彼がいなかったら今頃死んでた
みお
第1話
ここは、戦場。
今日は俺たちの殿様、長尾景虎(上杉謙信)と武田信玄が戦う日。
川中島の戦い。
信州の犀川を挟んで、長尾軍と武田軍は向かい合っていた。
「今日さ、俺の子どもの誕生日なんよ。
武田に勝って、早くお祝いしたいわ」
俺がそういうと、隣近所の奴はこう言った。
「俺なんて、嫁と喧嘩して戦にきちまったよ。
だめだよなぁ。
戦に行く前に喧嘩なんて。
無事に帰って謝んねえと」
「だなぁ!
お互い武功だけあげて、帰ろうぜっ!」
そう言いながら、犀川の先にいる武田軍を見つめる。
足軽たちは、普段は農民をしている奴が多い。
殿様から招集がかかったら、戦に行くって感じだな。
だから、普通に家族がいるし、待ってくれている人がいる。
簡単に死ねねぇけど、何もしないで隠れているわけにもいかねぇし、まぁ、頑張って生き残るってのが、目標だな。
俺たちは鎗隊だから、敵が目の前にいるっていうかなりシビアな状況におかれてるけどな
。
弓隊から弓が雨のように射られて、法螺貝が辺り一面に鳴り響いた。
戦の始まりだ。
「行くぞー!!!」
男たちは活気づけのためにわざと大きな声を出して、前に走り出していく。
俺もみんなと同じように走って敵兵に向かう。
「うりゃあ!」
鎗をバシバシふり、敵兵を倒していく。
一回で、倒れるほど敵兵は弱くないから何回も敵兵に鎗をあてる。
何人か斬った後で、俺を呼ぶ声が聞こえる。
みると、さっきの隣近所の奴が倒れていた。
血も出てるし、顔色も悪い。
「おい! しっかりしろ!」
「やべ、俺もう無理だわ。
俺の嫁に謝ってたって言っといて」
「ばかやろう。
生きるって約束したじゃんか」
そう会話をしている間にも敵はどんどんやってくる。
「呑気に話してんじゃねぇ!」
そう言って、凄い勢いで1人の男が向かってきた。
でかいし、迫力あるし、なんかやべぇ。
腰をあげ、そいつに向かって、槍をふる。
でも、そいつは、かなり強いようで、びくともしない。
「おまえもそこの奴と一緒に死ぬんだよ!」
当たり前だが、そいつは容赦なく襲いかかってきた。
そいつの鎗が俺の頬をかすめる。
横に一本、傷ができ、血が滲み出る。
やべぇ、負けるかも。
俺もここで終わりか。
そう思いながらも必死に槍をふる。
しかし、どんどん追い詰められ、俺は地面に投げ出された。
敵のそいつが上から俺を見下ろしてニタニタ笑っている。
うわ、もう終わりだ。
俺は目を瞑った。
あれ?
なんで、まだ生きてる?
んで、目をそおっと開けた。
すると、俺の目の前に、でかい大男が現れていた。
敵のそいつよりも、でかい男。
筋肉が凄いのが、甲冑を着ててもわかる。
槍をどんどんふりまわし、敵のそいつはもちろんのこと、他の奴らもどんどん蹴散らしていく。
「おいっ、そこの男っ!
ちんたらしてねぇで、立って戦いやがれ!」
「はっはい!」
大男に言われて、思わず返事をする。
川中島の戦いが終わり、隣近所の奴もなんとか生き延び、俺たちは越後に帰ってきた。
後から聞いた話だが、その大男は弥太郎という長尾景虎様の重臣だった。
弥太郎様は、俺のヒーローとなった。
筆者の戯言
読んでくださり、ありがとうございます!!
この話は、「越後の龍上杉謙信と戦国時代をこよなく愛する女の物語」の足軽目線での話となっていました。
もし、興味がある方は、「越後の龍上杉謙信と戦国時代をこよなく愛する女の物語」
https://kakuyomu.jp/works/16816452220781051149/episodes/16816452220781524846
も読んでくださると、筆者は泣いて喜びます。
彼がいなかったら今頃死んでた みお @mioyukawada
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