」
「言ったでしょう。あなたは大切な灰田愛の生徒――私が必ず守るって」
「……
「なにシカトこいてんだこのクソ女ァ――ぁ!?」
『!!』
背後から風に襲い掛かろうとした不良。
が、
「あ……あれ、俺今、なんで倒れて、」
不良が目の前を見上げる。
そこには、いつの間にか不良の目と鼻の先の近さまで接近していた紀澄風。
レピアが目を細める。
(地味子のやつ――今、瞬時に距離を詰めて男に襲いかかる体勢を作らせなかった――!)
「こいついつの間に――こんな所まで……!!」
「美樹本先輩は倒れました。決着はついたんです、先輩方。これ以上、皆さんとの荒事は避けたい。どうか退いてください」
「関係ねぇ――部長一方的にやられて黙ってられっかってんだよッ! 囲め囲めッ!!」
「紀澄さんッ――――」
――――雛神夢生は思い出す。
レピア・ソプラノカラーが昨日、生徒会幹部の陸奥の取り巻きに囲まれた時のことを。
宙を舞う男子生徒。
夢生の横を吹き飛び、地に倒れ伏す不良達。
それと全く同じ光景が、今目の前で展開されたからである。
「ごゲッ!?」「が!??!」「づ、ォゴ……!」
ある者は窓を、壁をヒビ割れさせ、またある者は顔から床に突っ込んで夢生の横を滑り。
十人にも及ぼう数の不良達が吹き飛び――吹き飛ばした紀澄風は、先程と変わらぬ平静な目で、立ちすくむその他の不良達を
「まだやりますか?」
「なッ――ど、どうなってんだよこの女ァっっ、」「美樹本さんがポンポン投げられてたのは手品じゃなかったってのか!?」「いや手品はねーだろ」「バケモンかよこいつっっ!」
(紀澄さん、すごい……でもあんな体格差の男子をどうやって? 全く力を使ったようには見えなかったのに――)
「…………
「へ?」
ポツリとこぼされたレピアの言葉。
振り向いた夢生が見た彼女の目は好戦的な光を帯び、風に向けられていた。
風も応じ、視線を合わせる。
「――そう。
「フルネームやめろっつってんのに! ハァ~マジ嫌いだわお前」
「ええ、私もあなたのことは嫌い」
「紀澄さん!??」
「だけど。
「!――――はン」
「……ここまで人をコケにしといて無事で済むと思うなよ。テメエらぁぁあああああッ!!」
「! っレピア後ろッ!!」
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