第8話 修正【完】
教室に行く途中で男子生徒5名に連れられて体育館裏へと来た。
本当は7名だったが、西園寺を食い止める為に2名抜けた状態だ。
その5名の中心人物は隣のクラスのイケメンの人だった。
「で、なんの用ですか?」
「なんの用って分かってんだろ?」
「⋯⋯」
イケメンに問う。
「なんの用か分かってんだろ?」と言われてもそれをきちんと把握出来る人は居ない。
それで把握して貰えると本気で思っているなら、道徳の授業をやり直して来い。
By心の声。
いやまぁ分かるよ?
西園寺の事だろ?
西園寺と中が良くて西園寺が自然に笑っている姿に驚いてんだろ。
こいつ、西園寺の事が好きなのか?
西園寺の素の姿を知ったらこいつはどんな反応をするんだろうか?
「テストの事ですか?」
「そうそう。中間が近いからなぁ〜んな訳ねぇだろ! 調子に乗ってんのか?」
「⋯⋯調子にどうやって乗るんですか? そう言う乗り物を自分は知らないんですが?」
「確かに俺も知らない。じゃない! お前バカなのか?」
「そうですね。僕はバカです。バカなので貴方達が言う用と言うのが分かりません。教室に戻ります」
そんな適当な解答をしていると、イケメンがキレた。
気持ち悪さしか感じない壁ドン! 成らぬ壁キックで俺の道を塞ぐ。
あーいるいる。
こうやって足で止めて上半身をこっちに寄せてガン飛ばす奴。
これ辛くないのかな?
「西園寺さんにこれ以上近づくな」
「なら、西園⋯⋯雪姫さんが俺に近づいて来るのは良いって事ですね。毎回自分から近づいてないので安心してください」
はい。
俺から近づいてない。あっちから来るのだ。
なのでその注意は無駄となる。
「西園寺さんの事を名前で、呼ぶな!」
いや、苗字で呼ぶと背筋がゾワッてくんだよ。怖いんだよ。
イケメンは拳を固め俺に向かって放つ。
喧嘩が苦手なのか、直線的な拳なので、外側に体をズラせば躱せる。
「待たれよ!」
それを制した存在がいた。
圧倒的な存在感を放つその男は⋯⋯凄かった。
この学園は見た目などに関する校則はとても緩い。ゆるゆるだ。
その男は黒髪に赤い瞳。
ちょっとした肥満体型で、右手と腕には赤い包帯を。
左手には手袋を。錬成陣なのか、それらしい模様がある。
眼鏡をカチッと上げる。
その男の登場により、拳を空中で止めるイケメン。
漠然する俺含めた全員。
「ふ、一般人に拳を向けるとは⋯⋯哀れな偶像崇拝共よ」
イケメン困惑。俺も困惑。
なるほど、高校生だけど中学2年生の心が抜けてない人か。
大丈夫。俺は寛容だ。笑って笑う。
「お前、邪魔するのか?」
「ふん。当然だ。一般人に対して拳を振る事は偶像崇拝のやる事、それを阻止すのは我々銀河団の役目。かかって来い」
そんな事を行って、再び眼鏡をカチりとする。
眼鏡が日光で反射して白く見え、目が見えない。
イケメンはその男にイラついたのか、その男に向かって走る。
「止まれ! 良いのか? 俺の半径1メートル以内に入ったら、お前は地面とキスする事になるぞ」
「何を言って?」
「俺の血筋は高等悪魔の末裔の血があるんだぞ?」
「アホくせぇ!」
確かに!
だけど、人をそんな明るい所で殴ると良くないぞ。
「え」
「こんな所で暴力を振るったら停学に成るぞ」
殴り掛かる腕を掴み、足を引っ掛けてバランスを崩させる。
腕を一度引っ張り衝撃を無くし、受け身を取らせて捨てる。
そのスムーズな動きに取り巻き男達が漠然とする。
「な、何が」
「警備員のバイトの時に先輩にこう言うの教えて貰ったんだよ」
ま、結構前に辞めたんだけど。
他にもバイトをやっていて、こう言う問題児の対処は慣れっこだ。
「⋯⋯」
それを1番驚愕していたのはその男だった。
多分、こいつは殴られる予定だったんだろう。
体育館裏は監視カメラの死角となっているが、体育館横は違う。
それを分かった上で立っているんだし。
「教室、行きますか」
「⋯⋯ハッ! ふん。そうだな。悪魔族は規則を守る者。ボスの命令に背くと罰せられるからな!」
そうだね。遅刻は叱られるし成績に関わるよね。
男達を放置して俺はこの男と教室に向かう。
途中で名前を聞いたら「ふん。名乗る名など無い」と言っていたので、「分かった。後で適当な先生に名無しの子が居るって言っとくわ」と言うと「
下から呼んでも、たなかかなた。覚えやすい名前だ。
教室に戻ると西園寺が横から抱き着いてきた。
不意打ちでバランスを崩しそうになったが、何とか耐える。
「何も、無かった?」
「あぁ。ちょっと新たな変わった名前の覚えやすい知り合いが出来ただけだよ」
ちょっと変わったは失礼かな?
にしても西園寺さんよ、少し自重してくれ。
見てよ周りを。めっちゃ視線を感じるよ。
西園寺を宥めて互いに席に座ると、神威が話しかけて来る。
「なんかあった?」
「田中奏汰って人が来て、殴られそうになったから止めた?」
「お前じゃないんかい」
それから朝の読書時間までにだべっておく。
話していると、反対方向から冷気を感じたが、トークで無視しておく。
これ、他の人にも被害出てるよ。
近くの人なんて病気かなと自分を疑ってるよ。
「あ、あの。伊集院さん」
「はい?」
このクラスの級長である眼鏡を掛けたポニテの女の子が話しかけて来た。
「その、国語の教師であるクソ⋯⋯じゃなかった
「ん? 分かった」
国語の係でも無いし、あまり接点の無い人が俺を呼ぶとは。
しかも朝読の時間が近いと言うのに。
少し早歩きで行こうかな?
朧先生、通称女の天敵先生である。
既婚でありながら独身を装い、同僚の美人な教師に片っ端からナンパしていると噂が最初だった。
その後、お気に入りの生徒は
PTAの子にも優しくしている。
男女生徒教師問わずめっちゃ嫌われている先生の一角である。
ただ、成績を上げて貰っている人はよく分かんが。
女子生徒にも手を出していると根っからの噂である。
そんな教師が俺をこんなタイミングで呼び出す。
「広まるの、速くね?」
まだ2日しか⋯⋯2日目の序盤にもなって無いのにこんなに絡まれる?
職員室に入り朧先生の下に向かい、話を聞く。
「あれ? そんな事言ったかな? きっと勘違いだろ。それに、もうすぐ朝読の時間だよ? そんなタイミングで呼ぶ訳ないだろ? さっさと戻りなさい」
ハーうっぜ。
廊下は走らず、早歩きでインコースを歩けば間に合う!
舐めんなよ最速帰宅部の実力をよぉ!
拓海は職員室を出て教室に戻る。
その後の朧は自分の机に顔を向け、髪が長い事を活かして顔が見られないようにする。
悪魔のようなニヤリとした笑みを浮かべる。
(僕のお気に入りに手を出すお前が悪いんだぞ。今日から地獄を見せてやる)
そんな先生が辞めされられないのは、ある程度の制御を行っていたからだ。
成績を操作し、PTAにゴマをすり、ここまで来ていた。
だが、この人の想定外はただ1つ、一教師が出来る事程度で拓海が怯まないと言う事であった。
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