お兄ちゃんは私だけのヒーロー

山岡咲美

お兄ちゃんは私だけのヒーロー

「離れてちょうだい、気持ち悪いのから!!」


 セーラー服の高校生、寅古明依加とらふるめいかは駅で酔っぱらいの男四人に絡まれていた、彼女が男達に絡まれるリクルートスーツの女性を救う為その間に入ったのだ。


「なに言ってんだこのガキィ!!」


「俺達はそこの女にようがあんだよ!」


「その女だって俺達と飲みたいんだよ!」


「じゃまだ、消え失せろ!!」


 恐怖のあまりリクルートスーツの女性は寅古明依加の横で震えている。


「ふ・ざ・け・な・い・で! 震えてるじゃない!!」

 寅古明依加はリクルートスーツの女性を自分の後ろに隠すように男達の更に前に出た。


「あ~ん、なんだって~~?? この学生風情が!!!!」


「その女だって俺達先輩様と飲んで社会勉強がしたいんだよ!」


「学生は俺達社会人に敬意を払え!!」


「そうだ、俺達は一生懸命働いてて偉いんだ!!」


 男達が寅古明依加を取り囲む、リクルートスーツの女性は怖くてしゃがみこむ。


「いい加減にしないと私、お兄ちゃん呼ぶからね!」

 寅古明依加は怖い顔をして四人の男に凄んで見せた。


 男達は顔を見合せ笑い始める。


「お兄ちゃんだってよ!」


「どこにいんだよそいつ」


「あー、怖い、怖い、どけよガキ!!!」


「その女をこっちによこせ!!!!」



 寅古明依加は堪忍袋の緒が切れた。



「お兄ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!」



「ハイよ明依加!」



 世界が圧倒的暴力で支配される。



「グブッフっ!!」

 一人目の男に裏拳があたりその男の鼻が顔にめり込む。


「なっ????」

 二人目の男は腹に後ろ回し蹴りが入り、その衝撃が波と成って背骨まで貫通する。


「おいちょっとオマエ??!!」

 三人目の男のアゴの下からすべての歯を折りアゴが鼻の上までずれるようなパンチが炸裂する。


「俺がわッ!!」

 四人目の男は、俺が悪かった止めてくれ、とでも言おうとしたのだろうが、その言葉は天から振り下ろされた高高度のかかと落としにより頭蓋骨ごと粉砕された。



「ふう、明依加、危ない人に近づいちゃ駄目だぞ」


「うんわかった、お兄ちゃん♪♪」


「じゃあな、明依加、オレは帰るぜ」



 寅古明依加は駅の床で死屍累々の男達を悪は倒されましたと満足げに見下ろし、


「お姉さん、もう大丈夫だよ、お兄ちゃんが全部やっつけてくれたから」



「………………」

 リクルートスーツの女性は何が起こったのかを理解できていない。





********************





「はい……そのセーラー服の女の子が助けてくれました」


 リクルートスーツの女性はそのあと駆けつけた警察官と駅員にそう説明した。


 リクルートスーツの女性はそのセーラー服の女の子が「お兄ちゃん」と叫んだあと突如雰囲気が代わり、裏拳、回し蹴り、パンチ、かかと落とし、を立て続けに繰り出し四人の男を倒したと話、



「ふう、明依加、危ない人に近づいちゃ駄目だぞ」


「うんわかった、お兄ちゃん♪♪」


「じゃあな、明依加、オレは帰るぜ」



 と一人で表情をコロコロ変えながら会話をしていたと証言した。


 警察の調べでは寅古明依加は兄を交通事故で亡くしおり、その兄、寅古守とらふるまもるが妹、寅古明依加に憑依して守っているのだと両親は証言している。





 寅古明依加は物怖じしない、それはいつも心強い兄が憑いていてくれるからだ。

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お兄ちゃんは私だけのヒーロー 山岡咲美 @sakumi

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