第7話 修正【完】

 動物園に皆で向かった。

 メイド服を着ている、車を運転してくれる人が居たのだが、動きにくそうな服なのにキレッキレな運転をして見せた。

 なんでも西園寺の側近らしい。


 動物園は海華の行きたい場所をメインに色々と回る。昼飯の時間となる。

 ゴリラを見た時に、そのゴリラ達が西園寺の近くに寄って来た。

 何とも言えない気持ちに成りながら、ハァハァしているゴリラを怖がった海華。

 少し目を潤ませ、西園寺がゴリラを睨んだら、ゴリラは何処かに行った。


 昼飯を終えて少し歩き回り、ベンチで休む。

 俺と愛海はソフトクリームを買いに別れる。

 海華と西園寺が休んでいる。


 俺が俺と西園寺の分を持ち、2人の下に戻る。

 海華が来た瞬間に抱き着いて来た。

 少し目がウルウルしていると分かった俺は西園寺に何があったのか聞く。


「ちょっと絡まれまして。あ、大丈夫ですよ。護衛の者が処分しましたから」


 言い方が怖いんよ。処分て。

 ⋯⋯あれ? そこじゃなくね? 俺が気にする所。

 護衛⋯⋯だと!


 辺りをキョロキョロと見渡す。

 何処にいるのか分からない護衛。絶対にガタイが良い筈だ。

 絶対に目立つだろう。どこだ! とこにいる!


「拓海君。ソフトクリーム、ありがとうございます」


「あ、うん」



 その護衛の人達。


 一般的なギャルであった。

 片方は金髪で胸元やヘソなどが露出した、家族連れが多い動物園では少々浮いた格好である。

 片方は見た目はチャラくてもクールな感じに感情を表情にあまり表さない。

 二人とも本格的な武術を習っている。


 そんな2人の前には3人の、椅子にロープでグルグル巻にされて固定された男達が居た。

 西園寺と海華の所に行き、西園寺をナンパして海華を蔑ろにし、罵倒した事により、西園寺の怒りをかった。

 サークルの旅行で来ていた3人。

 サークルメンバーは3人を捜索していると思われる。


 2人のギャルが動物園を観光しているフリをして西園寺を見守っていた。

 西園寺の側近メイドはメイド長であり、この2人もメイドの2人。


「で、あんたらお嬢とその次期(多分)義妹に絡んで、なんか弁明ある?」


「それよりも、こいつらどうする? 気絶してるけど?」


「え! なんで! 私手加減してここまで運んだんだよ! なんで気絶してんの! 私気絶してんのに、なんか弁明ある(キリッ)ってやった訳! 恥っず」


「いや、うるさかったから、つい」


「うん。その仕草は可愛いけどねぇ! 仕方ない。ライオンの餌にでもするか」


「そうですね」


「いや、冗談だからね。運ばないで。本当にダメだよ! 適当に放置するって意味だからね!」


「そうなの? てっきり生きたまま肉を剥いでライオンの餌にして、骨はハイエナの餌にすると思ったよ」


(この子可愛いのに怖い! だから彼氏出来ないんよ! あれ? おかしいな。目にゴミが入ったかな?)



 俺達は家に帰ってから皆で今日の思い出話的な事をする。



 ここは雪姫の部屋。

 雪姫の部屋には雪姫と側近メイド、麻美あさみが居た。


「楽しそうですね」


「ええ。とても、楽しかったわ」


 雪姫は今日撮った集合写真を眺めながら話す。

 雪姫が唯一使用人に長文で話す相手である。

 つまり、1番気を許して信頼している相手と言う訳である。


(はぁ。それにしても、拓海さんの写真(盗撮)をずっと眺めていたから、適当に提案した物が採用されるなんて思ってみなかったなぁ。適当に案を出すんじゃなかった。ま、でも拓海さん達もなんやかんやで納得してるし、雪姫様の笑顔が見れるし、良いかな)


 メイド服に忍ばせている小さなカメラで録画している。


「あ、麻美、録画した映像は消さないと怒るからね」


「気づかれていましたか」


「噂で聞いたのよ」


(犯人見つけ出して絶対にシバキ倒す)


 そんな中、拓海の部屋では。


 海華と愛海と一緒に動物園で売っていた、動物の絵柄が描かれたトランプで真剣衰弱をしていた。


「なぁ。俺達皆記憶力良いよな」


「そうだね」


 1回見たトランプの場所は覚えてしまうと言う自体が発生した。

 これは母親のお陰と思っておこう。

 父親は⋯⋯ダメだ。思い出したくもない。


「お兄ちゃんが負けだね」


 そう。ちゃんと場所は分かっている。

 だがな、ペアとなるカードが1枚も引けないのだ。

 海華が1位で愛海が2位で、僅差であった。

 おかしい。こんな予定ではなかった。

 俺やるの3番目なのに!

 手加減? 俺は勝負では手加減しないと決めている! 可愛い大切な妹であっても!


 ま、負けてるんだけどね。

 海華が凄いドアの方を凝視している事に気づき、ドアを見ると、半分だけ顔を出してこっちを見ている西園寺が居た。

 ドアの方に向かい、ドアを開けて西園寺を誘う。


「一緒にやりますか」


「良いんですか! その、兄妹水入らずなのに」


「良いんですよ。2人とも良いかな?」


「うん! 雪姫お姉ちゃん一緒にやろー!」


「良いですよ。そもそも私達に拒否権は無いです。こうやって遊び道具にお兄ちゃんが稼いだ金が使えて、お兄ちゃんと遊べる時間があるんですから、貴女のお陰で」


 プクーとしていた西園寺の顔が笑みに変わる。

 最近、いやまぁ見た事無かったけど、クール系である西園寺。

 だが、時が経てば経つほどクール系じゃないと思えて来た。


 それから皆で真剣衰弱を行い、俺と西園寺はゼロ枚で共にドベとなった。

 西園寺は「お揃い」ですね、と半分笑って半分眉をピクピクさせていた。

 俺も、ふっと笑う。


 さーて、20回20敗の全敗を行った所で寝る事にする。

 別にふて寝じゃないよ。時間的に海華を寝かしつけた方がいい。

 西園寺が居座ろうとして愛海と一悶着あり、全員部屋を出て行った。


「1人になると、ほんと広いな」


 だいぶこの生活にも慣れている自分が居る事に気づいた。


「⋯⋯なんで寝る時毎回見られている気がするんだろ。気の所為だろうに」


 ベットの上に、小さく光る赤色。



 ゴールデンウィークも終えて学園に向かう。

 ゴールデンウィークを挟んだ事の影響か、西園寺は俺の隣をより近く歩いて学園に入る。

 あぁーあぁー色んな人の目がこっちに向いてるよ。


 だけど、西園寺は笑顔を崩して居ない。

 なんでこんなに笑顔で居られるんだろうか? 俺はすごくドキドキするよ。


「よ! たーく」


「神威おはよう」


「西園寺さんもおはようございます!」


「うん」


 笑顔が西園寺から消えた。スっと、それはもう高速でスっと。

 そして震えて来る俺の右手と左手。


「西園寺さん。俺、相談にも乗ったし、ら、ラブレター(笑)の書き方も教えたと思うので、その冷たい視線は止めてください!」


「そう、ですね」


「⋯⋯ッ! 拓! やばいぞ拓! 西園寺嬢が2文字以上で俺に返事したぞ! 熱なんじゃないか?」


「⋯⋯ッ!」


「すみません。調子に乗り過ぎました」


 何この漫才。

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